私の昨日のお弁当
お嫁さんが孫のお弁当を作るついでに私のも詰めてくれましたよ
私も毎日あなたや娘のためにお弁当を作っていた時期がありました
あなたは好き嫌いが激しい上に歯が悪かったので
詰めるものが限られていて、ちと面倒だった
夜勤を終えて寝酒するあなたのおつまみは
晩のおかずの他にどうでも1〜2品は用意してた
これも正直面倒くさかった
あなたがお休みのお夕飯には返ってくる答えがわかってるくせに聞いたよね
「何が食べたい?」
「カマンベール、生ハム、ネギトロ!」
「また〜!? この贅沢ものが!」
あなたが一番好きだった私の手料理は豆腐ステーキだった
「油が飛び散るからイヤなんだよね〜」
文句ブツクサ言いながら渋々作ってあげたっけ
ごめんね
あなたがこんなに早くいなくなっちゃうとは思わなかったから
面倒くさいなんて思ったりブツクサ文句言ったりして
そういえばあなたがいなくなる日の最後の晩餐はネギトロ巻だったね
病院の目の前にあるスーパーで買ってきたけど
最後なら、最後になるんだったら
おいしいお寿司屋さんの作り立てを食べさせてあげたかったな
うどんも大好きだったね
コシのあるシコシコしたのじゃなくて煮込めばとろけるようなのが好きだったね
それも食べさせてあげたかったな
あの日ネギトロ巻をつまんだあとほどなくして
「おかしい・・・ 今日は右目が見えない・・・」と言いながらベッドに横たわったあなた
すぐにナースステーションに報告に行き
病室に戻ったときにはすでに意識がなく大鼾をかいていた
脳出血だ!子供たちに容体急変の電話をする
「お父さん、お父さん、聞こえる!?
今子供たちが来るからまだいっちゃダメ!!
聞こえてたら私の手を握って!!」
あなたは右の眼に大粒の涙を浮かべて私の手を握り返した
そして翌日の明け方に眠ったままで逝ってしまった
ねえ、今も心の中で問いかけてるの
あの涙の理由はなんだったの?
死にたくない、悲しい、無念、心残りだったに違いないはずなのに
あなたは薄っすらと笑顔を浮かべていた
とても穏やかな表情だった
入院してひと月後くらいのある日
「俺は本当に幸せな人生だった」と笑顔でしみじみと言ったね
あれは本心だったの?
本当に心からそう思ったの?
だから知りたいの涙の理由を
私はきっと死ぬまであの涙の理由をあなたに問いかけていくでしょう
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