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平成17年度 **芸術大学大学院 芸術研究科
博士課程後期研究計画書
中国・客家文化の研究−その建築と芸術性の変容について
研究概要
中国は広い土地と56民族をもっている。民族によって、人びとの異なった歴史的な伝統や生活慣習がある。建築にも地理的、気候的の環境や建築材料は地方ごとに異なっている。
申請者は研究テーマは、この中国にあって、華南地方に居住する客家(ハッカ)集団社会である。客家先祖の主体部分は、もともと中国・中原地方の黄河中、下流域の広い平原で、現在の河南省地域の周辺に居住していた漢民族の分派である。しかし、古代から中原地方は常に支配者たちの政治の中心地であったため、異民族の侵入や戦乱の歴史が繰り返されてきた。客家の人びとは、これらの事あるごとに小さな集団となって移動し、次第に南下してきた難民たちの子孫である。そのために中国各地の何処に移動しても、常に「よそもの」扱いを受けた苦難の歴史を背負ってきた。
中国大陸内での客家祖先の南下は、秦の始皇帝の時代にまでさかのぼる。そして、中原地方に居住していた客家をはじめ、多くの先住者たちは、常に後続する新しい勢力に追われて、これらの大移動を繰り返し清朝まで続いた。現在では主に中国南部の沿岸部の福建、広東、江西三省の省境地域の山間部など、相対的に地理的条件に恵まれない所に住んでいる。また、客家の人びとは中国大陸に留まらず、台湾および東南アジアなど広範囲にわたって分布している。中には世界各地で華僑として移住した人びとも多い。
客家は、そのような事情から、独自の言語、文化、伝統、風習を持っており、一族の団結心が強く、移動先の人々に負けないとしてよく働き、また教育熱心でもある。 客家は中国八大方言の一つにも数えられる「客家語」という独自の言語を持っているが、言語以外にも様々な民族的特徴が見られ、特に有名なのが彼らの住む客家民居と呼ばれる独特の集合住宅である。客家民居の魅力は、迫力がある外観もさることながら、その建築の多様性にあるといえる。「五鳳楼」「円楼」「方楼」「多角楼」「囲屋」「囲龍屋」「殿堂式民居」「四合院」「洋楼」など、その姿は多種多様である。
本研究では、このような客家民族特性、社会状況、伝統文化、地理風土、物の考え方などを探る最も重要な手がかりの一つと考えられる建築物をテーマに、その芸術性の変容を探ることにある。
研究方法
記録によると、客家民族の起源地から5回も大移動を経たという。その5回の大移動の経路にそって、福建、広東、台湾各地域の客家の文化、宗教、慣習、建築などを調査し、客家民族の暮らしの風景が分かる町を回り、伝統的な客家民居を中心に、形態様式や空間構成、構造形式、装飾、材料の使い方などを建築構成の視点から、また祖堂、広間、廊下、庭、部屋、台所、家畜小屋などの具体的生活空間の使い方までを、調査して研究する。
また、各地の地理風土、環境など自然条件をどういう風に生かして、どのような民居がつくられてきたか、各地域の客家はどういうような考え方を持ち、昔の伝統習慣、宗教、地方動乱などをどのように住居建築に反映させてきたのかを、分析して研究する。
調査と研究の方法は、中国の客家各地域で長期間のフィールドワークをして、客家建築の魅力を語り、写真で記録して、各地域の客家文化と建築の変容を比較して研究する。また、これら民族性の富む建築物のところに、自分の足を運び、写真作品を通して、客家建築の芸術価値をみんなに理解することができるのではないかと考えている。
博士課程一年と二年目は、客家研究に必要な資料、文献を収集し、分析して研究する。また、中国の客家各地域の村落で一年間二回、毎回二ヶ月以上長期間のフィールドワークと現地撮影を計画している。調査地は中国華南地方の福建、広東と台湾を中心に調査する。博士課程二年目から、各地のフィールドワークの調査で得られた資料と写真をもとに、博士論文を執筆したいと考えている。
研究内容
1、客家源流の研究。
2、建築と地方文化の関係についての研究。
3、福建、広東、台湾など、客家各地域の伝統建築の形態様式の研究。
4、客家各地域の自然風土、村落と住居空間の関係などの研究。
5、客家伝統建築の材料の研究。
6、各地域の客家建築の特色とその時代の変遷。
7、客家建築と風水の関係。
8、客家建築の芸術性と変容。
9、客家各地域の建築物の保護と環境行為、地方産業文化の発展などの研究。
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