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今日は年に一度の逢瀬 |

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こんにちは、ゲストさん
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今日は年に一度の逢瀬 |
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「高田馬場〜、高田馬場〜」 車内アナウンスで、私は、はっと目を覚ました。 流れる景色が、ゆっくりと落ち着いて、駅のホームに滑り込む。 ドアが開くと、外のむっとした空気と一緒に、何人か、乗り込んできた。 反対にも、電車が入ってくるらしく、ホームには「鉄腕アトム」が流れていた。 「ドアが閉まります。ご注意ください」 アナウンスの後、シューッと音を立てて、ドアが閉まった。 私は、肩から提げたカバンを、一揺すりすると、抱えなおし、もう一度目を閉じた。 このところ、残業続きで、40の見えた体は、結構、悲鳴を上げていた。 (そろそろ、考えなきゃね) そんな風に、思っていたとき、隣の乗客の聞いている音楽が、「漏れ」として、私の耳にも届いた。 茶髪にピアスの若者には似合わない、彼の耳元から流れていたのは、70年代のフォークソングだった。 (また、流行ってるのかな…) そんな風に思いながら、彼から「漏れ」る音に、耳を傾けた。 そんな中の1曲に、あの「思い出」の曲もあった。 「ねえ、今度の休み、どこか行こうよ」 私は、彼のほうに身を乗り出して、甘えた声で、そう言った。 「東京タワーでも、のぼりに行くか」 彼は、手に入れたばかりの中古ギターをチューニングしながら、そう答えた。 「え〜、そんなのやだぁ!」 私は、ぷぅっと膨れて、「ハワイ、行きたい、ハワイ!」 「そんな金、ねぇよ」 「ギター買う、お金はあるのに?」 「ば〜か。ケタが違うよ、ケタが。これだって、中古だしよ。見ろよ、このネックの反り具合。ボロボロだぜ?」 「だったら、買わなきゃいいのに」 「ギターくらい、買わせろよ」 「へたっぴぃのくせに」 「…お前、それを言っちゃあ、おしまいだぞ」 最後の弦を、合わせ終えると、彼は、それらを指で押さえ、流行のフォークソングを、歌い始めた。 私は、少しの間、それを聞いていたが、 「ねえ」 と、彼の手を握った。「約束、してほしいなぁ」 「約束ぅ?」 「うん。一つ、もう少し、ギターがうまくなること」 「なんだよ、それ?」 「だって、聞くに堪えないんだもん。近所迷惑よ」 「しっつれーな」 「ほら、約束してよ。私の言うこと、くり返してね」 「はいはい」 「一つ、ギターがうまくなること」 「一つ、ギターがうまくなること」 「一つ、仕事をがんばること」 「一つ、仕事をがんばること」 「一つ、そのお金で、ハワイへ行くこと」 「・・・・」 「こら!言いなさい!」 「一つ、そのお金で、ハワイへ行くこと」 「一つ、私を必ず、幸せにすること」 「・・・・」 彼は、真っ赤な顔で、私を見つめた後、 「一つ、マリを必ず、幸せにすること」 と、言ってくれた。 私は、思わず抱きついて、 「絶対よ」 と、囁いた。そして、本棚に隠しておいた、テープレコーダーを取り出して、 「ちゃんと、証拠、とっておいたからね」 「お前なぁ」 彼は、そう苦笑いをしたが、 「大丈夫。必ず、幸せにするよ」 と、もう一度、言ってくれた。 「恵比寿〜、恵比寿〜」 車内アナウンスに、目を覚ました私は、慌てて電車を降りた。 一緒に降りた乗客は、それぞれ目的の出口に向かったが、私は一人、ホームで舌打ちをした。 (もう、この駅に、用はないのに…) 思わず降りたこの駅は、「彼」と過ごした時期だけ、必要だった駅。 おそらく、あの「フォークソング」に触発されて、「彼」を久々に、思い出した所為だろう。 私は、もう一度、電車に乗るべく、ホームで待とうとしたが、久しぶりだしと、駅舎から出てみた。 あの頃の面影はなく、すっかりお洒落な街に変わってしまっていたが、足はなぜか、自然に動いていた。 もうないであろう、思い出のアパートへ。 「・・・・」 私は、思わず立ち尽くした。 3階平屋の「かえで荘」は、10階建ての「メイプル・コーポ」に変わっていたが、当時と同じ場所に、建っていた。 あれから、どの位して、私たちは別れたのだったか。 どちらが悪いでもなく、出逢うことが「自然」であったなら、別れることもまた「自然」であるように、なんとなく、別れてしまった。 結局、ギターはうまくならなかったし、仕事もあちこち、点々としていたし、ましてやハワイなんて、夢のまた夢だったけど、 「あなたと過ごした間、間違いなく、私、幸せだったわ…」 私たちが暮らしていたであろう、高さを見上げて、そっと呟いた。 今、どうしているだろう。きっと、職について、結婚して、奥さんと子供に囲まれて、幸せにしているのだろう。 未練はないけれど、少し、逢ってみたくなった。逢って、あなたの幸せに、あってみたくなった。 「あなたも、たまには、こんな気持ちで、いてくれたかしら?」 「ねえ、今度の休み、どっか行こうよ。私、ハワイ、行きたいっ!」 「そんな金、ねぇよ」 横を通り抜け、マンションへ入っていく、恋人たちの会話が聞こえた。 いつの時代も、同じような恋がある。 彼女たちを見送ると、私は、「今の生活」へと、踵を返した。 私は、今、胸を張れるぐらい幸せではないけど、今の暮らしに満足してるわ。 今の私があるのも、あなたと過ごした時間があるからだと、素直に思ってる・・・。 あのカセットだけが、あの頃の「幸せ」を、今も続けている。
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今も遠くも 人は誰も 真っすぐ伸びた 円を歩く |
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天気が良いので 川原を散策してみた |
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生まれて初めて 髪の色を染めてみた |
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