「アベノミクスは大失敗」と言える4つの根拠東洋経済オンライン 5月31日(火)6時0分配信
私たちはそろそろアベノミクスを総括したうえで、その問題点を修正するための経済政策を考えるべき時期に来ていると思われます。私はこれまで3年以上、この連載コラムやブログ、書籍などを通して、「大規模な金融緩和を主軸にした経済政策は間違いなく失敗するだろう」と、できるだけ論理的に申し上げてきたつもりです。その主な理由としては、以下の4点にまとめることができるでしょう。
(1)円安により企業収益が増えたとしても、実質賃金が下がるため国内の消費は冷え込んでしまう。 (2)大企業と中小零細企業、大都市圏と地方といった具合に、格差拡大が重層的に進んでしまう。 (3)米国を除いて世界経済が芳しくない見通しにあるので、円安だけでは輸出は思うように増えない。 (4)労働分配率の見地から判断すると、トリクルダウンなどという現象は起きるはずがない。 ■ 金融緩和に依存しすぎた政策の末路 まず(1)の「国内消費の冷え込み」についてですが、円安を追い風にして企業収益が拡大したにもかかわらず、安倍政権が期待していたようにGDPがなかなか増えていない原因は、円安により企業収益が増えた分だけ、輸入インフレにより家計の可処分所得が減ってしまっているからです。その結果として、実質賃金の持続的な下落が進んでしまい、GDPの6割超を占める個人消費が大幅に落ち込んでしまっているのです。 正直申し上げて、民主党政権時代の経済政策もひどかったのですが、それでもGDP成長率は2010年〜2012年の3年間平均で1.7%のプラスで推移していました。これに対して、GDPを最重要指標としていた安倍政権下では、2013年〜2015年の3年間平均でわずか0.6%しか成長していません。消費増税の駆け込み消費を除いたら、3年間平均でマイナス成長に陥ってしまうほど悪かったのです。 さらに、実質賃金の推移を振り返ると、民主党政権下の2010年が1.3%増、2011年が0.1%増、2012年が0.9%減となり、3年間の累計では0.5%増となっています。これに対して、安倍政権下の2013年が0.9%減、2014年が2.8%減、2015年が0.9%減となり、3年間の累計では4.6%も減少してしまっているのです。要するに、2012年〜2015年の実質賃金の下落率は、リーマン・ショックの前後の期間を凌駕していたというわけです。 決して誤解しないでいただきたいのは、これらの比較で私が言いたいのは、民主党政権の経済政策が優れていたということではありません。普通に暮らす国民の立場から見ると、金融緩和に依存するインフレ政策はあまりにも筋が悪すぎたということを、強く言いたいのです。経済の本質や歴史について先入観を持たずにしっかりと検証していれば、このような愚かな経済政策を行うはずがなかったといえるでしょう。
次に(2)の「経済的な格差の広がり」についてです。私は地方に仕事に行くたびに、その地方の景況感をいろいろな立場の方々にお伺いしているのですが、すでに2013年後半の段階では、大企業に勤める人々は「円安により景気は少しずつ良くなっている」と前向きな意見が多かったのに対して、中小零細企業に勤める人々は「まったく景気は良くなっていない」とあきらめてしまっていました。 ■ 統計には最も弱い層の実態が反映されていない さまざまなシンクタンクの調査では、上場企業などの大企業では円安が増益要因になる一方で、中小零細企業などの非上場企業では円安が減益要因になってしまうことが明らかになっています。大半の中小零細企業の声としては、とりわけ2014年に進んだ輸入インフレからのコスト増によって、とても賃上げができるような状況にはなかったのです。無理をしてでも賃上げをする企業のなかには、大都市圏の公共事業に社員を奪われてしまうという危機感から収益悪化もやむをえなかったと考えている企業が少なくありません。 それと併行するように2013年以降、大都市圏と地方の労働者のあいだでは、実質賃金に大きな開きが生じてしまいました。大都市圏の多くでは実質賃金がプラスになったのに対して、地方の大半では実質賃金が大幅に落ち込み、県単位では優に5%超の下落をしているところが珍しくなかったのです。まさに、大企業と中小零細企業、大都市圏と地方といったように、格差拡大が重層的に進んでしまっているというわけです。 なお、実質賃金の調査について留意すべきは、従業員5人未満の事業所は調査の対象となっていないということです。端的にいうと、最も経済的な苦境にある零細企業の実態が、実質賃金の調査には反映されていないのです。実のところ、経済統計には最も経済的に弱い層の調査が反映されていないという問題があります。その意味では、実質賃金にしても平均給与所得にしても、数字が示しているよりも実態は明らかに悪いと考えるのが妥当であると思われます。 続いて(3)の「輸出が増えない理由」についてですが、アベノミクスが始まった当初から、経済学者の多くは円安がもたらす「Jカーブ効果」という理論を支持していました。「Jカーブ効果」とは、円安により輸入価格が上昇し、一時的に貿易赤字が拡大するとしても、円安による輸出価格低下で輸出数量が徐々に増加し、最終的に貿易収支も改善するという理論のことをいいます。 私はこの「Jカーブ効果」の理論に対して、企業経営の現場を無視した机上の空論であるということを訴え続けてきました。厳しい円高の時であっても、日本企業の多くは海外市場でシェアを失わないようにするために、収益の悪化を覚悟してでも海外での値上げを行わないで辛抱してきたからです。ですから、企業の経営者はたとえ大幅な円安になったとしても、円安が進んだ割合に応じて値下げはしないというのは当然の行動だったのです。
実際にも、円安が20%や30%進んだケースでも、価格を5%や10%しか引き下げないという事例が次々と明らかになりました。日本企業が海外での収益力を飛躍的に高めることができたのは、過去の円安の局面とは異なり、海外での販売価格の引き下げを抑えるようになったからだと断言できるでしょう。ただでさえ、世界経済は2005年〜2007年の高成長の時期と比べると、2013年の時点で欧州や新興国を中心に停滞気味であったので、よりいっそう輸出数量が増えない状況をつくりだすこととなったのです。 最後に(4)の「トリクルダウンが起きない理由」についてです。アベノミクスが目指したトリクルダウンの理論では、円安で収益が上がる大企業が賃上げや設備投資に動くことで、中小零細企業や地方にも利益がしたたり落ちてくるはずでした。しかしながら、この理論はあまりにも経済の本質を逸脱したひどいものでした。中小零細企業ではすでに労働分配率が非常に高く、最初から賃金を引き上げるのは困難であったからです。 大企業の製造業がいちばん労働生産性は高く、中小零細企業の非製造業がいちばん低くなるわけですが、大雑把に言って、大企業の製造業は労働生産性が1500万円程度であるのに対して、中小零細企業の非製造業はその3分の1の500万円程度にしかなりません。ところが、中小零細企業全体の労働分配率は優に7割を超え、大企業の5割程度よりもずっと高くなっているのです。中小零細企業のコストの大部分が人件費なのですから、労働生産性が引き上げられない限り、賃金の引き上げも難しいといわざるをえないでしょう。 ■ 物価は経済が成長する結果、上がるもの トリクルダウンの理論を生みだした本家本元の米国であっても、アベノミクスが始まる以前から、富裕層から庶民へと富がしたたり落ちているという事実はまったくなく、トリクルダウンは幻想にすぎないことが明らかになっていました。インフレと株高で潤ってきたのは、富裕層と大企業だけであり、いまでも格差の拡大は止まっていないのです。その結果として、米国の大統領予備選において、泡沫候補といわれたトランプ氏やサンダース氏が旋風を巻き起こしているというわけなのです。 以上で述べてきましたように、いくつもの単純な誤りに最初から気づくことができずに、日本で浅はかな経済実験が行われてしまったのは、ポール・クルーグマン氏の「インフレ期待」なる理論が「原因」と「結果」を完全に取り違えているにもかかわらず、リフレ派の学者たちが安倍首相にその理論を信じ込ませてしまったからです。なぜ「原因」と「結果」がひっくり返ってしまうのかというと、経済学のなかに非科学的な思想あるいは宗教的な思想が入り込んでしまっているからなのではないでしょうか。
経済の本質からすれば、「物価が上がることによって、景気が良くなったり、生活が豊かになったりする」のではありません。「経済が成長する結果として、物価が上がる」というものでなければならないのです。経済学の世界では、「鶏が先か、卵が先か」の議論が成り立ってしまうことがありますが、実際の経済は決してそのようには動いていかないものです。経済にとって本当に重要なのは、「どちらが先になるのか」ということなのです。 科学の世界では、決して「原因」と「結果」がひっくり返ることはありません。経済学の世界で「物価が上がれば、経済が良くなる」などと主張している学者たちは、私から見ると、科学の世界で「熱は冷たい場所から熱い場所に移っていく」といっているのと同じようなものなのです。キリスト教の権威が支配する中世時代の欧州では、神の権威によって科学の発展が著しく妨げられていましたが、「インフレになると人々が信じれば、実際にインフレになる」というインフレ期待は、まさしく宗教そのものに思えてしまうわけです。 ■ クルーグマン氏は自説の誤りを認めている 私はアベノミクスが始まって以来、その理論的支柱であるクルーグマン氏に対する批判を展開してきましたが、そのクルーグマン氏はすでに自説の誤りを認めるようになっています。昨年の後半には「日銀の金融政策は失敗するかもしれない」と発言を修正したのに加え、今年に入ってからは「金融政策ではほとんど効果が認められない」と自説を否定するような発言にまで踏み込んでいます。詰まるところ、日本における経済実験は失敗したのだと判断しているのです。 クルーグマン氏は自分の誤りを認め、「金融政策ではほとんど効果が認められない」と襟を正しましたが、クルーグマン氏の持論を最大の根拠にしていたリフレ派の学者たちは未だに失敗を認めずに、アベノミクスの軌道修正をできないままでいます。さらには、クルーグマン氏に梯子を外されてしまっているのに、そのことに対してはダンマリを決め込んでいます。 リフレ派の経済学者たちは2014年4月の消費増税がアベノミクスの足かせとなったとして、決して自説を変えようとはせず、責任を回避するのに必死であるようです。しかし現実には、消費税を増税する前にすでに実質賃金が大きく下落していたという事実があります。「消費増税による物価上昇率は2.0%である」という日銀の試算が正しいと仮定したとしても(本当は1.0%台半ばが妥当だと考えられますが)、2013年〜2015年の実質賃金の下落幅4.6%のうち、2.6%が輸入インフレによるもの、2.0%が消費増税によるものだと簡単に因数分解ができてしまうというわけです。 クルーグマン氏は自らの理論の失敗を認め、学者としての矜持を示しました。ところがリフレ派の学者たちは、アベノミクス失敗の要因を消費増税のほかに、世界経済の減速にも求めようとしています。彼らは多くの国民生活をいっそう疲弊させたことについて、どのように思っているのでしょうか。民間レベルでは結果と同時に責任を問われるのが常識なのですが、学者や政治の世界ではこういった無責任体質がまかり通ってしまっているのは、非常に残念なことです。彼らにもクルーグマン氏のように、最後は学者としての矜持を見せてほしいものです。
私は民主党政権の時代から一貫して、「日本は地道に成長戦略を進めていきながら、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落を待つべきである」と主張してきました。「辛抱しながら3年〜5年くらい成長戦略を進めていくうちに、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落によって、日本人の実質賃金は上がり、人々の暮らし向きも良くなるだろう」と予想していたからです。ところがアベノミクスによって、日本人の生活は何もしなかったよりもさらに悪くなってしまいました。 ■ 参考になるシュレーダー政権の構造改革 今の日本に求められているのは、かつてドイツのシュレーダー政権が行ったような構造改革(=成長戦略)です。2000年代前半のドイツは社会保障が手厚いゆえに失業率が10%台に達し、「欧州の病人」と呼ばれていました。そのドイツが一強と呼ばれるほどの経済強国になれたのは、シュレーダー首相が2002年〜2005年にかけて国民の反対を押し切って構造改革を断行し、ドイツの生産性を引き上げることができたからです。そして今や、メルケル首相はその功績の恩恵を最大限に享受しています。 なぜ日本の歴代政権では、シュレーダー政権のような成長戦略ができないのでしょうか。それは、少なくとも小泉政権以降の歴代政権には成長戦略をやる気がまったくなかったからなのです。成長戦略の成果が目に見えるかたちで現れるには、早くて5年、普通は10年の年月を要するといわれています。政治にとって優先されるのは、成果が出るのがずっと先になる政策ではなくて、目先の選挙で投票してもらえる政策を実行することです。したがって、歴代の政権は成長戦略において総花的な政策を掲げて賛成しているような素振りを見せてきましたが、結局のところ真剣に取り組もうとはしなかったのです。 中原 圭介 |
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2016年05月31日
現地ルポ! 北朝鮮「経済5カ年戦略」の現場東洋経済オンライン 5月31日(火)6時0分配信
5月6日から9日まで、36年ぶりとなる朝鮮労働党党大会を開催した北朝鮮。党大会で「総括報告」を行った金正恩・朝鮮労働党委員長は、従来から主張していた「経済建設と核武力建設の併進路線」を再度確認し、「社会主義経済」の下、経済成長達成への強い意志を見せた。 そのなかで、金党委員長は「国家経済発展5カ年戦略」(5カ年戦略)に言及した。金党委員長の説明では、2016年から2020年までに人民経済を活性化させ、経済各部門のバランスある成長を果たし、国の経済を持続的に発展させる土台をつくるための戦略と説明した。 具体的には「党の新たな併進路線(経済建設と核武力建設の併進)を堅持し、エネルギー問題を解決しながら、人民経済の先行部門(電力、石炭、金属、鉄道運輸部門)、基礎工業部門(主に機械工業)を正常軌道に乗せ、農業と軽工業生産を増やし、人民生活を決定的に向上させるべき」と言う。 ■ 国産の原料や設備で生産性を上げることが課題 では北朝鮮の経済現場で、この5カ年戦略はどのように受けとめられているのか。 「2020年までの5カ年戦略の目標を、2018年までになんとしてでも達成し、終了させたい」と言うのは、平壌市の金正淑(キム・ジョンスク)平壌紡績工場第1機織職場で働く白松(ペク・ソン)さん(20)。同工場は、故・金日成主席の夫人の名前がつけられていることからわかる通り、北朝鮮を代表する紡績工場だ。金党委員長や朴奉珠(パク・ポンジュ)首相など要人もよく訪れる工場の一つだ。 なかでも白さんは、1人で7台の機械を回し、1日に数十メートルの布地を編むことができるほどのベテランであり、工場内では「革新者」と呼ばれる模範的な従業員という。
そのためか、5カ年戦略の「前倒し達成」に強い意欲を示した。また、同工場の技士長である李勇勤(リ・ヨングン、43)氏は、「5カ年戦略期間中に、生地の生産能力を現在の1.5倍にまで引き上げられる」と自信を見せる。すでに、高付加価値な整経機やボイラーなどを自主的に製造、輸入に頼らない生産体制を構築中と打ち明ける。 「輸入に頼らない」と李技士長が指摘するのは、今回の党大会で金党委員長が述べた「自力自彊の精神」という言葉と付合する。できるだけ外部に頼らず、自分たちで経済建設を行うというのが、今回の党大会で何回も触れられた「戦略路線」でもある。そのため、現場でも「自力自彊」によって生産性を高め、効率をどう上げるかという課題に取り組まざるを得ない意図が垣間見える。 ■ 金属産業は5カ年戦略をどう受け止めているのか 2012年に金正恩政権が本格化して以降、平壌を中心に住宅や商業施設、レジャー施設など建設ラッシュに沸く北朝鮮。また、工場など機械施設の更新需要も高まる中、そのような需要に応える基礎となる金属産業では、5カ年戦略をどう受け止めているのか。 北朝鮮を代表する理工系大学である金策(キム・チェク)工業総合大学金属工学部の金哲好(キム・チョルホ)学部長(55)は、「党大会直前にも、大学の教員やスタッフが黄海製鉄連合企業所をはじめ現場に出向き、計画の早期達成のために貢献した」と胸を張る。 また金学部長は「5カ年戦略期間中には、製鉄所などの生産現場で重要な電気炉や圧延炉など設備について、われわれの設計や資材で国産化することを目標にした」と言う。すでに一部設備の国産化を達成し、一部の製鋼所で試験稼働させたと付け加える。金学部長は、「自彊力だけが生き残る道。5カ年戦略期間中に“輸入”という言葉に終止符を打ちたい」と言う。 北朝鮮には「主体(チュチェ)鉄」という鉄がある。豊富な鉄鉱石資源を基に、コークスを使わない製鉄法で生産される鉄のことだ。北朝鮮にとってコークスは輸入に頼らざるを得ず、そのためコークスを使わない製鉄方式を模索した歴史がある。
この製造方法などを研究する金策工業総合大学主体鉄研究所の崔林虎(チェ・リムホ)室長(43)は、「主体鉄をはじめ鋼鉄は経済強国建設において革新的な役割を担う」と前置きした後、「主体鉄の生産自体は完成されたが、いまだ解決すべき科学技術的問題が残っている」と打ち明ける。主体鉄研究室が5カ年戦略中に掲げる目標は、「主体鉄生産システムをより完成度を高め、主体鉄を100%利用した鋼鉄生産体系を確立して、金属工業の主体化を完成させること」(崔室長)。 ■ 「自彊力だけが生き残る道」 韓国の北朝鮮専門家である鄭昌鉉(チョン・チャンヒョン)氏は、5カ年戦略の基本的方向性は3つあると指摘する。 まず、人民経済の自立・主体性を強化すべき、ということ。次に、内閣が経済運営に責任を持ち、「われわれ(北朝鮮)式の経済管理方法」を確立する、ということ。そして、科学技術大国になるべく経済建設を行うべき、というものだ。そういう方針が決まっていれば、現場ではその方向性にしたがって努力せざるを得ない。そのため、自力や自彊、主体といった言葉が現場でも聞こえてくるのだろう。 労働党大会の総括報告で、金党委員長はこれまでの経済成果を誇示しながらも、「ある経済部門は情けないほど劣っており、人民経済部門間のバランスが適切に確保されずに、国の経済発展に支障を来している」と率直に語った。それは、総括報告で何回も登場した「電力不足」という、経済活動の基本的なインフラさえ十分に保障されていないという現状を指摘したものだ。 「自主・自彊」という方針が現場で十分に反映されつつ、経済成長は達成できるのか。経済制裁で対外経済活動がきびしい中、資本や資材をどう確保するのか。また、資本主義・市場経済の国に囲まれ、社会主義経済を強く標榜する北朝鮮はどう折り合いを付けるのか。5カ年戦略の具体的な目標は明らかにされていないが、目標を達成したと言えるレベルになるためには、このような問題が横たわっているのが北朝鮮経済の実状でもある。 福田 恵介 |
働く人として尊重されない 疲弊する非正規社員5月31日(火)11時57分配信
婚約者の両親から反対されて破談都内のPR会社に勤めて8年になる契約社員の男性(32)は、28歳の頃、結婚したいと思った派遣社員の女性がいた。プロポーズも受け入れてもらい、2人で頑張って働こうと決めたが、彼女の両親は婚約相手が正社員ではないと知った途端、「娘が苦労するのが目に見えている」と反対した。最初は「親を説得する」と言っていた彼女も、だんだんと会う回数が減っていき、2カ月後には「やっぱり親と縁は切れないから」と言い出し、破談になった。以来、恋愛に臆病になり、ずっと彼女はいない。 http://giwiz-tpc.c.yimg.jp/q/tpc/images/story/2016/5/30/_1464571872_1464571852_aflo_owda029386_R.jpg
イメージ:ロイター/アフロ
就職活動ではメーカーを中心に40社ほど受けたが、内定はゼロ。大学の卒業を延期し、「就職浪人」したが2年目の就職活動もうまくいかなかった。そんなとき、「新卒派遣なら、正社員登用率が高い」という派遣会社の誘い文句に引かれて登録、秋に卒業するとすぐに50人規模のPR会社に派遣され、営業職に就き、3年後に契約社員になった。 「正社員登用」というニンジンぶらさげられ婚約破棄の一件以来、正社員への思いはますます強くなった。上司からは「頑張れば正社員にしてやる」と言われ、鼻先にぶらさげられた「ニンジン」を手に入れようと、正社員以上の仕事量を押し付けられても、嫌な顔を見せずに成果を出してきた。終電間際まで続く打ち合わせに、突然の残業や休日出勤にももちろん応じる。金曜日にいきなり、月曜日までにある企業向けの企画書を仕上げるように言われ、土日に計画していた友人たちとの旅行をキャンセルしたことも。けれど、いくら必死に頑張っても、「ニンジン」は手に入らない。正社員と同じかそれ以上の仕事量、責任を押しつけられて、手取り給与は正社員の7割程度だし、ボーナスももらえない。 「正社員以上に働いて、部署の赤字脱却に貢献してきたのに、待遇では大きな差がある。上司には安くて使い勝手のいい駒として利用されているだけの気がしています」 非正規雇用は右肩上がり非正規社員が増えている。総務省の労働力調査のデータを見ると、1990年に881万人だった非正規雇用者数は右肩上がりで増え、2015年には1980万人と2倍以上になった。正規雇用者は徐々に減っているため、90年には20.2%だった非正規雇用者の割合が、15年には37.5%にまで増えている。非正規雇用者の約7割が女性だ。 非正規雇用者の中には、「夫の扶養内で働きたい」「自由に使える時間がほしい」と、働き方を選んでいる人もいるが、同調査によると、本当は正規雇用を希望している人が2割弱いる。派遣労働者に限ってみると、厚生労働省の調査では正社員を希望する人は6割を超えるという。 中高年派遣は10年で2.4倍最近ではリストラの影響などで中高年の派遣社員も急増している。労働力調査によれば、45歳から64歳の中高年の派遣社員の数は14年平均で34万人と、10年前の2.4倍になった。約119万人いる派遣社員の3割近くが中高年だ。 大手メーカーに勤めていた52歳の男性は、部署の業績が悪化した2年前にリストラに遭った。有給休暇を消化しながら転職活動をしたが、退職日にも再就職先は決まらなかった。一人娘はまだ小学生だし、妻は20年近く専業主婦で、いまさら働いてほしいとも言えない。男性は生活のために派遣会社に登録した。派遣される先は引っ越しや警備、交通整理、倉庫内での作業といった現場での肉体労働ばかりだった。50 を超える体には正直きつい。 20歳以上年下の社員からタメ口で指示物流倉庫に派遣されたときは、注文用紙にある商品を探してきて、それを一括りにする「ピッキング」という業務についた。派遣先のリーダーは、30歳前後の男性正社員。タメ口で指示を出し、ちょっとでもミスをすると「使えねぇ」「お前なんて、クビにしてやる」などと怒鳴る。他の派遣社員へも同じような接し方だった。人格まで否定するような暴言を毎日聞いているうちに、男性は左耳が聞こえなくなった。耳鼻科を受診すると「ストレス性突発性難聴」と言われた。 このままだと両耳が聞こえなくなるという恐怖があり、本社の総務部にパワハラだと訴えたが、「派遣社員だから」「どうしても嫌なら他の会社に移って」と言われ、取り合ってもらえなかった。 「今はセクハラやパワハラに対する目が厳しくなっている時代のはずなのに。正社員の頃は守られている実感がありましたが、派遣社員はその対象ではないんだと思い知らされました」 入院申告したら契約が切られる「この仕事を続けたら自分が壊れると感じたので辞めました」。3年前まで約10年間ホテルの非正規雇用で働いていた関西地方の女性(38)は、連載第1回で募集した「全人格労働」に関するアンケートにそう書いた。 ホテルでの業務はほぼ立ち仕事。午前中は朝食バイキングや会議室のセッティングなど午前5時半から正午ごろまで勤務。一度家に帰って昼食を取って休憩し、午後は5時から宴会の準備から片づけまでを担当し、遅いときは0時近くまで勤務する。翌朝はまた朝5時半から仕事だ。経費削減のため、冷暖房を使用していいのは客のいるエリアのみ。宴会の準備や片づけの間は、夏は暑く冬は寒い場所で働く。一方、正社員は在庫管理や伝票確認などが主な業務で、現場にはあまり出てこなかった。 ある年の冬、体調不良で病院へ行くと、卵巣が大きく腫れていて、卵巣摘出を勧められた。手術は拒否したが、医師には「体は冷えるし、不規則で睡眠時間も取れない。そんな環境で仕事をするな」と叱られた。その数カ月後には、突然過呼吸のような症状に悩まされるようになったという。 また、この女性は働きを認められて派遣から契約社員になって社会保険にも入れたが、ある時「あごの手術と入院で1カ月間休みたい」と伝えたところ、「一度契約を切る」と言われ、派遣社員に戻されたことがある。病気休業中に本人や家族の生活を保障するためにある「傷病手当金」ももらえず、国民健康保険に入り直して自分で保険料を支払うことになった。手術前で不安だったときに、冷たい仕打ちだった。 http://giwiz-tpc.c.yimg.jp/q/tpc/images/story/2016/5/30/_1464571639_1464571612_hiseikikkii.jpg
AERA編集部
6カ国語堪能の添乗員でも年収200万円「インフルエンザで40度の熱を出したまま南米に行かされたこともあります」 海外旅行の添乗員として働く40代女性もアンケートに体験談を寄せてくれた。派遣社員なのにミスはおろか少しの体調不良も許されないなど正社員以上の責任を押し付けられ、それでいて賃金は正社員に比べて低く、ボーナスも有給休暇も退職金もない。 「やりがいのある素晴らしい仕事だけど、代わりがいくらでもいるから便利に使われて、完璧だけを求められるロボットのように扱われている気がします」(女性) 連載第1回で男性添乗員のケースに触れたように、ほとんどの添乗員は派遣会社に登録している派遣社員。海外添乗員たちは自費で各国語を学んでいて、この40代女性は、日本語、英語のほかスペイン語など計6カ国語を使いこなし、添乗員として20年のキャリアもあるが、月に2〜3回のツアーに添乗し、16〜26日ほど働いても年収は200万円前後。さらにそこから国民健康保険と国民年金を自分で支払わなければならない。今年はテロや不景気でツアーが激減しているため、年収が100万円を切ってしまうかもしれないという。 海外添乗員は一度ツアーに出ると帰国するまで拘束され、1日平均12時間、長い時は15、16時間ツアー客と過ごす。書類上は1時間休憩を取っていることにしているが、実際は休憩など取れない。体調が悪くても休めない。ヨーロッパ添乗などではガイドがついていないところを添乗員が案内や通訳をすることも多く、誰でもできる仕事ではないため、病気のままツアーに出発したこともあるし、ツアー前日に急病でどうしても行けなくなったときには、代わりの添乗員の航空券代を全額支払わされた。 http://giwiz-tpc.c.yimg.jp/q/tpc/images/story/2016/5/30/_1464572054_1464572033_aflo_jjie000124_R.jpg
イメージ:アフロ
非正規社員こそ知識を持とう特定社会保険労務士として、雇用者側、従業員側両方の労働相談に乗っている押本靖貴さんによると、「健康保険」「厚生年金」などの社会保険は、会社側の負担も大きいので、非正規雇用者を加入させない会社も少なくない。そうすると、健康保険から支給される「傷病手当金」も受給できず、病気やケガなどで働けない間の生活保障がない。 社会保険は、正規雇用者の4分の3以上の労働時間・日数の場合、加入の義務がある。保険料の自己負担を覚悟しても、傷病手当金がない国民健康保険ではなく、社会保険に入れるような働き方を選んだほうがいい。さらに社会保険料は会社と折半なので、個人にとっては有利な面もある。 また、労災保険はすべての労働者に適用され、1日の勤務でも対象になるし、雇用保険は雇用期間が31日以上の見込みで週20時間以上の勤務なら加入の対象なので、最初に会社に確認したほうがいい。もし雇用保険に加入していなければ、突然雇い止めに遭ったときに失業手当が受給できず、再就職までの収入がゼロになる。会社が守ってくれない以上、自分で守るしかない。 「さまざまな制度や権利について『どうせ非正規だから』とあきらめるのではなく、知識を得て会社と話し合うことも必要です」(押本さん) 裁判以外にも労働審判やあっせん手続き社会保険労務士は労働相談や社会保険に関する専門家で、中でも特定社労士は、当事者同士の話し合いにより解決を目指す「裁判外紛争解決手続(ADR)」のあっせん代理業務もできる。長い時間と多額の費用が必要な「裁判」以外にも、費用が安く迅速に解決できる「労働審判」という手続きや、半日もかからない「あっせん」などもあって、裁判と比べてハードルが低いので、さまざまな選択肢があることを知っておきたい。 これまで4回にわたって、働き方について考えてきた。初回に実施したアンケートの回答や、続々届くメールでのご意見や体験談を読んでいると、いかに仕事で苦しみ、人生が狂ってしまった人が多いかが分かる。問題は深刻だ。「仕事=人生」になりかけている人は、一度立ち止まって考えたほうがいい。仕事に人生をすべて奪われ、自分が壊れてしまう前に。 |
数隻のソーラーバッテリー遊覧船を建造 http://www.kcna.kp/images/home/article_tab_8.jpg 【平壌5月31日発朝鮮中央通信】朝鮮で太陽エネルギーを動力とする数隻の遊覧船を建造した。 遊覧船を建造した嶺南船舶修理工場は、自然エネルギーの利用において先頭に立った単位の中の一つである。 同工場のキム・ホチョル技師長は今は初めにすぎないとし、次のように述べた。 工場では朝鮮労働党第7回大会を迎えて5000トン級貿易貨物船「自力」号と共に、これらのソーラーバッテリー遊覧船を衷情の勤労の贈物に準備した。 工場の設計集団は、陸・海運省海運科学研究所の研究者と協力して、船体の設計と船の操縦システムの設計を最短期間に朝鮮式に完成した。 労働者たちも、十日がかかるとしていた船体の船首部とデッキの製作を4日間に終えるなど、勤労の偉勲を立てた。 こうして建造されたソーラーバッテリー遊覧船は、自力自強の誇らしい建造物である。 遊覧船の長さは23メートル、幅は6.5メートル、排水量は45トン。 速度は6ノット、乗船人員は50〜60人である。 現代化、情報化の水準が高いこれらの遊覧船は遠からず、大同江を行き来するようになるであろう。−−− |
対朝鮮敵視政策とアジア支配戦略の合理化のための口実 朝鮮中央通信社論評 http://www.kcna.kp/images/home/article_tab_8.jpg 【平壌5月31日発朝鮮中央通信】先日、米太平洋軍司令官という者がわれわれに言い掛かりをつけて「米国を打撃するための核・ミサイルの開発を追求している北朝鮮を制止させる最善の方途は強い戦闘力の維持と同盟国との関係強化」だと言った。 米国がけん伝するいわゆる「脅威」というものは、自分らの対朝鮮敵視政策とアジア支配戦略を合理化するための口実にすぎず、実際においてはアジア太平洋重視戦略による軍事力増強を促し、侵略的な軍事同盟を構築して地域の潜在的なライバルをけん制し、衰退、没落する米国の運命を維持しようとする愚かな企図の所産である。 わが共和国とアジア、ひいては世界の平和と安全に重大な脅威を与えるのは、ほかならぬ米国の対朝鮮敵視政策とアジア太平洋重視戦略である。 米国は、朝鮮を併呑して地域大国であるロシアと中国を手段と方法の限りを尽くして包囲し、抑制することによって、アジア太平洋地域の支配者、世界の帝王に君臨しようとする危険極まりない圧殺政策、制覇戦略に執着している。 世界的範囲での新たな対決と軍備競争時代をもたらす米国の支配主義的策動は、国際社会の強い反発と警戒心を呼び起こさざるを得ない。 注がれる世界の糾弾世論をまどわし、自分らの世界制覇策動を合理化、正当化するために米国が狂ったように吹いているのがまさに、「北朝鮮脅威」のほらである。 「脅威」に対処するという名分の下、アジア太平洋地域への武力増強と日本、南朝鮮との侵略的軍事同盟の構築を促すことによって、アジアで経済大国として急成長を遂げる中国と大国の地位を取り戻したロシアを最終的に制圧しようとしている。 多すぎる戦争費用の蕩尽と経済構造の脆弱さ、世界の多極化すう勢などによって滅亡の奈落に深く陥っている自分らの運命を豊かな資源と市場を有しており、戦略的地位が日ごとに拡大しているアジア太平洋地域に対する支配を通じて救ってみようとしている。 これは、「北朝鮮脅威論」が米国がアジア太平洋地域の諸大国をけん制するための自分らの軍事的策動を合理化し、衰退没落の哀れな境遇から脱してみようと持ち出した詭(き)弁にすぎないということを示している。 2002年1月14日付の米紙「ワシントン・ポスト」は、米中央情報局(CIA)が1990年代にすでにロシアと中国を自分らの利益に挑戦しうる潜在的ライバルに規定し、その後、アジア地域に対する武力増強の名分を立てるためにわが共和国を「脅威国家」のリストにのせた事実について暴露した。 米国がいくら「北朝鮮脅威論」を並べ立てても、その欺まん的で犯罪的な性格は絶対に隠せない。 米国が「脅威」だと言い掛かりをつけるわれわれの核戦力は、国と民族の安全を守り抜くための正義の自衛的手段である。 われわれの核戦力は、われわれに手出ししない限り、誰にも脅威にならない。 米国は、破たんした欺まん的な「北朝鮮脅威論」を直ちに撤回すべきであり、わが共和国と地域諸国を脅かす不当な軍事行動を中止すべきである。−−− |




