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長いと思っていた25日間の旅。 いつか終わりが来ることを予感しながら、それはずっと先のことのような気がしていた。 しかし、バーミングハム駅に列車が入ってきたとき、この旅もいよいよ最後の乗車となった。 ホームステイで5日間お世話になった方の姿が見えなくなるまで手を振った。 車両はこれまで乗車してきた中でも一番のボロ揃い。 乗客も5日前と同様に少なめだ。 しかし、5日前と違い、今日は寝台車のほうに乗車だ。 個室「2」のドアを開けて喜んだ。 トイレつきの広めのタイプだった。 あのせまくて吐き気のしたSuperlinerとは違って、このViewlinerは個室がゆったりとしている。 値段もこっちのほうが安いので、いよいよ得した感じだ。 見慣れた街が遠ざかっていき、ジョージア州との境にある山間部を目指してカーブを繰り返すと、 これまでの緊張感が解けたのか、親子ふたりとも昼寝をはじめてしまった。 ジョージア州に入ると、東部時間のエリアに入って1時間時計が前倒しで進む。 携帯電話は自動的に電波をキャッチして1時間早くなっていた。 南部最大の都市、アトランタの摩天楼を見ながら最後の日没を迎え、 二人が起きたのは霧に覆われたバージニア州に入ってからだった。 最後の朝食には、南部で食べそびれていた「コーングリッツ」がこの日のスペシャルと聞いて、迷わず注文した。 昨日の夕食には「キャットフィッシュ」、デザートには「ピーカンパイ」を頼んだので、 これでニューオリンズで食べたものをあわせると、南部料理の代表格をほとんど押さえた感じになった。 ここまで来て、忘れ物をするわけにはいかない。 入念に個室内をチェックして荷造りをして、見慣れたワシントンDCの風景が車窓に現れるのを待った。 ポトマック川を渡って、青空に突き刺さるように尖ったモニュメントが見えてきた。 ワシントンDCだ。 25日前に記念写真を撮った駅舎に戻ってきた。 もう、忘れ物の心配や、乗り遅れの心配、ホテルの予約の心配をしなくてすむ。 安堵感と疲労感が入り混じりながら、いつもの地下鉄乗り場へと歩いた。 25日間、長いようで、短かったような気もする。 濃縮された25日間は、これからゆっくり溶け出すように、日々思い出されることになりそうだ。 長らくのご声援、有り難うございました! (完)
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米国一周◎観察日記
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午前5時半の目覚ましに叩き起こされて、親子で慌しく身仕度を整え、ニューオリンズのホテルからチェックアウトした。 午前7時5分発の「Crescent」は、定刻にニューオリンズ駅を発車。 朝日に輝くドームは、ハリケーン「カトリーナ」では悲惨な避難生活の象徴だったが、 いまではニューオリンズの街の復興を象徴しているようだ。 今日のCrescent号は、発車が早朝のせいもあってか、乗客は編成全部で40人ほど。 寝台車に乗車したお客さんの姿はほとんど見かけなかった。 座席車にしても、お客さんの少ない車両では1両に4人しか乗っていなかった。 これまで満員の列車つづきだったので、ちょっと意外な感じだったが、 お客さんが多いのはアトランターワシントンDC-ニューヨーク間なのかもしれない。 ルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州と、緑豊かなエリアを北東へ走り続ける。 車窓は緑が続き、ところどころで激しい雨が窓をたたく。 この旅で最後の立ち寄り地点となるバーミングハムには定刻に到着。 滞在中は、こちらにお住まいの日本の方のお宅にホームステイをさせて頂くことになっている。 Crescentはバーミングハムで少し長めの停車。 その間に先回りして、バーミングハム在住中の頃に通い詰めた陸橋から、発車する編成を撮ろうと思った。 しかし、駅から1ブロック歩いたところで、激しいにわか雨が降ってきた。 ビルのひさしのしたで二人で雨宿り。 アメリカ南部特有の夏らしい気候の歓迎だ。 10分ちょっとで雨が小降りになり、そしてほぼ雨が上がったところで、汽笛が2つ鳴り響いた。 陸橋の上からの撮影は間に合わなかったが、ビルの陰から発車を見送る。 雨上がりで蒸し暑い中、陸橋の真ん中まで行くと、ほどなく貨物列車がやってきた。 毎日のように通った2年前の頃が甦る。 反対からも貨物列車が到着、発車するとすぐに後続の貨物列車がやってきた。 昨年の秋以来、アメリカの景気はどん底と言われているが、 貨物列車の編成を見る限り、物流は堅調な様子で少し安心する。 バーミングハムを月曜日に列車で出発すると、一周の旅はワシントンDCで完結を迎える。
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8月16日の日曜日にSunset Limited号でロサンゼルスを旅立ってから、 ニューオリンズに着くまで、およそ50時間。 しかもアリゾナ、テキサスと、荒野と砂漠が延々と続く区間。 途中、喫煙時間を確保するために停車する駅もあったが、 外のあまりの灼熱と熱風に、誰も喫煙に降りてこない駅さえあった。 仮にあの熱風の中でタバコに火をつけたら、吸う前に一気に燃えて無くなってしまうのではないかと思ったほど。 道中、最大の楽しみは、三度の食事。 なるべくメニューが重ならないように、毎回違うものを選んで食べた。 食後にウトウト〜っとして、目覚めても、車窓の景色はまったく変わらず。 さすがに長男の退屈も限界に達してきて、ついにパソコンのゲームを解禁してしまった。 ミシシッピ川の長大な鉄橋を越え、ニューオリンズに着いたときは、ほんと解放されたという感じだった。 あとから思えば、なんと贅沢な感想だったことか。 ニューオリンズの名物の一つは、映画などにもたびたび登場する路面電車。 今日はその端から端まで、延々とつりかけモーターの音を聞きながら往復してきた。 今回の旅は、「延々と」がキーワードのようで。 明朝、一周の鉄道旅としては最後の立ち寄り地点、アラバマ州・バーミングハムに向かいます。
旅も、残すところ1週間を切りました。 |
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12日の午前9時45分。 シアトルからアメリカ西海岸を南下しはじめた。 お世話になる列車はCoast Starlight。 一夜を過ごすので、Superliner Roometteという個室をキープしたが、 これが超せまい!! 特に寝台の上段、ノートパソコンを膝の上で打とうにも、画面が天井につっかえる。 仕方なく、横になってお腹の上にパソコンを載せ、 首をほぼ直角に曲げてチャレンジしたが、 10分もすると吐き気がしてきて、あえなく断念。 この狭いスペースに、大柄なアメリカ人たちが入れるとはとても思えない・・・。 大柄な夫婦など、どっちが上段に上がるか、ケンカになること請け合い。 この狭い個室のせいにするわけにはいかないが、 翌朝、エミリービルで降りたとき、デジカメの充電器を置き忘れた。 この旅のために買ったばかりのデジカメも、充電が切れたらタダの箱。 予備のデジカメを本務機に格上げして、本命のデジカメは休車に。 ここまで順調すぎた旅だけに、これは警鐘だと気を引き締めることにする。 エミリービルからサンフランシスコへは、湾を越えてバスで30分。 サンフランシスコといえばケーブルカーが代名詞のようになっているが、 実は路面電車も走っており、車両のバラエティから言えば、こっちのほうが圧倒的に面白い。 カラーリングもすべて異なっていて、前身も異なっていたり。 次々とやってくる電車に興奮状態でカメラを向け続けた。 エミリービルのホテルも素敵なロケーションだった。 ホテルのバルコニーは線路に面していて、 長大な貨物列車、オール2階建ての近郊列車、長距離のアムトラックなどが続々と行き交う。 キッチンで食事を作りながらも、食事をしながらも、 バルコニーの向こうを行き交う列車が目に入り、理想的な生活の疑似体験! こんなマンションに住めたらなぁ〜♪ 今日から再び西海岸を南下、ロサンゼルスで短い滞在をしてSunset Limitedに乗り継ぐ。
今度は車中2連泊でニューオリンズ、旅はいよいよ後半から終盤へと差し掛かる。 このあとも忘れ物に注意して、行ってきます。 |
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8月1日にワシントンDCを出発して、はや10日、いや、日付が変わったので11日。 シカゴからEmpier Builderでノースダコタ州の恩師の待つFargoに降り立ったのが6日で、その日のうちに州西部のMedoraに先生の車で移動して、テントを張ってのキャンプ。 2泊とも夜間は土砂降りの雷雨で、テントから雨が漏って来て布団がずぶ濡れになったが、朝、火を起こす頃にはピタリと雨が止むという、それなりの幸運にも恵まれた。 鉄道旅は9日の未明、午前3時40分に再開。駅に見送りに来て下さった恩師と別れのハグをして、再びEmpier Builderに乗り込む。一日1便しかないので、3日後にシカゴを出た同じ列車に乗り込んだ感じになる。 ノースダコタ州から、モンタナ州にかけては、地平線の彼方まで畑が広がっている。車窓の右端から左端まで視線を振っても、まったく人家が目に入らないほどの広大な畑が、何時間も続く。 この地平線が見たかった。 それでも、それが何時間も、何時間も延々と続くと、長男には退屈を通り越して、ちょっとつらかったかも。 夕方にはモンタナ州の西の端の森林地帯を越えて、太陽は山の向こうへと沈んだ。 未明のSpokane駅。 Empier Builderの上り列車と、下り列車がホームに並び、それぞれの目的地へと向かう。 同時に、シアトル行きとポートランド行きの編成が切り離され、別々に目的地へ向かう。 ここで私たちの乗った車両が最後尾になるはずが、今日はプライベートカーが連結され、後ろの見通しが妨げられてしまった。 午前11時、定刻より40分近く遅れて終点のシアトルに到着した。 ホテルのチェックインまでは時間がたっぷり、荷物だけ預けて、マーケットや水族館を歩き回った。 ホテルに帰った頃には、足が棒。 それでも、鉄道旅の合間のホテルでは、洗濯とアイロンかけが待っている。 長男の寝息を聞きながら3時間、すっかり汗をかきながら、ようやく終わってこのあと眠りに就ける。 鉄道旅は12日の午前9時45分にCoast Starlightで再開。ここからはアメリカ西海岸をまっすぐに南下する。
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