演奏会いいたい砲台

「海外オーケストラ来日公演記録抄」の「いいたい砲台」(ゲストブックにリンク先あり)にある2006年以降に行った演奏会の感想です

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(会場)東京オペラシティコンサートホール
(座席)2階L1列61番
(曲目)
シューベルト:交響曲第7番「未完成」
マーラー:交響曲第5番

最初この組み合わせの来日予定をみたとき、「大野さん、いつからウィーン響と親密になったのだろう、まさか次期常任?」と思ったが全然そうではなかったようだ。それどころか5月6日に初顔合わせの演奏会があったというのだから、それから一週間もしないうちに日本公演初日という、ちょっとあまりにもあまりにもというかんじの今回はツアーだ。

ただそれでもやはり大野さんは只者ではなかった。音楽評論家の東条碩夫さんの公演レポートによると、二度のサントリーホールの公演でもかなりの大野色をみせた手応え充分の演奏を展開していたようで、この公演二度目の演奏となるマーラーの5番がメインに据えられたこの日の演奏会には少なからず期待を持ったものだった。

この日は今ツアー中唯一協奏曲のない大野さんの独演会。前半はこのツアー唯一演奏される「未完成」。じつはこのオケで「未完成」を聴くのは三度目。1989年のオーチャードホールでのプレートル。2002年のサントリーホールでのフェドセーエフ。そして今回。

だがここでウィーン響の強かさを痛感させられた。じつはこの日の演奏を含めて、過去二度聴いた「未完成」と、正直ほとんど印象が変わらない。たしかにプレートルではティンパニーの強めの打ち込みが、フェドセーエフでは造形の堅固さが、そしてこの日は金管がやや重心を低めに置いた厚めの響きが、それぞれ印象として強く残っているものの、それ以上にウィーン響のもつ響きとバランスが、ここ四半世紀ほとんど変わっていないということに驚きを感じたものでした。伝統というとウィーンフィルの方が強くイメージとしてはあるものの、ウィーン響もこのオケならではの語法、さらにはサウンドがしっかりと守りそして語り継がれているということを強く認識させられたものでした。

そして後半ではその語法を汲んだ上での大野さんのマーラーが全開となった。

第一楽章、決然とした、それでいて柔和な響きと格調の高さも兼ね備えたトランペットが鳴り渡った。これも見事だったが、それに続く大野さんのマーラーはじつに鮮やかだった。

とにかく大きな表情と大きな音楽がそこにはあった。劇的、絢爛、豪奢、そしてどこか頽廃と爛熟というものもそこには感じられた。だが不健康とか病的というものはそこにはなく、聴いていてマーラーというよりリヒャルト・シュトラウスに近いような、そんなかんじのマーラーをここでは印象として受けた。おそらくそれはウィーン響のサウンドがそうさせているのだろう。そしてそれはこの交響曲が「ばらの騎士」とそんなに時代があいてないことも感じられるものがあった。これはなんとも不思議な発見だった。

あとここで大野さんは楽章が進むに従い、どんどん緩急と表情が大きくなり、より大胆な跳躍をみせていった。それは終楽章の最後に、これでもかというくらいの輝きと力を放った圧倒的なものへと音楽を導いていったのですが、ここでも大野さんはウィーン響の語法というものを尊重した、「聞く」と「話す」を両立させた見事な演奏を展開していました。このため最後はかなりいっぱいいっぱい(特にホルンセクションはかなりしんどいことになっていましたが…)のところまできていたものの、大野さんがウィーン響の語法を尊重したおかげで、無駄な労力をオケに強いることがなかった分、オケが最後まで全力を尽くし切れたのは、指揮者の力量のたまものといったところかもしれません。

たしかに死生観や絶望や慟哭といったものとは無縁のマーラーだったかもしれませんが、随所にそれに代わる凄みや、緊張感をともなった、とにかく稀にみる強大なマーラーでした。

このあとアンコールとして、「春の声」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「雷鳴と電光」と三曲演奏されましたが、これはサントリーホールの二公演と同じとのこと、オケもこのあたりはたいへんだったかも。ただこの日はマーラーの編成のままアンコールをやったせいか、これまた鳴りに鳴ったワルツ&ポルカとなり、特に「雷鳴と電光」はじつに豪快なくらい打楽器が鳴り捲った演奏となりました。

とにかく大野さんがウィーンの伝統というかサウンドを掌握しながらの、じつに見事な、ある意味胸のすくような演奏でした(とはいえウィーン響が凄く上手かったというわけではないのですが…)。可能なことならぜひまたこの組み合わせで(ただしもっと共演を重ねてから)聴いてみたいと思わせるものがありましだか、ウィーン響が次に来日するときはおそらく次期首席指揮者のフィリップ・ジョルダンとの公演になることでしょう。次回大野さんはどこのオーケストラと来日することになるのでしょうか。

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僕には残念ながらウィーン響のいいところは全く感じられませんでした。大野がかわいそうとまで感じました。オペラシティでのマーラーは音が飽和状態で厳しいですねー。

2013/5/20(月) 午後 6:50 [ ヤクルトファン ] 返信する

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>ウィーン響のいいところ
特徴は「未完成」などとてもよく出ていたと思いますし、マーラーもウィーン響だから、ああいうRシュトラウスみたいなサウンドになったのだと思います。ただマーラーの場合はそう思われても仕方ないかもしれません。というのもプレートルがマーラーをこのオケで指揮したときも、不思議な演奏という印象が強く残ってしまいましたので。大野さんはよくやったと思います。ただしやはりもう少し回数重ねてから来日してほしかったという気はします。ただヤクルトファンさんの意見が、以前、ブルゴスがウィーン響と演奏したスペインものの時に感じた印象とあまりにもよく似ていてちょっとビックリしています。たしかにどちらにもしんどい部分はあったでしょうね。ただ自分はこういう楽天的ともいえるマーラーは大好きなので、こういう評価になったのかもしれません。あとホールのそれはたしかに感じました。このホールてのマーラーは今後一考しなければいけないようです。

コメントありがとうございました。

2013/5/21(火) 午前 1:14 [ ひまや亭 ] 返信する

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