演奏会いいたい砲台

「海外オーケストラ来日公演記録抄」の「いいたい砲台」(ゲストブックにリンク先あり)にある2006年以降に行った演奏会の感想です

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(会場)みなとみらいホール
(座席)2階LE2列3番
(曲目)
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
ブルックナー:交響曲第7番
 
自分にとって神奈川フィルのブルックナーの7番はシュナイト以来、飯守さんの同曲はサマーミューザ以来というから、どちらも久しぶり。しかもこの日のプログラムの組み合わせは、1986年のヨッフムとコンセルトヘボウの思い出があるだけにとても楽しみにしていました。
 
飯守さんの前回の7番は、前半が飯守さん自身によるプレトーク。後半がこの曲一曲のみという濃密なもので、前半の飯守さんの熱気溢れるピアノを弾きながらの解説、そして後半の熱くそして強いタッチで描かれた強靭ともいえる響きをもつ、人生肯定に立ったようなそれは、未だに少なからぬインパクトを自分に与えています。今回もそういう延長線上の演奏になるのでは?というふうに予想はしていたのですがはたして。
 
まず前半のワーグナーは、ひじょうに激しく、そして官能的というより結晶化したような厳しい響きが情熱的に奏でられたものとなっており、なかなか鬼気迫るものがありましたが、オケの音が今一つ出てこないもどかしさがあり、どうしたのかとちょっと不思議な感じのまま終わってしまいました。
 
このため後半ちょっと不安になったのですが、この悪い予感がいきなり的中してしまいました。
 
この日の飯守さんは、前回のそれよりもかなり表情と緩急のつけ方が多彩で、強靭さをやや控えめにする反面、音楽のもつ静寂と緊張感を強く印象づけるような部分が多く、オケにかなり負荷のかかるタイプの演奏をしていましたが、残念なことに神奈川フィルの、特に管楽器がいまひとつ「退いて」しまい、ミスするたびに自信の無さをこちらに見せているかのようで、正直聴いていてこちらの方が「退いて」しまいそうになりました。
 
そういえば以前別のオケでしたが、飯守さんが指揮したマーラーの「復活」で、やはりこういう場面に出っくわし、少なからぬ失望を感じたことがありましたが、今回も同じように、とにかくうまく取り繕うとしているかのようなことが逆効果に働くという、そういう悪循環を断ち切れぬまま第一楽章が終了してしまいました。(飯守さんの強い音楽は、ときとして気の弱いオケの団員等をたじろがせてしまうのかもしれません。)
 
さすがにこれにはまいりましたが、次の第二楽章で、弦を中心に激しくのめり込むような音楽を聴かせはじめてから、徐々に態勢が立て直され始め、この楽章が終わるころには、このオケのひとつの武器ともいえる弦のデリケートな響きが横溢するなかなかのものとなっていました。
 
このため後半二つの楽章も比較的好調に演奏され、特に終楽章は飯守さんの描いている、ブルックナーの没我の狂気ともいえるそれと、ベートーヴェン的ともいえる激しい追い込みが、かなりのところまで表出されており、なかなか聴き応えのある演奏となっていました。
 
特にティンパニーと、中低音域の弦の奮闘はかなりのものがあり、聴いていて圧倒されそうになる所も随所にありました。
 
全体的には、前回飯守さんが川崎で聴かせたものよりは柔軟性に富んではいるものの、あいかわらず激しく、ある意味狂気すらはらんだようなブルックナーの没我の凄さを強烈に感じさせられるような、とにかく「強い」ブルックナーを聴くことができました。
 
ただそのためでしょうか、今回はその飯守さんの強さのためか、神奈川フィルのいい所だけでなく、あまり芳しくない面…というよりシュナイト時代前期に一時聴かれた、「考えるよりもただ繕う」という姿勢が散見されたように感じられたことがちょっと残念でした。
 
おそらく自分がこのオケを聴くのは早くもこれが今年最後、ひょっとするともう最後になるかもしれなかっただけに、この悪い意味での先祖がえり現象だけはなんともでした。
 
もっとも指揮者によってはそういう弱点が表出してしまうことが分かったことは、今後にいい課題ができたといってもいいと思います。
 
ただこれらは全体から見れば些細なキズでして、全体的にはもちろん2003年に初めて聴いたころの神奈川フィルとは雲泥の差があります。これも今までこのオーケストラを支え率いてきた指揮者や団員の方々の努力のたまものといえるでしょう。終楽章の飯守さんのあの白熱した音楽を、あそこまで表出できたのも、その証といえると思います。
 
間もなく若いリーダーを頂きに冠した新しい体制がスタートします。これからの神奈川フィルがよりよき音楽を常に奏で続けていくことを心から祈りたいと思います。以上です。

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