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(会場)NHKホール
(座席)3階L9列29番
(曲目)
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21 (ピアノ)ユジャ・ワン
シューベルト(リスト編) :糸を紡ぐグレートヒェン(アンコール)
〜休憩〜
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 (ハース版) 一か月後に68才の誕生日を迎えるマイケル・ティルソン・トーマス(MTT)。 この指揮者を聴くのは実に29年ぶり、
しかもアメリカ西海岸のオーケストラを聴くのは今回が初ということで、 かなり新鮮なものがあった。 MTTがこのオーケストラの音楽監督になって今年で21年。
近年ではまれにみる長期政権で、
その評判も評価も安定した高いものを受けており、 ある意味北米で最も安定したコンビといわれていたので、 一度聴いてみたいと思っていたが今回までなかなか聴く機会がなかった。 MTTというとマーラーというイメージが強いが、 自分はかつてロンドン響を指揮しての「ジークフリート牧歌」が、 とにかく素晴らしくいいイメージが残っていて、 ブルックナーあたりやってくれないものかといつも思っていたが、 ようやく今回その夢がかなった。 前半のショパンは、 ユジャ・ワンの小回りの利く爽やかなソロに対して、 MTTのそれはややこの曲にしては器がきもち大きい気がしたけど、 弦の弱音の美しさを軸としたとても丁寧な音楽運びに、 このコンビのすばらしさを早くもみたような気がしたものでした。 そして後半のブルックナー。 決して凄みがあるとか圧倒的とかそういうものではないけど、 良心的というか丁寧かつ一点一画たりとも曖昧にしない、 明確明晰かつ洗練されてはいるが素朴な詩情も大切にした、 すべてに行き届いたとても神経の細やかなブルックナーがそこにはあった。 しかもじつに落ち着いた音質と音色で穏やかにすすめられてはいくものの、
テンポはむしろ全体的には速めなものとなっていて、 全体で70分かかっていなかったと思う。 ただそれがためにせかせかしたというところはなく、
むしろ音楽ひとつひとつを丁寧に紡いでいく趣が強い。 それでいて神経質な感は皆無で、
音楽は何事もなくさらさらと、 しかも運動的の要素も含みながら流れていくような、 ところどころ個性的な部分はあるものの、 ほんとうに自然体の穏やかな美しさをもつブルックナーとなっていた。 第二楽章もそのため深刻に過ぎることはなく、 ひじょうに淡々とすすめられているように感じられが、 その見通しはいいものの、 どこか薄く霧がかかったような響きが、 独特のクリアな音の世界を展開させていく。 このため第二楽章終盤の美しさがひじょうに映えたものに感じられ、
かつて聴いたヨッフムとはまた違った感銘を与えてくれた。 その後第三楽章の快活な表情も素晴らしかったのですが、
第四楽章がほんとうに見事。 速めのテンポではじめ緩急を大きくつけたようにはじまったものの、 次第にその緩急の差が小さくなっていき、 いつのまにかじつに自然な高揚感をもった流れへと、 音楽が自然に運ばれていった。 またところどころでマーラーの出現がもうすぐそこまで来ているような、
そんな雰囲気が感じられるところがあった。 これはメロディを美しく歌いぬく部分と、
金管の堂々としたコラールの対比が、 マーラーのもつ対極から対極へという部分と重なっていのかもしれないが、 これはMTTのつくりあげたクリアな響きが、 そういうふうに一部聴かせているのかもしれない。 だがそれ以上に特に素晴らしく感じたのは、 そのコーダに向かっていく目の覚めるような高揚感。 こんなに自然体でありながら、
活き活きとした高揚感に満ちたブルックナーというのも珍しい。 クリアでバランスもよく、
丁寧で洗練されていながらも、 綺麗事にまるでとどまることなく、 じつに心惹き込まれる見事な演奏だった。 第二楽章でワーグナーの死を悲しんだブルックナーが、 この楽章ではその悲しみから立ち直り、 再び前へ前へと歩みだすという、 そんな気持ちがこちらに伝わってくるかのような、 ブルックナーという人間を見事に肯定しきった、 じつに明るく元気と活力に満ちたそれは音楽だった。 そのためなのか、
ブルックナーというと聴いてヘトヘトになってしまうことがよくあるが、 ここではそういうことはなく、 むしろとても音楽から元気を与えられ、 「明日もがんばるぞ」
というそんなかんじの演奏に聴こえてきた。
これを聴いて、 なるほどこのコンビが二十年以上続き、 多くの人たちから支持されている理由なのかと、 大納得なものがありました。 月並みな言葉ではありますが、 「アメリカの良心」
といったものすら
そこには感じられたほどでした。 ただ今回のMTTのブルックナー。 日本の今のブルックナー好きには、
あまり好意的には受け取られない、 もしくは食い足りないととられかねない演奏かもしれませんが、 自分にはブルックナーの新たな一面というか、 ブルックナーのもつ幅広さのようなものが感じられ、 ある意味で目を覚まさせられるものがあった。 編成は14型という小ぶりではありましたが、 まるでそんなかんじがしないほど豊かな音があのNHKホールに響いていました。 次のこのコンビの来日が今から楽しみです。
繰り返しますが本当に素晴らしいブルックナーでした。 尚、第二楽章でシンバルとトライアングルあり。 |

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