『日本周遊紀行』

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日本周遊紀行(78)松山 「霊場・石手寺」   、



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伊予随一の51番霊場・石手寺本堂と「マントラ洞」入場門



『 伊予の秋 石手の寺の 香盤に 
       海のいろして 立つ煙かな
 』 与謝野晶子


小一時間、本館の由緒ある温泉に入浴し、施設、周辺を見学して退出した。
奥道後のNTT保養所「拓泉荘」へ戻り、宿の朝食を格別美味しく戴いて、改めて本日の行程へと出発する。
先ず、本館のすぐ近く、昨日も今朝も門前を通過しながら車中より一見しただけの第五十一番霊場・「石手寺」である。 
入り口に大きな御影石に刻印された石柱に「熊野山・石手寺」とあった。

小川に架かる小さな狐狸橋を渡ると両側に、未だ開店前の土産物屋などが軒を並べている。 参道を進むと荘厳な堂々たる仁王門(国宝)が建ち、巨大な「わらじ」が通路の両脇に置かれてあり、その横に霊場巡りのお遍路さんであろうか、願掛けの小草鞋が多数吊るしてあった。
この門は鎌倉時代の造営で、両側内の仁王像・金剛力士像(阿ア形像、吽ン形像)は同時代の代表的彫刻家・運慶の作といわれ、これはもう完全に国宝クラスの像物である。 

門をくぐると右手に均整のとれた華麗な三重塔がそびえ、それと 並んで鐘楼が建っている。この鐘楼前の歌碑(冒頭)は道後を訪れた時「与謝野晶子」が詠ったものという。 正面一段高いところに緑に囲まれて本堂があり、並んで大師堂が建っていた。

今も尚、四国霊場第五十一番の札所では伊予地方随一の名刹として松山地方の大師信仰の中心であり霊験あらたかなところから、善男善女の参詣は後をたたないという。
建造物の大半は国宝、重要文化財となっており、四国霊場の中でも由緒ある寺の代表的な一つである。
又、小高い山の上に一際大きな弘法大師像が立つ、それは像体は中国を、顔はインドを向いているともいわれる。

地元出身の正岡子規もお堂の多さに・・、

『 石手寺や 何堂彼堂 弥勒堂 』 

と面白可笑しく詠んでいる。


この寺は、聖武天皇(奈良初期)、伊予国司・「越智玉純」(おちたまずみ)が天皇の勅願を受け、鎮護国家の為に伽藍を創建して、はじめ「安養寺」として名を付けた古寺であったという。
寺院境域は66000平方メートルという広大な敷地を持つ。奈良中期に、「衛門三郎」と弘法大師の縁起から「石手寺」と名を変えたという。 

この衛門三郎こそ、「元祖、四国巡礼者」であったとも云われる。 
ある日、伊予の住人「衛門三郎」が、托鉢(修行僧が、各戸で布施する米銭を鉄鉢で受けてまわること。乞食・コツジキ)で訪れた大師に向って「帰れ、このくそ坊主」と悪行をなした。すると忽ち一家は破滅的天罰が下り、その原因が托鉢の僧にあったことを知る。 三郎は大師に一目会って懺悔すべく旅立ち、伊予から讃岐へ、更に阿波、土佐を経て大師の後を追い、四国の道を二十周して力尽き、息をひきとる間際、大師に会うことが出来たという。 大師は懺悔を聞きながら手に石を握らせた。 次の年、伊予国司、河野家に「左手に石を握った男子」が誕生し、安養寺の住職は「衛門三郎の再来」として、寺の名を「石手寺」と改めたという。 衛門三郎の善行を聞いた人々が、四国を巡る遍路に出るようになったともいわれる。
遍路行者達は、古刹・名刹に巡拝し心を清め、更に、名湯道後で身体を洗い流して明日への活力としたのであろう。

『 西方を よそとは見まじ 安養の 
          寺に詣りて 受くる十楽
 』 御詠歌




石手寺の本堂前に展開する華麗な建築物は謂わば、大師の教えを貫く精神世界である。 表の顔という人もいる。 
ところが、この石手寺は珍しく別な顔を持つもう一つの世界があるという。 
本堂裏手にある「マントラ洞」というのがそれで、怪しげな部分を代表するシロモノは「裏の顔、常ならざる陰の世界」とも云える世界を演出している。
先ず、入口は「曼荼羅」として木造の普通の門に相当する造りであるが、周辺の飾り物はイカにも奇妙な代物なのである。

曼荼羅とは、本質を有するものの意で、特に仏界では悟りの世界を象徴するものとされる。 この奥に洞窟があって異次元の空間が広がっている。その洞窟も幾つかあって「都卒天洞」(とそつてんどう)、「地底マントラ」、「大仙窟」等の名称がついていて、これらは人間の苦しみ、人間のむごさ、人間の痛みなどの苦しい人生模様を現しているともいわれる。

本堂前の華麗な世界は、精神が昇華する願いを込めた世界であり、一種、願望と理想を描いているが、反面、裏の洞窟に広がる暗欝な世界は、現実的な不屈の精神界を表現しているようでもある。
この苦しみに負けず、生きるものは幸福へと進もう」とする不屈の呼びかけであろうか。
石手寺は、二つの世界が体験出来るのである・・!!。

次回は、「正岡子規



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