自浄能力のない国に、もの申してやるよ。有り難く頂戴しなさい。

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「国民基金」とは何であったのか(中)  Ⅹその他
 
 ■ 「国民基金」(女性のためのアジア平和国民基金)とは何であったのか(中)
−−「国民基金」の発足と「慰安婦」問題の本質の歪曲化

女性史研究者 鈴木裕子

 ■ 責任者処罰論の提起と「見舞金」構想↓「民間基金」「国民基金」


 「責任者処罰」論が提起されたのは、直接的には93年10月日本で開催された第2回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議で、韓国挺身隊問題対策協議会の李美卿総務(現・国会議員)が提起、その背景には、まず「補償に代わる措置」としての「金銭的決着」への対応策として、より本質的には国家犯罪責任者への「不処罰の循環を断ち切」り、さらに「不処罰であること」により、被害者の名誉や人権が回復されず、法的賠償もなされず、という悪循環を断ち切るためであった。

 
 その頃、日本内部の一部の支援団体・女性議員・知識人たちによる「生活支援基金」構想が水面下で浮上していた。

 第2回アジア連帯会議でもその予兆は感じられていた。「〔責任者処罰問題は〕長期的な課題としていくべきではないか」「今、生活の困難な元『慰安婦』の方々の生活をどう支援していくのかということも大変大切」と、当時、社会党参院議員の清水澄子氏の同会議での発言が思い出される。

 実際、94年6月から7月にかけて「表面化」した「民間」の女性たち(清水氏、上野千鶴子氏、広中和歌子氏ら10人の女性)が呼びかけ人となって「『元従軍慰安婦』を支援する募金への呼びかけ(仮題)」=「民間基金」構想の存在が明らかになった。


 この構想自体は、支援団体の反対により、いったん挫折するものの、いわば94年8月31日の「村山首相談話」中の「民間基金」を原資とする「見舞金」贈与構想へと収斂されたとみるべきものであろう。

 しかし「生活支援」に関して言えば、すでに韓国の場合、93年6月、挺対協などによる働きかけで
「日帝下日本軍慰安婦に関する生活安定支援法」がすでに制定されていたのである。

 ■ 民間基金から「国民基金(アジア女性基金)」の発足

 本紙前号で述べたように村山富市社会党首班政権は日米安保反対→堅持、自衛隊反対→容認へと自民党の政策・路線へと大きく傾き、社会党の主体性を放棄し、その結果、村山首相退陣後の96年10月第41回衆院選挙で惨敗する。

 
 この村山内閣において戦後賠償政策も一変し、「個人賠償・国家賠償」から「見舞金」構想へと転換、与党内に「戦後50年問題プロジェクト」、同プロジェクト・従軍慰安婦問題等小委員会がつくられ、95年7月、「女性のためのアジア平和国民基金」(当時の略称は「国民基金」)を発足させる。「国民基金」は「見舞金」を「償い金」へと呼称を変え、「日本国民」から「募金」を募り、その広告・運営費などは「国庫」から出金。当初の募金額として20億円(のち軌道修正して10億円に下方修正)を設定。最終的な募金額は7億円といわれているが、それに要した広告・宣伝・運営費等に70億円を国庫から出す(96年夏、「償い金」支給を前に、大急ぎで決めた「医療福祉支援費」を含む)。

 しかも、その「医療福祉支援費」を国庫機関から出すことを回避するため、第三者機関のトンネル団体をつくり、そこから支出する形をとることまで考えた。

 これらにみられる発想の基底には
「慰安婦犯罪」は、「国家犯罪」、「国家責任」は絶対に認めない、という強い意志が存在する。

 すなわち「国民基金」(アジア女性基金)とは、結局のところ、国家犯罪・国家責任は、認めず、その代償措置として「国民」一般に「責任」を転嫁・暖昧化させ、「国家と国民が協力」するという美名のもとに「慰安婦」犯罪の責任主体を意図的にぼかすものであった。

 しかも当事者やその支援団体の意思を無視して一方的に見切り発車し、被害当事者側の自己決定権をも踏みにじった。

 本質をぼかし、「償い金」という名の「主観的善意」を被せた「金銭問題」へとすりかえることにより、この犯罪が「女性に対する性暴力」「基本的人権侵害」「戦争犯罪」であることをも隠蔽させるものにほかならなかった、といえる。

『週間新社会』(2007/11/27)
 

                                        
                                            続く

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