■医療・病院

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救急医療について思う

今日あたりから,風邪でちょっと調子が悪くなってきました.

娘が数日前に高熱を出し,治りかけの矢先です.大体親が最後に一番酷い風邪を引くというのが良くある話です.

今回の私はただの風邪だと思うのですが,こちらではインフルエンザが流行っているようです.イングランド北部から流行しだし,徐々に南下してきたようです.一部では学校そのものが臨時閉鎖されたところもあるとか.

そんなこともあろうかと,わざわざ日本からインフルエンザの簡易診断キット,そして噂のタミフルも持ち込んできました.こちらは病院にかかるにも,高熱があろうとGP(かかりつけ医)に予約を取ってからでないと診てもらえません.『インフルエンザくらい』で救急病院にかかろうものなら,担当のナースや医師に本気で怒られるそうです.まあ私も日本で当直バイトをしているとき,子供に38度の熱があると夜中の2時3時に救急外来を受診させに来る親には閉口していましたが・・(勿論,面と向かっては言いません.私も人の親ですから,高熱だったらさすがに同情しますヨ).

さて救急医療(特に一次救急)の話になりました.イギリスでは救急(A&E: Accident & Emergency)指定病院以外では『絶対に』救急患者を診ません(それ以外の病院では『飛び込み』であっても,うちは救急はやってない,A&Eに行けと冷たく言われる).しかも指定病院は町でたいがい1つか,多くても3つです.
確かに虚血性心疾患や脳血管疾患が日本より多いらしく(統計を見ていないので,あくまでも印象ですが・・),車を運転していると,必ず1台以上の救急車(出動中)とすれ違います.1つの病院に集中して救急車がバンバン入るわけですから,風邪引きにいちいち救急外来に来られると,パンクするというのはよくわかります.こちらの人も,ハナから指定病院以外では診てもらえないという意識が徹底していますので,その点は諦めているようです.

一方,日本の話です.日本なら『病院なんだから医者の一人くらいいるだろう!!』と怒鳴り込んで来る患者さんが必ずいます.そういう人に限って,緊急性が低い人が多いのですが(笑).私の印象(独断と偏見)では,日本人はすぐに救急病院にかかりすぎです.勿論,子供が熱を出せば心配になるのはわかります.私も医者とはいえ,子供が高熱でぐったりすれば心配になりますから.ただ明らかに平日の外来まで待てる状況の患者さんが,あまりに救急外来を気軽に利用しすぎる印象はあります.『37.5度の熱が出始めて心配になって受診しましたとか』,『1週間前から腰が痛いんだけど,昼間仕事が忙しくて病院に来られないんだよね・・(こういう人に限って妙に馴れ馴れしい)』と夜の10時頃来る人など,私的に『あり得ない』受診をしてくる人が少なからずいます.こうなると病院は一種の『コンビニ』です.営業時間が終わったお店のシャッターを叩いて,今からものを売ってくれ!と叫ぶ人はまずいないでしょうが,病院ではそれが『当たり前』だと思われています.『救急外来』と『夜間営業』を勘違いされている方がたくさんいます.確かに日本では,病院にきて『診て欲しい』という患者さんを断ることは出来ませんが(医師法で『応召の義務』といいます).一人当直の小さな病院であれば,まだそれも許されるのでしょう.しかしこれを救急指定病院でやられるとかなり迷惑です.次の話ともつながるのですが,結局優先度の高い患者さんがそのしわ寄せを受けることになります.

さて次は田舎の医者的にみた,日本の高次救急の話です.東京・大阪などの大都市圏では当てはまらない内容であることは,あらかじめお断りします.あくまでも私の勤務していた『地方』,すなわち田舎での話です.

日本では救急車の『たらい回し』がよく問題になっております.

私のようにシタッパの医者(特にマイナー系)をやっている人は,以下のような経験があると思います.田舎の病院で一人当直(バイト)をやっているときに,『交通事故で乗用車にはねられ,レベル300です!いまから診てもらえませんでしょうか!?』など,救急隊から良く電話がかかってきます.レベル300とは,痛み刺激を与えても全く反応しない,いわゆる『意識不明』の状態です.このケースでは明らかに頭部外傷を考えますよね.CTすらすぐに使えない,医者も『整形外科医』一人,脳外も標榜していない田舎の病院に,どうして運ぼうとするのか理解に苦しみます.必要な応急処置を施してから三次救急の指定病院に転送すればよい・・と『キレイゴト』を語る人たちもいます.しかし私に言わせてもらえば,一刻を争う患者さんに対し,ロクに処置も出来ない病院に搬送させて時間をロスすることは,患者さんにとっても不利益です.今ここにわざわざ搬送させて自分がで診ることが,患者さんにとって最善ではないという判断になります.専門的なケアができる病院にいち早く行ってもらうことが,『最善』なわけです.それでも救急隊の方には,『7-8カ所の病院に受け入れを断られて,どうしようもない,とりあえず診てくれる病院を探して欲しい』と泣きつかれることもしょっちゅうです.こうなると,病院に搬送すらされないわけですから,『たらい回し』にもなりません(苦笑).問題は,そういう患者さんを,3次救急を掲げている病院が受け入れを断るケースが少なくないことでしょう.一方3次救急を扱う病院も,病床が完全に埋まっているなど,本当に受け入れが出来ないケースがあります.問題がたくさんありすぎて,いろいろ話し出すとキリがありません.(逆に大都市圏,特に東京など私大医学部の附属病院が密集している地域では,患者さんの取り合いになるという話も聞いたことがあります.)

話は脱線しましたが,英国では病院の受け入れについての問題はありません.受け入れる病院が決まっていますから.ただ別の問題があります.一番話題に上がるのが待ち時間です.救急車で病院に搬送されても,病院で数時間待たされることはザラだそうです(特にロンドン近郊).折角搬送されたのにしばらく放置されるのは辛いですよね.よく笑い話として聞くのですが,激しい腹痛に襲われて救急病院を受診し,10時間近く痛みに転げ回りながら待った挙げ句,診断が『虫垂炎の穿孔』で臨時手術になった・・とか.中には,本当に待っている間に急変して亡くなった方もいるとか.そうなるともう笑い話では済まないですね.

救急医療を巡る問題は,どこの国も抱えてるようです.

閉じる コメント(5)

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うちのDr.も、よく言ってます。「うちが受けないと助かる患者さんがたらいまわしになるんだよ。だから、ICUを空けないと。転床受けて!!」と。今、ここにいる患者さんのことも考えて!!って思うときもありますが・・・そうですね。先生たちも大変なんですよね・・・。 国によって医療のしくみってだいぶ違いますね。勉強になりました☆

2006/2/18(土) 午後 1:28 [ mai*m*gic*304 ]

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難しい問題だと思います。やはりまずは国民の意識が大事なのかなぁと思いますが中々難しいようですね。中には救急車の有料化を推進する先生もいらっしゃるみたいですが、そうなるとむやみに救急車を使う人は減るかもしれませんが、本当に重症の方が使いにくくなる可能性も出てきますよね。イギリスでもまた日本とは別の問題が生じているみたいで、そういう点からも理想的に救急医療を行うことがいかに難しいかがよく分かります。

2006/2/18(土) 午後 2:03 [ - ]

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Maiさん,ありがとうございます.そうやってICUを開けておいてくれる病院があると,本当に助かるんです.話は変わりますが,中途半端な大都市より,地方のちょっとした市の方が,実は救急態勢がよかったりします.地方の中核病院はとりあえず全科,設備とも揃っていることが多く,かつ三次救急は『その病院が受け入れなければならない状況』ができあがってますから.

2006/2/18(土) 午後 2:27 万年シタッパ整形外科医

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うっちゃぎさん,ありがとうございます.救急車の有料化について,私は賛成の立場です.あまりにタクシー代わりに使う人が多すぎます.多くの場合,病院に着いて救急車からのこのこ歩いて出てくる・・というのは,本来の姿ではないと思います.重症患者(本当に救急要請必要な人)さんの場合には,あとで救急車無料の診断書をつけるとかの方法はあるでしょう.医者の書類が増えるのはイヤですけどね(笑).

2006/2/18(土) 午後 2:31 万年シタッパ整形外科医

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現在、救急受け入れ問題を扱ったブログや掲示板などに出てくる質問を基にしたFAQを製作しており、今の医療危機の状況の説明などを、医療事情に詳しい方々の協力を得て、少しずつ加筆・修正しています。

「救急受け入れ問題FAQ」を作りませんか?
http://punigo.jugem.jp/?eid=447

もしよろしければ、是非読んでみて下さい。

2008/2/21(木) 午後 3:03 [ KRTさん ]


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