■医療・病院

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医者のための保険

何を想像しますか?

今回私が話題にするのは,『医師責任賠償保険』です.

簡単に言うと,医師が診療行為に関わる訴訟等を起こされたときに生じる賠償金・示談金等をカバーしてくれる保険です.保険支払金の上限が設定されており,1億円,2億円あたりが一般的です.病欠による長期欠勤を余儀なくされた場合の休業補償を特約に盛り込んだ保険も売られており,当然保険料は跳ね上がります.

保険ですから,当然保険料を払います.しかもこれは病院が勝手に加入してくれるようなものではなく,『自腹』です.加入するコースによって保険料は様々ですが,私が加入している上限1億円・休業補償なしの保険の保険料は,月々3500円程度です.年間4万円程度ですから,保証内容に比べればむしろ安いのかも知れません.

医師賠償責任保険の保険料が飛び抜けて高いのは,訴訟大国アメリカです.以前アメリカの有名な脊椎外科医が私の大学(日本)で講演されたとき,その保険料の話題になりました.保険料の支払いが,年間4万ドル(!)だそうです.保険料だけで約500万円ですよ!私の給料なら,その大半が保険料に消えることになります.この話にはオチがあって,その先生の年収は日本円で軽く『億』を超えるそうで・・.

アメリカでは,医師という職業はあらゆる意味でハイリスクですが,実力に見合った収入が得られることも事実です.

それに引き替え日本の医師は・・・.少なくとも勤務医である限り,どれほど働いても,いやいかほどの名医であっても,純粋な医療行為による収入が億を超えることはないでしょう.むしろ働けば働くほど,労働当たりの単価が安くなるように給与が設定されています.その上,度重なる診療報酬の改悪(敢えて『改訂』と言わず,この言葉を使わせていただきます)により,特に中小病院に対する締め付けは凄惨を極めています(私のお気に入りブログ:医師になる君・・・をご参照下さい).

病院の収入減 → 経費削減(=人件費カット)

は小学生でもわかる構図です.

さらには,最近は何かと医療訴訟に持ち込む風潮となり,一定の割合で起こる不可避な事象まで『安全義務違反』などという浅薄な言葉で片付けられてしまう世の中です.全力を挙げ,一般的に正しいと言われている医療行為を行っても,結果が悪ければ訴えられます.たまったものではありません.今まで以上に訴訟リスクに怯えながら,給料は減らされる,それが今の医療職全般における流れです.

でも開業すればバラ色なんでしょ?というご意見もあるでしょう.しかし残念ながら,それは時代遅れの意見と言わざるを得ません.いわゆる私立の中小病院は,上記の理由から火の車です.またいわゆる無床診療所(クリニック)も,それなりの収入を上げている医師は(一部の悪い人を除いて)確かな技術を持ち,大変な『営業努力』をなさっているものと思います(ここ数年の診療報酬改悪は,こと整形外科開業医にとって『イジメ』に近いものがあります).診療所によっては,昨今の診療報酬改悪で収入が3割減ったところもあります.

例えば整形外科など,高齢化社会の『恩恵』を受け,毎日『電気』をかけに来る患者さんだけで儲かっていると思われているのではないでしょうか?ここでキーワードとなるのが,『毎日』と『電気』です.

まず,再診料(2回目以降の受診料)が抑えられました.加えて,一人の患者さんが月に一定以上の回数受診した場合,上限以降の再診料は算定できなくなりました.毎日のように来院される患者さんからは,月後半の数回分の再診料は頂けないことになります.さらに理学療法(牽引・温熱療法・リハビリなど)の診療報酬が大幅に削減されました.簡単に言えば,『電気』をかければかけるほど,リハビリに力を入れるほど赤字が膨らむようになりました.言い方は乱暴ですが,毎日電気をかけにいらっしゃる患者さんは,病院には赤字になるわけです.

・・・ついアツくなってしまいました.さて,逸れた話を戻しましょう.

医師賠償保険金は,訴追の元となる医療行為を行ったときではなく,訴追を受けた時点の加入者に対してカバーされます.即ち医者を辞めようが,基本的に保険金を払い続けなければなりません.そういう私も現在は研究目的の留学中ですから,医療行為は一切しないのですが,保険料は払い続けています.保険って,うまくできていますね.

ここまでお読み下さり,誠にありがとうございました.

閉じる コメント(5)

こんにちは。研究は順調ですか? 僕も同意見です。医師になる人は根本的には「患者さんを良くしたい」という気持ちの元に日夜頑張っていると思います。しかし、昨今の医療に対する政策や訴訟を考えると、イジメ、迫害としか言い様の無いような内容ですね。公定価格などもあり、コスト削減には限度があるのだから、医療費削減の為に病院の収入を減らすのには限度があります。かくなる上は窓口負担の増額に踏み切って欲しいものです。頑張っても忙しくなるだけでリスクは増え、収入は減るでは熱意も削がれます。

2006/4/3(月) 午後 2:24 [ ryu*rt*o ]

そうですね.医療にはお金がかかり,現在の医療レベルを保つには個々の負担が増えるのは避けられないことを,世の中にアピールする必要がありますよね.老人の医療費を上げるとは何事だ!等々,感情論で語る時期は終わっていると思います.医療従事者のモチベーションが保てなくなったら,いよいよ崩壊です.

2006/4/3(月) 午後 5:08 万年シタッパ整形外科医

なるほど・・本当の情報が我々のところに届くのは、国内だと10年、海をまたげば30年遅れるといいます。それにしても、まじめにやっといればやっているほど、本当に技術のある医師は、損をしていくような印象を受けます。レーザーとか美容とかレーシックに走る医師の方が得をするというか・・芸術も同じですもの。まじめに職人として技術を磨くよりも、芸術ではなくて芸能をやったほうが・・と何度思ったことか・・。大変な営業努力・・本当に、その通りだと思います。

2006/4/24(月) 午前 3:17 [ you**tsu*uda ]

tsukadaさん,ありがとうございます.それでも,日本の医師は倫理観・使命感を頼りに頑張っている方だと思います.これが本当にビジネスライクになったら,いよいよ今の質は保てなくなるでしょうね,悲しい話しですが・・.

2006/4/24(月) 午前 6:21 万年シタッパ整形外科医

山崎豊子の白い巨塔のような、生命の尊厳とか究極の世界が、少なくなってきているような気が致します。なんとなく医学は、その辺りが醍醐味のところのような気が致しますが・・ みんな、それぞれなんでしょうね。

2006/4/24(月) 午後 11:18 [ you**tsu*uda ]


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