牡丹亭と庵の備忘録

映像業界人の某が日々のあれこれを興に乗せて語る茶席風

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笠原御大の床柱

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京都東山の古刹、高台寺のそばに石塀小路と呼ばれる一画がある。
その中心に位置するのが、「田舎亭」という老舗旅館で、
東映京都の仕事をしているライターが、ひと頃よくカンヅメにされていた。
(但し、ベテランに限る(笑))

階段を上がったその二階の一室に、「笠原和夫の床柱」と名付けられた柱があった。
文机に向かいながら、柱に寄りかかって苦吟する笠原さんが、
無意識に後頭部をガツンガツンとぶつける。
いつの間にか、そのあとが黒ずんだ脂の染みになって残ったという、
壮絶な伝説を残すしろものである。

『仁義なき戦いシリーズ』『県警対組織暴力』『やくざの墓場・くちなしの花』
などの傑作群は、すべてその「笠原和夫の床柱」に後頭部をぶつける苦悶から
生まれたと言っても、過言ではない。

若いころ、その「田舎亭」に笠原さんの陣中見舞いに訪れて、
くだんの床柱をしかと目撃した。

「徹底的に取材をしろ」
「頭で書くな、足で書け」
「映画は飛躍だ」
「あいさつを書くな、日記になるな」……。

数々の教えがいまも脳裏をよぎる。

「田舎亭」はいまも石塀小路の一画に、
往時のたたずまいを残したままひっそりと建っている。
 
あの頃ほんの小さな子供だった娘さんが、
女将として立派に切り盛りしていると聞いたが、
鮮烈な印象を残したあの床柱はまだ残っているのだろうか?

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