牡丹亭と庵の備忘録

映像業界人の某が日々のあれこれを興に乗せて語る茶席風

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洋画が危機なのだという。
字幕の漢字が読めず、それが理由で
劇場に行くのをやめる若い観客が増えているのだそうだ。

私が観たテレビの特集では、「第三の男」を見せられたコギャル三人が、
難解(?)なセリフと漢字の続出に退屈しきっている様子が映し出されていた。

そこで、翻訳する側も平易な意訳を心がけ、
やむを得ず使う漢字にはルビを振って対処しているらしい。
まあ、昔の「立川文庫」の少年小説にはすべて漢字にルビが振ってあったと聞くし、
そんな時代への回帰だと思えば腹も立たないか。

現に、私もあるテレビドラマに携わったとき、
「中学生に理解出来るレベルで書いてください」と注文された経験がある。
「難しい言い回しはそれだけでチャンネルを替えられます。
クドイくらいに分かりやすくお願いします」

というわけで、「名状し難い思いで」とか、
「暗然と虚空に目を泳がす」などというト書きは当然のようにご法度。
まあいいかと、「複雑な気持ちで」とか、
「落ち込んだ視線をさまよわせる」と改めるのだが、
本当はそれでもまだ難しいらしい。

「慄然と」は「キャッと」、「憤然と」は「キレて」、「唖然と」は「ヤバいと」。
「嗚咽」も「噎び泣き」も、「涕泣」も「貰い泣き」も、区別なくすべて「号泣」。
「銃声」は「バーン!」、「急ブレーキ」は「キキーッ!」、
「固唾を呑む」は「ゴクリと」。

てな具合に書けば、若いスタッフ・キャストのノリも良く、
視聴者受けも見込まれて20%超えのヒット番組が出来上がる。

というわけでもないだろうが、
せめて「入り口は浅く、出口は深く」という方法論でも模索しない限り、
「考える」という行為をとっくに放棄している若い観客たちの、
奥底にひそむ感動を誘うのは不可能な時代になったことだけは確かなようだ。

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