牡丹亭と庵の備忘録

映像業界人の某が日々のあれこれを興に乗せて語る茶席風

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芦原すなおさんの旧作『山桃寺まえみち』に、高梨友江という女性編集者が登場する。
 
歳の頃なら二十七〜八、三十デコボコ、
バリバリのキャリアウーマン(死語?)にして、道行く男どもが上気して振り返るほどのいい女。
 
油断へそ下、毛がボーボー。ああ、やり疲れだ。
 
などと、酔うほどに口をつく猥談が絶品の女盛り。
このちょいワルお姐さんが、同業者とのドロドロの不倫に疲れ、
ヒロインの女子大生・桑山ミラと酒を酌み交わしながら語り合う場面がいい。
 
お互いこれっきりにしようって、一緒に飲んで、酔っぱらって、
ラスト・ワルツに一発やって、バイバイしたのよ。
だけど、私の方から電話して、次に会ったとき、また、ずるずるとやっちゃった。
ジュンサイ・ナメコかけご飯。
 
なんともはや。でも、高梨さん、とっても素敵だし、
これから先、きっといい人とめぐりあって、幸せになれる人ですよ。
 
私はこれまでいろんな人たちの幸せを壊してきたの。
それが、生活を改めて、いい人とめぐりあって幸せになったりしたら、
なんか、ものすごくひでーやつってことに……。
 
なりません。現に、とってもいい人が、高梨さんのこと、一途に思ってるし。
 
樽木君(注:高梨に岡惚れしている童話作家志望の青年)のこと?
いい子よ。よすぎるわ。あの一途さがたまんないのよ。
言ってみりゃ、私は官能小説だけど、あの子はまさに童話でしょ。
童話じゃ困る。官能小説で愛されないと。何より困ったことに……。
 
……?
 
何より困ったことに、私、内海(注:高梨の不倫相手)の馬鹿野郎が、好きなのよ。
 
あとは静かに涙をすする音。
 
てな概略の会話が、実際の小説ではもっとずっと濃密に展開されていく。
 
十数年前、このじつに魅力あふれる妖艶なインテリ女性を、
某宝塚出身の女優さんに演じてほしくて動いたことがあるが、
例によって諸般の事情で実現出来なかった。
 
今なら、めっきり芝居が上手くなった井川遥ちゃんあたりが適役か。
 
いずれにしても、未だに心残りの口惜しい企画ではある……。

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