牡丹亭と庵の備忘録

映像業界人の某が日々のあれこれを興に乗せて語る茶席風

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茶室杜庵造営(2)

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棟上げ(建前)も無事終わって柱が立ち、
参考URL:
http://homepage3.nifty.com/osan6/toan/tatemae.htm
 
あれよあれよという間に天井と壁の下地が出来上がった頃、
参考URL:
http://homepage3.nifty.com/osan6/toan/tenkabe.htm
 
私と家人はいよいよ、壁土採取のため熊本へと出かけた。

持参するものはゲンノウ(大ぶりの金槌)が二丁
(壁を叩き崩すにはこれが最適と判断)に、
砕いた壁土を収納する土嚢袋が四十枚ほど。
そして、半端ではないであろう土埃に備えて、
プロ用の防塵マスクと帽子、タオル等々……。

途中、京都で一時下車して、ハギワラさんサイトの友人J氏宅に一泊。
山崎の里にある国宝“待庵”(のレプリカ)を参考見学した後、
新幹線で博多に移動し、高速バスに乗り換えて、熊本県“植木”のインターに降り立つ。

そこまで迎えに来てくれた従姉夫妻の車で、十数年ぶりの亡父の実家へ到着する。

と、三十年間、廃屋のままに放置されていた古民家の、あまりの荒廃ぶりに愕然となる。
子供の頃、夏休みのたびにいとこたちと過ごした思い出の家が、
住む者もなく長年の風雨にさらされて、朽ち果てる寸前の状態でかろうじて持ちこたえている。

これはひょっとしてご先祖様に呼ばれたのかもしれないな。
などと埒もないことを考えながら、気を取り直してさっそく壁土砕きの作業を始める。

これがじつに過重な肉体労働で、
ゲンノウの重さに辟易しながら叩き崩す壁は、容赦なくもうもうたる土煙を発し、
そのたびに表へ飛び出して新鮮な空気を肺に吸い込む。
土嚢一袋に20キロの壁土、それを35袋、
事前に計算した量では、じつに700㎏に及ぶ膨大な土を採取しなければならない。

二人だけの手では当然、一日の作業じゃ終わらない。
その日は近くのビジネスホテルに一泊し、
翌日また一日をかけて、
ひたすら“叩く”、“崩す”、“表に逃れる”、“新鮮な空気を吸う”、“土嚢に詰める”
という作業を繰り返して、疲労困憊の末にようやくの思いで、35袋の壁土を採取する。

それにしても感心するのは、九十年前、まだ時代は大正だった頃の、
左官職人たちの見事な仕事ぶりである。
土壁などという粋狂なものを造ろうと思い立って、にわか勉強したノウハウが、
まさに生きた教科書をみるように体現されている。

美しいとしか言いようがない、繊細な表面の仕上げに感動しながら、
ひょんなきっかけとは言え移築を決意して本当に良かったと、
似合わない血族の感慨までわき上がってくる。
こんなこと、子供の頃には気が付きもしなかったのだが……。

さて、700キロの土塊をどうやって神奈川まで運ぶかである。

最初はトラックを一台チャーターし、北九州の門司まで北上して、
横須賀行きのフェリーに積み込む方法を考えたのだが、
費用を計算すると、宅急便でもほとんど変わらないという数字が出た。
ならば、なるべく楽をしたいというのが人情である。

長い間業界にいるが、こんな荷物は運んだことがない。

そう苦笑しながら、快く輸送を引き受けてくれた宅急員の方に感謝しつつ、
翌日は熊本市内に事務所を開く某一級建築士の方とお会いして、
木と土の住まいに関するレクチャーを受け、
怒濤のような三日間を経て我が家へと帰り着いた。

やがて届いた35袋の壁土が、以下の写真である。
参考URL:
http://homepage3.nifty.com/osan6/toan/kabetake.htm
 
九十年後の竹小舞、そして大正期の竹小舞の美しさに、
何かの因縁めいたものを思うのは関係者の私だけか。

ともあれ、こうして揃った材料が、元通りの土壁に復元されるまでには、
まだまだ気の遠くなる道程が必要だったのだが、それについてはまた次回に……。

※写真は完成した杜庵で茶を喫すたね寿、たね若の両舞妓と、その入り口外観。

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