立野 秀成のブログ

連載開始!!(黒猫のマリー)

黒猫のマリー

 僕は、家を出て、電車で、レンタカーを借りる予約をしていたレンタカー店に向かった。
そこで、レンタカーを借りて、車で、四国一周をする計画を立てた。
多少、無理はあるかとは思ったが、まぁ、何とかなるだろう。と、思っていた。
まず、高速に乗り、明石大橋を超え、四国に入った。最初の一泊目は、香川だ。そこの名物を調べて、極力、そこに行く事にしようと思った。団体旅行で行くような処は避け、地元の人が行くような処に行こうと考えた。交通渋滞なんかで、自分がリストアップした処、全て、行く事は出来なかったが、それでも、中々、満喫できた一日目だった。僕は、予約した旅館に着いて、部屋に通されて、まず、着替えた。そして、先に風呂に行った。風呂につかると、一日の疲れが取れた気がした。そして、部屋に戻って、今度は、食事に出かけた。そこは、バイキング形式の宿で、和洋中なんでも、お好みの料理が並んでいた。僕は、適当に料理をつまみ、そして、ビールを飲んだ。少し、酔っ払ってきたので、部屋に戻って休もうかとも思ったが、せっかく来たんだから、誰かに声をかけようと試みた。しかし、みんな団体客で、仲間がいる人ばっかりだったので、諦めて、部屋に戻る事にした。そして、部屋に戻って、その日は、テレビを見て寝た。心地よい疲れが、深い眠りに自分を誘っていった。次の日、目覚めると、もう、朝の食事が始まっている時間だった。僕は、急いで、着替えて、また、大広間に急いで行った。そこには、もう、多くのお客さんが集まっていいた。『みんな、早起きだなぁ。』と、思った。中には、湯上りの香りがするお客もいて、『あ〜、朝風呂かぁ〜。』と、思った。『この食事を摂ったら、朝風呂もいいかな。』と、思った。僕は、適当に、朝の食事を摂り、部屋に戻り、朝風呂に出かけた。朝の風呂場は、夜と違い、妙に明るくて、また、違う風情があった。ただ、朝風呂は、温めすぎると、体に悪い。と、聞いた事があったので、半身浴で済ませた。そして、さっぱりして、そこから出て、部屋に戻って、着替えて、チェックアウトの準備をした。僕が、フロントに着くと、先程の団体客は、もう、そこにはいなかった。僕は、『まぁ、いいさ、こっちは、気軽な一人旅だから、のんびりいくさ。』と、独り言ちて、今日の予定を練った。今日は、徳島に行こうと決めた。そして、名所を調べて、自分なりに今日の工程を決めた。そして、宿を出発した。空は、晴れ渡り、冬晴れの一日だった。正直、まだ、寒かったが、寒風が、何故か心地よく、今まで、沈んでいた気分が晴れた。別に急ぐ旅でもないので、ゆっくり、進む事にした。そして、ピックアップした名所を全て行こうとすると、どうせ、無理だと思ったので、もし、行けなかったら、それも、運命だ。と、諦める事にした。しかし、道が空いていたので、自分がピックアップした所は、全て、消化する事が出来た。そして、今日の宿に無事着いた。そこに着いて、部屋に通された。そこは、直接、部屋に食事を持ってきてくれる処だったので、他の観光客との交流はなかった。僕は、少し、寂しい気分がした。やはり、知らない間柄とはいえ、同じ旅をする者どおし、語り合いたい気分だったが、それもかなわず、もう疲れたので、風呂に行って寝る事にした。

この記事に

開く コメント(0)

開く トラックバック(0)

黒猫のマリー

次の日、朝起きて、僕は、散歩に行った。そして、今日の予定を考えていた。今日は、会社に行こうと、思った。ただ、何時に行くのか、また、向こうで、何をするのかを考えた。とりあえず、ハガキの印刷は出来上がっているはずだから、それを取りに行って、郵送の準備をしようと思った。それと、まだ、帰ってきてないかもしれないが、専務の部屋にも顔を出そうと、思った。そんな事を考えていると、もう、家に着いていた。僕は、朝食を摂って、着替えた。そして、二階の妻に、挨拶をして、それから、会社に向かった。正直、みんなと、同じ時間に行くのも、何か変な感じがしたので、先に、印刷物を取りに行った。その会社は、ちょうど、開店したばかりで、僕の印刷物は、やはり出来上がっていた。僕は、料金を支払い、そこを後にした。そして、郵便局に行った。もう、住所は印刷されてあったので、あとは、切手を貼って出すだけだった。僕は、必要分の切手を購入し、それを、貼って、郵便局の人に渡して、そこを出た。これで、後は、皆んなの所にその葉書が到着するのを待てばよいだけである。僕は、それから、自分が、今まで、所属していた部署に向かった。そして、みんなに挨拶をした。『おはようございます。』『あ〜。本田さん。もう、復職されたんですか?』と、冗談を言われた。『いや〜、つい何日か前に会ったばかりだけど、僕は、もう、正式には、ここの人間ではないので、ここに来るのも、緊張したよ。ところで、まだ、俺の机あるかな。』『そりゃ、まだ、ありますよ。つい、こないだですからね。本田さん、辞めたの。』『そうか、なら、ちょっと借りて、座らせてもらおうかなぁ。』『いいんじゃないですか、多分。僕に権利はないですけど。』『まぁ、そうだな。けど、ちょっと、借りるよ。』と、僕は、そう言って、元自分の椅子に座った。そして、こう聞いた。『今日、専務いるかなぁ。この前の話では、まだ主張中だと思うけど。』『いや、何か、予定が変わったらしくて、昨日、帰って来てましたよ。』『あ〜、そうか、じゃあ、今日、いるかな?』『多分、いると思いますよ。』『あっ、そう、じゃあ、早速、行ってみるよ。ありがとう。』と、そう言って、僕は、専務の部屋に向かった。部屋をノックすると、専務はいた。『失礼します。』と、言って、僕は、中に入った。すると、専務は、『あ〜、本田君じゃないか、今回は、大変だったようだねぇ。それで、葬式は、いつに決まったんだ。』『え〜、それなんですが、14日に決まりました。今日、葬式の通知を出しましたので、この2,3日中には、専務の処にも届くと思います。』『お〜、そうか、じゃあ、その時は、行かせてもらうよ。』『ありがとうございます。この会社では、色々、お世話になり、本来であれば、1月の最終日に、お礼を申し上げなければならなかったんですが、専務が、ご不在だった為、今日になりました。どうか、お許し下さい。』『いや、そんな、堅苦しい事、言わなくても良いよ。だって、ここを追い出した、当の本人は、この僕だからね。』『追い出しただなんて、僕、そんな事、思ってませんよ。ほんと、専務には、退職金の事でも、お世話になって、なんて、言葉を行ったら良いか分かりません。』『お〜、聞いてくれたか、君が、希望した、3割増しとは、行かなかったが、通常よりは、多く支給してもらうように手配したから、それで、良かっただろう。』『ありがとうございます。今後も、何か、あったら、ここに来させてもらうかもしれませんが、何卒、よろしくお願いいします。』『お〜、そうだね。もう、君は、ここのOBなんだから、是非、外から、内を見て、貴重な意見を教えてくれ。』『ありがとうございます。それじゃあ、僕は、この辺で、失礼します。葬式の時、お会いしましょう。』『そうだな。元気でな。』『ありがとうございます。失礼します。』と、言って、専務の部屋を後にした。僕は、何か、達成感があった。何か、消化不良な感じが、これで、すきっとしたような感じがした。『よし、じゃあ、これで、もう、何も、思い残す事はない。』と、思った。そして、今までの部屋に戻って、仲間に挨拶をして、会社を後にした。僕は、家に戻っても、気が滅入るだけなので、また、飲みに出かけた。そして、飲み友達と、大いに飲んだ。そして、騒いで、寂しさをごまかそうとした。僕は、かなり酔っ払って、仲間に、タクシーに乗せられて、自分の自宅まで送ってもらたった。自宅について、タクシーの運転手が、『お客さん、着きましたよ。』と、言われて、僕は、目が覚めた。そして、料金の支払いを済ませて、中に入った。もう、12時を過ぎていた。僕は、玄関で、誰もいないのに、『ただいま〜。』と、大きな声で行った。僕は、『あれっ、あいつ、まだ帰って来てないのか?』と、思って、『まぁ、いいわ。いつものことだ。』と、独り言ちた。僕は、酔っ払って、妻が、死んでしまった事を忘れていた。僕は、もう、眠くて仕方なかったので、着替えて、ベッドに潜り込んだ。そして、寝た。次の日、朝起きると、頭が、ずきずきした。僕は、冷たい水を飲んだ。完璧な二日酔い状態だった。今日は、葬儀屋が、妻の遺体を引き取りに来る予定の日だった。一体、いつ頃来るのか分からないが、この状態では、拙いと思い、まず、シャワーを浴びた。しかし、まだ、頭は、ふらふらした。次に食事を作ろうと思った。正直、胸がむかついていたので、まともな物は、食べれそうもなかったので、自分で、お粥を作る事にした。そして、それを食べた。頭は、以前、ずきずきしていたが、胸やけは、それを食べたことで、少し、納まったような気がした。僕は、こう言う時は、決まって、蜆(しじみ)の味噌汁を作って、一緒に取ることにしていた。そして、それも作って、飲んだ。また、少し、症状が改善したような気がした。ただ、まだ、まともに歩けない状態だったので、また、ベッドに横になった。そして、数時間位寝た頃、家のチャイムが鳴った。僕が、出てみると、例の葬儀屋だった。僕は、傷む頭を押さえて、外に出た。そして、こう言った。『あ〜、ありがとうございます。どうぞ、中にお入りください。』葬儀屋は、言われるまま、中に入って行った。そして、二階に上がり、妻の遺体を確認した。『このご遺体、コチラで、当日まで、管理させて頂きます。つきましては、これ、その書類なので、サインをいただけますか?』と、言われて、僕は、サインした。そして、それから、妻は、葬儀屋の車で、行ってしまった。これから、当日まで、しばしのお別れだ。僕は、妻に『バイ、バイ。』と、手を振った。そして、葬儀屋に『お願いします。』と、言って、受け渡した。葬儀屋が去って、僕は、遂に、本当に、独りぼっちになってしまった。と、思った。これから、どうしようか?と、考えたが、頭が痛くて、良いアイデアが浮かばなかった。だから、もう一度、蜆の味噌汁を飲んで、寝る事にした。僕は、その日、本当に、泥のように眠った。次、目を覚ますと、辺りは、真っ暗だった。僕は、空腹を覚えて、何か食べなければいけない。と、思ったが、冷蔵庫には、ろくなもんがなかったので、近所のスーパーに買い出しに出かけた。そして、食材を買い、家に帰ってきて、調理しようと思ったが、今日は、もう、弁当で済ます事にした。そして、家に帰りつくと、もう、夜になっていた。僕は、風呂を沸かして、その間に、弁当を食べた。本当に、酒の好きな人は、迎え酒、とか言って、ここで、もう一度、酒を飲む人もいるが、僕は、『もう、当分、酒は結構。』と、言う気分だった。酒の代わりにお茶を飲んだ。それが、とても、心地よく、少し、生き返った感じがした。頭のずきずきも、やっと、納まってきていた。僕は、それから、風呂に入った。そして、さっぱりして、明日以降、何をしようかを考えた。今度、働き出すまでには、まだ、時間があったので、僕は、一人で、旅行に行こうと、思った。そして、その相談の為に、明日は、旅行代理店に行こうと、決めた。僕は、何をするでもなく、TVを見て、そして、また、眠った。旅行代理店で、近場で、3泊4日位で行ける所を探した。何カ所か候補があったが、その中で、一つ選んだ。それは、四国だった。何故か、そこに行ってみたくなった。僕は、次の日、家を出て、旅に出かけた。気ままな一人旅だ。団体旅行ではなく、個人で、宿とレンタカーの手配だけしてもらった。団体旅行でもよかったが、何か、一人で、しんみりと旅をしたくなったので、そうする事にした。僕は、その時、この旅に何の期待も抱いてはいなかったが、ここで、運命の出会いをする事になる。・・・・・・・・・・・・・続く

この記事に

開く コメント(0)

開く トラックバック(0)

黒猫のマリー

僕は、その後、専務の所に行った。案の定、専務はいなかったが、専務が、出張から帰ってくる日程を聞けたので、それで、良かった。僕は、秘書に、『大体、今度来るときは、何時くらいなら、来てるか?』と、いう事を聞いた。そして、時間を聞いて、『もし、その日、出社してきたら、一報くれませんか?』と、言う事を頼んだ。秘書は、快く応じてくれた。僕は、安心して、自分の部署に戻った。そして、一応、葬式の案内状の文面を考えてみた。そして、何人くらい呼ぶのか、また、弔辞は誰に頼むのか?と、そんな事を考えていると、もう、定時が来ていた。僕は、妻の事が気になったのと、見積を早く見たいと思ったので、定時で、会社を出る事にした。そして、家路を急いだ。そして、家に着いた。ポストの中には、やはり、見積もりが入っていた。僕は、中に入って、それをじっくり見ようと、したが、お腹が、ぐぅ〜となったので、先に、夕食を摂る事にした。僕は、昔とったきねずかで、慣れない手つきで、調理を始めた。今日の献立は、カレーライスだ。僕は、食材を切って、煮込んだ。そして、市販のルーを入れて、また、じっくり煮込んだ。そして、数十分後、今日の夕飯のカレーライスが出来上がった。僕は、それを食べて、しばらくして、風呂に入った。風呂から出てきて、ビールを飲みながら、例の見積もりを読む事にした。その内容は、やはり、電話で聞いたのと一緒だった。ただ、花代のその金額だけは、電話では聞かなかったので、全体の金額が、これを見て、よく分かった。僕は、【これなら、退職金で何とかなりそうだな。】と、思った。そして、一安心したので、次は、二階の妻の所に向かった。妻は、いつもと一緒で安らかに眠っていたが、やはり、窓を閉め切っていたので、少し、臭いがし始めていた。僕は、窓を全開にした。外は、まだ冬で、寒かったが、そんな事はどうでもよいと思った。そして、しばらく、妻の横顔を眺めていた。僕は、また、後悔の念が沸き起こって来た。思わず、『ごめんな〜?』と、言いながら、泣き出してしまっていた。最近、年を取ったせいで、涙腺が緩くなったのか、ちょっとした事で、よく泣くようになっていた。僕は、涙が止まらなくなった。そして、妻の遺体に抱き付いていた。もうこのまま、いっそ、一緒に埋葬してもらおうかとも考えたが、冬の風の冷たさが、僕を現実に引き戻した。ブルっと、震えて、僕は、窓を閉めた。けど、本当は、全部閉めずに、少しだけ開けておくようにした。こうすれば、少しでも換気できると思ったからだ。僕は、もう、何も、言わない妻に、『お休み。』と、言った。すると、妻が、何となく微笑んだような気がした。僕は、また、泣きそうになったが、寒いので、下に降りていった。僕は、体が冷えたので、もう一度、風呂に入る事にした。そして、また、風呂から出て、ビールを飲んだ。もう、酔っ払って、すぐ、寝てしまおうと思った。僕が、何本か、ビールを開けた頃、眠気に襲われて、僕は、眠りに落ちていった。次の日の朝、僕は、いつも通りに目覚めた。けど、やはり、そこにあるのは、独りぼっちの空間しかなかった。僕は、人恋しくて、散歩に出かけた。朝の新鮮な空気を吸えば、きっと、妻への思いも、少しは和らぐだろうと思ったからだ。僕は、いそいそと着替えて、外に出た。外は、まだ、寒かったが、僕は、寒いというよりは、気持ちよい。と、感じた。僕は、今日の予定を考えた。【今日は、一体、どうしようか?】と、思ったが、やはり、会社には行こう。と、思った。家にいても、気が滅入るめいるだけだから、会社に行って、そして、今後の葬式の準備をしようと思った。僕は、家に着いて、着替えて、会社に行く用意をして、朝食を摂って、そして、出かけた。二階にいる妻を残して。そして、会社に向かった。僕は会社に着いて、とりあえず、葬式の連絡のはがきの作成に取り掛かった。もう、日が差し迫ってきていたので、至急、する必要があった。一体、誰と、誰に出せば良いだろうかと、来賓の方々の選定にかかった。そして、印刷屋にも、電話して、一体、いくら位の費用で、何日位かかるかを聞いた。
来賓の方々の選定が終わった頃、ちょうど、昼休みになったので、僕は、外出する旨を、事務の女の子告げて、会社を後にした。そして、印刷屋に向かった。僕は、来賓の名簿を渡して、印刷をお願いした。はがきのレイアウトは、印刷屋に任して、オーソドックスなモノでお願いした。僕は、それから、遅い昼食をとった。そして、会社に戻った。会社に戻ると、例の総務の同期の彼が待っていた。『あれっ、どうしたのかな。』と、思っていると、彼は、僕に、花束を差し出した。『あっ、そうか、そういえば、今日が、1月最終日なんだと言う事を思い出した。僕は、照れながら、その花束を受け取り挨拶をした。『ありがとうございます。今日で、この会社を、書類上は、辞める事になりますが、妻の葬式が終わるまでは、多分、来ると思いますので、よろしくお願いします。ただ、当然、タイムカードは押さないですけどね。』と、言うと、少し、笑いが起こって、場が和んだ。僕は、続けて、『今、印刷屋に行ってきました。葬式の連絡のはがきの作成をお願いして来ました。出来次第、送付しますので、皆さん、葬式には来てくださいね。』と、言うと、『分かりました〜。』と、返してくれた。僕は、『ありがとう。本当に、今までありがとう。』と、言った。そして、僕の所に、また、同期の彼が現れて、『これ、みんなから。』と、言って、餞別を渡してくれた。僕は、思わず、泣き出してしまった。『ありがとう〜。』そう言いながら、時が過ぎていった。そして、定時の会社の終了時間がやって来た。その日だけは、誰も、残業する人間はいなかった。有志何名かで、飲み屋に繰り出した。僕は、いつもの馴染みの店にみんなを連れて行った。僕は、そこで、久しぶりに弾けて、楽しい時間を送った。妻が亡くなってから、こんなに笑った事があっただろうか?と、思えるほど、笑い、そして、騒いだ。夜も遅くなり、女の子の何名かは、終電の関係で、帰りに就く者が出始めた。僕は、彼女達を、見送り、もう、少しだけ、飲む事にした。僕は、今日だけは、独りぼっちのあの部屋には、帰りたくなかった。だから、何名かと、飲み屋をはしごした。そして、カプセルホテルに泊まった。サウナに入り、酔いを覚まし、そこで、眠った。そして、次の日、僕は、みんなと起きて、みんなは、そのまま会社に向かったが、僕だけ、帰宅する事にした。昨日で、一応、辞めた事になっているので、それを、このまま、何食わぬ顔して、出社する事は、抵抗があったからだ。僕は、家路を急いだ。そして、家に帰って、また、少し眠った。僕が、今度、目覚めると、もう、昼過ぎだった。僕は、冷蔵庫を除いて、ありあわせのもので、昼食を摂った。僕は、寝ぼけた頭で、『あっそうだ、葬儀屋の準備をどうなっただろうか?妻を引き渡さなくても良いのかな。』と、思い、後で、電話してみよう。と、思った。そして、しばらく、二日酔いで、全然、働かない頭と格闘しながら、何とか、着替えて、電話するところまできた。僕が、電話すると、また、あのご主人が出た。『あの、本田といいますが、今度、ソチラでお世話になる事になってまして、もう、式も近いので、進捗状況を聞きたいと思いまして、お電話しました。』『あ〜、本田さん。お世話になってます。大丈夫です。準備は万端ですよ。』『あ〜、そうですか、それで、妻の遺体の件なんですが、もう、無くなってから、日数も経ってますので、少し、臭いがし始めてるんです。窓を少し開けて、換気はしているのですが、やはり、余り開けると用心が悪いので、全開には出来ないんです。だから、申し訳ないですが、そちらで、一時引き取りして頂く訳にはいかないかと思ってるんですけど、如何でしょうか?』『分かりました。それじゃあ、コチラで、一時、お預かりして、当日を迎えるという形にさせて頂きます。それでは、ソチラにお伺いしますので、何時が、ご都合宜しいでしょうか?』『まぁ、今日にでも、と、言いたい所ですが、ソチラにも、いろいろ段取りがあるでしょうから、この2,3日中に、来て頂く、と、言うのはどうでしょう。』『そうですか、ありがとうございます。確かに、今日は、もう、みんな段取りが決まってまして、ちょっと、無理なので、そうですね〜、明後日辺り、どうでしょうか?』『あ〜、いいですよ。2月3日ですね。じゃあ、何時くらいにしますか?』『そうですね。うちとしては、朝一がありがたいですが、ご都合如何でしょうか?』『あ〜、いいですよ。それの方が、僕も有難いです。じゃあ、朝一に来る。という事で、よろしいですか?』『はい、分かりました。それで、お願い致します。』『ありがとうございます。それで、何か、他に、ご質問はございますか?』『いえ、無いです。』『じゃあ、当日、お伺いしますので、よろしくお願い致します。』『こちらこそ、お願いします。』と、言って、電話を切った。僕は、『これで、良し。』と、独り言ちて、二階に行った。そこには、今までより、少し、色が変色した妻がいた。僕は、窓を全開にした。部屋には、何とも言えない臭いが充満していた。僕は、妻をよく見た。あの数日前の綺麗な妻ではなく、少し、傷んでしまった妻を。改めて、後悔の念が出てきて、また、泣いてしまった。そして、また、【このまま、自分もここに横たわって、一緒に死んでしまおう。】と、思ったが、けど、やはり、冬の寒さが、僕を現実に引き戻した。僕は、『ごめんな。』と、言って、下に降りていった。僕は、極力、二階の窓は開けておこうと思ったが、やはり、限界があるので、また、少しだけ開けて、ホームセンターに行った。そして、ブルーシートを買い、その後、コンビニで氷を買った。そして、帰って来た。帰ってくると、まず、二階に上がった。そして、まず、布団の上と、床にブルーシートを敷いた。その後、妻の遺体に氷をタオルで巻きつけた。こうすれば、少しでも、腐敗が進まないのではないか?と、考えたからだった。僕は、自分の体が冷え切るのも、厭わずに、一生懸命、それに精を出した。そして、全てが終わると、僕は、自分の体が冷たくなっているが分かった。だから、下に降りて、風呂を沸かした。そして、入った。じわっと、自分の体が温もってくるのを感じた。そして、何故か、生きてる実感を感じた。【僕は、生きてる。そして、妻の分まで生きるんだ。】と、思った。
風呂から出て、着替えると、もう、夕方になっていた。僕は、久しぶりに、料理でも作るかと、思い、冷蔵庫の中を覗いたが、何も無かったので、食材を買いに、近所のスーパーに出かけた。僕は、食材を買いこんだ。そして、家に帰ってきて、食材を切った。何故か、その作業が、心地良かった。何故かは分からないが、余計な事を考えず、一心不乱に調理に打ち込んだ。僕は、それで、凄く、気が紛れた。俺って、出来る奴だな。と、独り言ちた。と、同時に、妻が生きてた時、俺は、妻に一度も、こんな事したこと無かったな。と、思った。僕は、また、泣いていた。その涙が、料理に混じった。【あ〜、これは、きっと、しょぱい料理になるだろうな。】と、思った。そして、しばらくして、料理が出来て、一人で食べた。本当は、一人だったけど、目の前に、妻がいると、想像して食べた。凄く、楽しかった。何か、心が救われた感じがした。そして、食べ終えて、その日は、もう、寝る事にした。明日は、会社に行こうと思った。                続く

この記事に

開く コメント(0)

開く トラックバック(0)

黒猫のマリー

 僕は、朝起きて、散歩に行った。そして、今日の予定を考えた。【今日は、会社に行こう。そして、専務の予定を聞こう。もし、会社に居たら、専務に妻のことを離そう。】そう、思った。もう、退社日まで、後、2日を残すのみ、と、いう所まで来ていた。僕は、着替えて、食事をして、二階の妻の所に行った。妻は、そこに、ただ横たわっていた。もう、死後、何日も経ったせいで、死臭が漂い始めていた。僕は、【これは、葬儀屋も、せっつかないといけないな。】と、思った。そして、家を出た。会社に着くと、まず、後輩の飯田君の所に向かった。それは、彼に、僕が居ない間、色々頼み事をしていたので、その結果を聞くためだった。僕が、彼の元に姿を現すと、本当に久しぶりに会った友人みたいに、懐かしい目で、僕を迎えてくれた。そして、こう言った。『お久しぶりです。本田さん。一応、頼まれてた事、全て、出来ていますので、打ち合わせをしましょうか?コチラにどうぞ。』と、そう言って、打ち合わせ室に入った。彼は、本当に、僕が言った事を、すべて、完璧にこなしてくれていた。まず、専務のスケジュールだが、やはり、一月中は、会社に戻って来ないようなので、一応、秘書を通じて連絡を取ってもらい、指示を仰いだ。すると、やはり、『もう、退社日まで日が近すぎて、とてもでは無いが、対処できないので、当初の予定通り、1月退社で行ってくれ。』と、言う事だった。と、同時に、奥さんの事にも触れ、『それは、新年早々、辛い思いをしたね。ご愁傷様。葬式までには、出張から、帰ってくるので、その時に、また、話をしよう。』と、言う、伝言を預かってくれていた。僕は、【やはり、そうか、飯田君が言ったようになったな。】と、思った。そして、『総務の人が、出社したら、話があるから、来て下さい。って、言ったましたよ。』と、言って、その名刺をくれた。僕は、『ありがとう。、また、今度、礼をするよ。』と、言った。彼は、『そんなのいいですよ。それより、また、良かったら、本田さんのお仲間の所に連れて行ってください。』と、言った。僕は、『そうか、分かった。そうするよ。』と、言った。そして、打ち合わせ室を出て、総務の担当の人の所に向かった。その彼は、実は、自分の同期の人間で、良く知っている奴だった。僕は、総務の部屋に入って、その彼がいるかどうか聞いた。すると、『彼は、今、不在中だが、しばらくしたら帰ってくる。』と。言ったので、僕は、自分の部署と名前を告げて、そこを立ち去った。僕は、また、自分の部署に戻った。そして、しばらくそこで、連絡を待つ事にした。すると、程なくして、彼から、電話がかかってきた。『やぁ、久しぶり。驚いたよ。何か、会社辞めるらしいな。残念だよ。同期が辞めて行くのは。けど、いずれ、俺も、もうすぐ、定年になるから、すぐ、後を追うよ。』と、言って、笑った。『それは、そうと、今日電話したのは、辞めるなら、書類にサインしてもらいたくて、それで、電話したんだよ。ちょっと、時間いいかな?』と、聞かれたので、『いいよ。そこに行こうか?』と、言うと、『すまない。何度も来てもらって悪いんだが、また、来てくれるかな。待ってるから。それで、済んだら、一緒に、久しぶりに昼でも行こうや。』『そうだな。そうしようか。じゃあ、行くよ。』と、言って、電話を切った。僕は、また、総務の部署を訪ねて行った。すると、今度は、電話の彼が、直々に迎えてくれた。僕は、応接室に通されて、お茶を出された。そして、『すまないね。けど、これ書いてもらうのが、俺の仕事だから。まぁ、ちゃちゃっと済ませて、昼に行こうや。』と、言った。そして、彼が、書類を出して、サインする所を指示した。その際、僕は、退職金の件が気になったので、その書類をよくよく見ると、やはり、通常の早期退職の相場より、金額が上乗せされていた。僕は、心の中で、『ありがとうございます。専務。』と、言った。僕は、独り言ちて、何度も書類を見回して、納得したので、サインをした。【遂に、これで、僕も、本当に、この会社を去る時が来たんだな。】と、思った。僕は、ふぅ〜と、長い息を吐いた。そして、心を落ち着かせて、彼に、『今まで、お世話になりました。』と、言った。彼は、『おい、おい、そんなの俺に言っても仕方ないよ。もっと、偉いさんに言ってくれ。俺は、ただ、書類書いてもらっただけだから。』『いや、分かってるんだよ。けど、けじめとして、今日、ここで、サインして、本当に辞める事が決まった訳だから、こう言っちゃなんだが、誰でも良いから、お世話になりました。って、お礼がしたかったんだよ。』『そうか、すまん、そういう事か、なら、俺でよかったら、何度でも聞くよ。気の済むまで言ってくれ。』『そうか、ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて、もう一回、ありがとうございました。』と、僕は言って、深々と、頭を下げた。それを、彼が、直立不動で聞いてくれた。『ありがとう。すきっとしたよ。もう、これで、次の仕事の事を全力考えられるよ。』『そうか、ところで、次の仕事って何するの?』と、聞いてきたので、僕が答えようとして、時計を見ると、ちょうど、12時だったので、『その話は、長くなりそうだから、一緒に食事でもしながら、しようか?』と、言うと、彼も、時計を見て、『おっ、そうだな。じゃあ、コート取ってくるわ。』と、言って、奥に消えた。そして、しばらくして、コートを着た彼が帰ってきた。僕は、『じゃあ、俺もコート取ってくるから、下で、待っていてくれ。』と、そう言って、その部署を出た。そして、自分の部署に戻り、コートをとって、一階に行った。そして、彼と合流し、外に出た。僕らは、近所の定食屋に行った。そして、食べながら、あれこれ話をした。僕は、まず、次の仕事の話をした。僕が、『次は、介護の仕事に就くつもりだ。』と、言うと、彼は、大層驚いて、『何んで、また。この業界で長くやって来たから、コネで、どこか拾ってくれたんじゃないのか?』と、聞いてきたので、『いや〜、その線を、本当は最初にあたったんだが、中々、この不況で、色良い返事をくれる所がなくて、それなら、いっそ、違う業界に行ってみるのもいいんじゃないか?と、思ってね。それでなんだよ。』『そうか、そうだな。確かに、俺ら位の年で再就職ってなると、難しいって聞くからな。けど、お前は、良く決断したと思うよ。』『そうか、ありがとう。』『ところで、どういう経過で、介護の仕事に就こうと思ったんだ。』『実は、俺の知り合いで、介護の仕事をしてる人がいて、その人に、いろいろ聞いて見ると、この業界なら、仕事は、幾らでもありますよ。って、言われたからさ。しかも、俺ら位の年でも、全然いけますよ。って言うからさ。それで、飛び込んでみようと思ったんだよ。』『そうか、それで、実際には、どんな感じだ。』『いや、なに、働くのはこれからなんで、実際のことは、まだ、分からないけど、とりあえず、資格だけを取って、それで、就職活動をしたんだよ。』『そうか、それ、すぐ、決まったのか?』『そんな事はないよ。だって、この業界、資格を取ってるのは、ほとんどが女の人ばっかりなんだよ。だから、就職先も、女の人優先になるし、しかも、やはり、それも、若い人から決まっていくから、俺なんかは、かなり厳しかったよ。』『そうか、けど、決まったんだろ。』『まぁな。けど、それも入ってみて、これじゃ使い物になならないって思われたら、やはり、若い女の人を、次は、取ると思うよ。』『そうかぁ、厳しんだな。まぁ、お前の場合、一からやり直すんだからな。そりゃ、大変だと思うよ。』『そうだろ。俺も、そう思うよ。けど、絶対、諦めないでおこうと思うんだ。そうしないと、会社の上司にも悪いし、それと、妻にも悪いからな。』『妻?奥さんどうかしたのか?』『実は、この前の地震で、亡くなったんだよ。』『えっ、奥さん、旅行でもしてたのか?』『あっ、そうなんだよ。ついてないよ。本当に不慮の事故だったよ。』『そうだな。この時期に神戸に行くなんて、ついてないな。ご冥福をお祈りするよ。』『ありがとう。また、通知するから葬式には来てくれよ。頼むよ。』『分かった。じゃあ、もう、そろそろ、戻ろうか?昼も終わったし。』『そうだな。行くとするか。』と、言って、二人は、その店を出た。僕らは、会社に戻って、それぞれの部署に帰った。そして、僕は、会社から、あの葬儀屋に電話してみた。すると、あの家に来た人が、電話に出て、こう言った。『あ〜。本田さん。申し訳ありません。見積が遅れてまして、今日出来るので、なんでしたら、おうちに夕方でも、お届けに上がりますが、ご都合如何ですか?』『あっ、そうですか。ただ、僕は、今、これ、会社からかけているので、家にはいないので、ポストに放り込んどいて頂けますか?ただ、もう、妻がなくなってから、かなり日数が経つので、もう、最近では、少し、臭いがし始めてますので、早くして頂ければありがたいと思ってまして、だから、明細は、後で、じっくり見るとして、葬式の合計金額だけ、ここで、聞くわけにはいきませんか?』『分かりました。では、申しあげます。合計金額は、消費税込みで、○○円です。』『あっ、そうですか、分かりました。やっぱり、結構するもんなんですね。ただ、それって、やっぱり、標準の値段ですよね。それに、オプションで何かつけないといけないんですか?』『そうですね。花代は別なんで、出来たら、それだけは、いくらかでも出して頂いたほうがよろしいかと思います。』『そうですか、そこの所の詳細は、見積見ればわかるんですね。』『そうですね。じゃあ、それを書き込んでおきますんで、それも合わせてご検討いただければよろしいかと思います。』『分かりました。じゃあ、最終の返事は、後日するとして、日程なんですが、もし、そちらでお願いするとして、最短で、いつが空いてますかね。』『そうですね。一番近い日で、2月4日なら空いてますが、如何でしょう?』『2月4日ですか?それでも、良いと思うんですが、ただ、そうなると、来賓のお客様に、手紙を書くのが間に合いますかね。』『そうですね。仮に、明日中に返事を頂いたとしても、かなり、せわしなくなりますね。それなら、次に空いてる日程は、と、いうと、そうですね。2月10日、もしくは、14日になりますが、如何でしょうか?』『そうですね。10日は、やはり、少し早いような気がするので、14日が妥当でしょうね。』『そうですね。世間では、バレンタインデーですが、問題ないですか?』『いや〜、そんなのいけるでしょう。だって、葬式って、一日中やるわけじゃ無いでしょう。だったら、大丈夫だと思いますよ。』『そうですか、なら、金額の最終判断は、明日以降に頂けるとして、これで、一応、日程、抑えといても構わないでしょうか?』『そうですね。そうして下さい。なら、今日、帰って、見積もりを見て、明日中には、ご返事させて頂く事にします。』『ありがとうございます。それで、他に、何か、ご不明な点はございませんか?』『う〜ん、そうですね。あっ、もし、そちらでやってもらうとして、その際は、妻の遺体は、どうしたら、良いんでしょうか?正直、もう、死臭も漂ってきてますし、一部、腐敗も始まりかけてるみたいなんですけど。』『分かりました。それでは、もし、明日中にご返事を頂ければ、当店の方で、引き取って、ちゃんと、霊安室にて、保存させて頂きますので、ご心配無用です。』『ありがとうございます。そうですか、なら、帰って、見積見て、また、明日、ご連絡させて頂きます。』『そうですか、よろしくお願い致します。』と、言って、電話が切れた。僕は、いよいよだな。と、思った。

この記事に

開く コメント(0)

開く トラックバック(0)

黒猫のマリー

 僕は、業者からの電話を待っていた。すると、程なくして、一本の電話があった。それは、やはり、葬儀屋からの連絡だった。『この度は、当店、ご用命頂きまして、ありがとうございます。それで、何か、奥様が亡くななられたとか、と、言うお話をお聞きしておりますが、打ち合わせは、当店ではなくて、お客様のご自宅が希望なんですね。それでは、詳しい住所をお聞かせ願いますか?』『ありがとうございます。そうなんです。妻が、急に亡くなってしまって、それで、今、家で、ベッドに寝かしてあるんですが、これも、果たして、これでよいのか、という事も、分かりませんので、出来たら、ここに来て、状況を確認して頂いて、見積もりを挙げて頂ければ、有難いんです。ですから、今から、住所言いますので、何か、ペンかメモがありますか?』『ありがとうございます。メモもペンもありますので、どうぞ、言って下さい。書き留めますので。』『分かりました。うちの住所は、○○町の○○番地です。それで、分かりますか?』『えぇ、当店には、地図がありますので、それで、調べて、お伺いする事にします。ただ、今、別件で、もう一件、行かないといけないところがありますんで、その後になりますが、よろしいでしょうか?』『えぇ、良いですけど、ところで、それじゃあ、うちに来ていただけるのは、何時頃になりますでしょうか?』『そうですね。昼過ぎ頃には、お伺いできると、思いますが、それで、よろしいですか?』『昼過ぎですか〜。まぁ、仕方ないでしょうね。気長に待つ事にします。もし、コチラに来られる際、道に迷われたら、また、ご連絡ください。誘導させて頂きます。』『ありがとうございます。けど、それは、大丈夫だと、思います。では、昼過ぎにお伺いしますので、よろしくお願いします。』『こちらこそ。よろしくお願いします。』、そう言って、電話を切った。僕は、【これじゃあ、今日、会社に行くのは、夕方か、もっと、遅くなるかもしれないな。】と、思った。そして、今度は、飯田君からの連絡を待った。しかし、彼からの連絡は、中々、来なかった。僕は、【仕方ないな。気長に待とう。】と、思い、自宅で、寛いでいると、ちょうど、昼休みの時間に、電話が、彼から、かかってきた。『ご苦労様です。飯田です。』『あ〜、飯田君。君からの電話を待ちかねたよ。ところで、どうなった。』『それが、実は、専務の予定を調べてもらったんですが、今日は、もう、会社に来ないようです。と、言うか、困った事に、専務、海外に主張に行ってて、しばらく帰ってこないみたいなんですよ。それで、会社に、今度、出社する日を聞いたら、何か、来月になるそうなんです。でも、それじゃあ、本田さんが、困るだろう、と、思って、何とか、専務に、国際電話で、要件をつないでくれませんか?と、お願いしたんです。なら、分かりました。やってみます。と、言うことで、今、返事待ちなんです。けど、ただ、時差の関係で、今、専務、ちょうど、就寝中らしいですよ。だから、起床してから、連絡するとなると、その返事が、明日になるそうなんですけど、いいですかね?』『まぁ、仕方ないけど、それなら、今月中に、専務にお願いして、退社時期を延ばしてもらうのは、難しそうだな。』『そうですね。だから、僕、考えたんですけど、もう、この際、2月退社にしておいて、後、一カ月は、新しい、仕事に向けての充電期間、と、言う事で、どうですかね。それだったら、別に手続きを変更する必要もないし、本田さんも、今まで、まじめに働いてきたんですから、一カ月くらい、休んでも平気でしょう。それと、退職金も出るんでしょう。それなら、別に、一カ月くらい、無職でも、生きていけるんじゃないですか?』『まぁ、確かにな。そりゃそうだよな。もう、退社日まで、後、3日しか無いのに、それで、後、一カ月、退社日を延長して下さい。は、余りにも、虫が良すぎるかな。』『そうですよ。そんなの、どう考えたって、無理ですよ。だから、もし、専務から、連絡が会っても、もう、いいです。今まで通りでって、僕の方で、言っといても良いですか?』『あ〜、そうだね。けど、いずれにしろ、一度、専務とは、対面して、話したい事があるから、退社日は、仕方ないとしても、専務が会社に出社したら、一度、会えるように、アポイントだけ取っといてもらえないだろうか?』『そうですか、分かりました。やっときます。けど、今日は、そう言う事情だから、本田さん、無理して、会社に出て来なくていいですよ。家で、ゆっくりしておいて下さい。』『あ〜、そうだね。助かるよ。実は、まだ、葬儀屋の人と、話、出来てないだんよ。だから、僕が、そっちに行くとしても、遅くなるな。と、思ってたから、ちょうど、良かったよ。明日、必ず、出社するから、申し訳ないが、今日も、休みという事で、処理しておいてくれよ。』『分かりました。じゃあ、また、明日。』『そうだね。また、明日。』と、言って、僕は、電話を切った。そして、僕は、昼食の準備をした。ありあわせの惣菜と、ご飯を温めて、みそ汁と一緒に食べた。僕は、食後、少し、寝ようと思い、横になった。うと、うとっとして、そう、何分か眠った頃、玄関のチャイムが鳴った。僕は、寝ぼけ頭のまま、インターホンに出ると、葬儀屋の人だった。僕は、『ただいま行きます。』と、そう言って、玄関先に出た。そして、その人を、家に招き入れた。僕は、『初めまして、本田、と、言います。』と、そう言って、名刺を差し出した。葬儀屋の人も、『葬儀屋の亀井です。この度は、当店、ご指名頂きまして、ありがとうございます。ところで、奥さんは、どちらにおいでですか?』と、言ったので、『あっ、コチラです。ご案内します。』と、僕は、二階にその人を案内した。二階のベッドで、妻は、静かに眠っていた。それは、まるで、本当に眠っているような感じだった。僕は、改めて、【もしかしたら、妻は、明日にでも起きだすんじゃ無いか?】と、そう、思った。しかし、そんな僕を見て、葬儀屋は、こう言った。『この度は、本当にご愁傷さまでした。ところで、この死体、死んでから、何日くらい経過してますか?』『そうですね。死んだのが、この間の阪神大震災に巻き込まれて死んでしまったので、約10日くらいですね。』『あっ、そうですか?それなら、早く、埋葬したほうがよろしいでしょうね。やはり、このままにしておきますと、死体が腐敗して、いずれ、死臭を放つ事になりますので、そうならない前に、葬儀を済ませて、納棺するほうが良いと思います。ですので、至急、見積もりをあげますので、ご主人も、お忙しいかとは、思いますが、是非、早急にご検討頂いて、お返事いただけませんでしょうか?』『もちろんです。僕としても、このまま、妻を二階に置いとく訳にはいきませんから、是非とも、そうして下さい。』『そうですか、それでは、見積もりの処理を早めるために、2,3ご質問させてもよろしいですか?』『えぇ、どうぞ。』『ありがとうございます。では、まず、この度、当店を、ご利用頂けるとして、費用的には、いくら位をお考えですか?当店としましては、何種類かプランがございますが、一体、どれがご希望でしょうか?やはり、お客様によっては、派手に盛大にしてほしい。と、言う人も居ますし、逆に、出来るだけ、簡素にして下さい。と、言う人もいますので、料金プランも、何点かに分けさせて頂いておりますが、一体、どのようにお考えですか?』『そうですね。僕としては、別に派手にしなくても、ごく普通で良いと思っています。』『そうですか、じゃあ、このレギュラープランで、見積もりさせて頂きます。それで、もし、何か、ご希望の品があれば、それを、オプションで追加して頂く、という、形でよろしいでしょうか?』『そうですね。それで、良い、と、思います。』『ところで、最初にお聞きしておきますが、葬式で、これだけは、必ず、してほしい。とか、言う要望はございますか?例えば、奥様が、生前、お作りになった趣味のものを飾ってほしいとか、そいいった類のものは、ございませんか?』『えぇ、そうですね。僕は、知らないですが、多分、そういった物は、無いと思うんで、それは、外して頂いてよろしいかと思います。』『そうですか、それでしたら、通常のレギュラープランで、見積もりしてきますので、ご主人も、お忙しいでしょうから、それが出来上がったら、ポストに入れておきますので、お手数ですが、ご検討の上、もう一度、お返事頂けないでしょうか?また、お伺い致しますので。』『そうですね。そうして下さい。助かります。じゃあ、それが出来上がったら、検討して、また、お電話する、と、言う事で、今日の所は、よろしいですか?』『そうですね。じゃあ、これで、失礼します。お時間取って頂いて、ありがとうございました。』『いえ、コチラこそ。』と、そう言って、葬儀屋は、資料を鞄にしまい、出て行った。僕は、それを見届けて、少し、ほっとした。僕は、家の中に入った。僕は、妻の様子を見に、もう一度、二階に上がった。妻は、静かに眠っていた。僕は、【もしかしたら、明日になったら、寝ざめてるんじゃないか?】と、思った。本当にそうなって欲しい。と、心から思ったが、それは、叶わぬ夢だった。僕は、家に居てもする事が無いので、また、映画館に行った。そして、映画を見た。その後、銭湯に行った。サウナに入って、日頃の疲れを取った。僕は、明日からの事を考えていた。【明日は、どうしようかなぁ。仕事に行っても、多分、まだ、専務は、出張から帰ってきてないだろうしなぁ〜。そうすると、行っても、意味無いかなぁ〜。いや、それでも、顔だけは出したほうが、良いだろう。そして、もし、何もする事がなかったら、家に帰ろう。けど、家に帰っても、どうせやる事も無いんだから、そうだな、今まで、行きたくてもいけなかった旅行でもするか。そうだ、そうしよう。けど、何泊もするとなると、費用もかさむし、打合せも出来なくなるから、近場でどこか探す事にしよう。そうだ、そういう事は、旅行代理店に行って相談すれば済む事だ。だから、もし、会社に行って、何もする事がなかったら、近所の旅行代理転によって、相談する事にしよう。】と、いろいろ思いながら、時間が経過していった。空を見ると、もう、辺りは、すっかり暗くなっていた。僕は、風呂から出て、風呂の横にある食堂で、ビールとつまみを頼んで、一杯飲んだ。『あ〜、心地良い。こんな、心地良いのは、一体、いつ振りだろうか?』と、そう思った。僕は、少し、酔っぱらってしまった。けど、電車で帰るので、問題は無かった。僕は、そこを出て、家路に就いた。外は、寒くて、折角温まった体が、一辺に冷えて行くのが分かった。僕は、家路を急いだ。そこには、もう、冷たくなった妻しかいなかったが、それでも、愛しのスイートホームに早く帰ろうと思った。そして、家に着いた。僕が、家に着いた頃は、もう、夜の9時になっていた。僕は、暖房をつけて、そして、テレビを点けた。テレビでは、くだらないバラエティー番組がやっていた。僕は、さっき、映画を見たばかりだったが、また、何か、他の映画をみたくなった。だから、映画チャンネルに変えた。僕の家は、と有る、有料チャネルの会社と契約していたので、映画は、見放題だった。僕は、ただ、何をするでもなく、ただ、映画を見た。そして、映画が一本終わる頃、僕は、眠たくなって、眠りに就いた。そして、深い深い眠りに落ちていった。・・・・・・・・・・僕は、また、例の施設にいた。そこで、僕は、いつの間にかそこの施設長になっていた。髪にも白いものが多く混じるようになっていた。家族は、いつの間にか、増えて、あの妻(黒猫のマリー)の他に、二人の子持ちになっていた。彼女は、もう、仕事を辞めて、専業主婦になっていた。僕は、事故に遭って、死にかけたが、何とか、運良く生きていた。僕は、毎日忙しく働いていた。僕は、もう、過去の事は、すっかり振り切って、前を向いて働いていた。彼女も、過去のレイプ体験も、すっかり忘れたようだった。日々、忙しく子供の世話に追われていた。僕は、幸せだった。満足だと思っていた。若い妻と、子供たち、そして、社会的地位も手にして、もう、何も、臨むものは無い、と、思っていた。そんな時、施設で、食事を咽喉に詰まらせて、一人の入居者を死なせてしまった。マスコミがそれを聞きつけ、取材に来た。僕は、責任者として、その対応に追われた。僕が、やった訳ではないのに、まるで、僕が、その人を殺したみたいに罵られた。僕は、ただ、謝るしかなかった。そして、相手(ご家族)の気が収まるのを待つしかなかった。しかし、相手(ご家族)は、これを施設の過失だとして、裁判にかけてきた。僕は、施設の名誉の為に、裁判に出た。そして、決して、過失ではなく、入居者の寿命だったと言うことを強調した。しかし、結果は、施設の全面敗訴になってしまった。僕は、多額の慰謝料を払う責務を負わされた。折角、掴んだ幸せが、音を立てて、崩れていった。僕は、資金の工面に、至る所に当たったが、結果は、芳しくなかった。僕は、もう、すっかり疲れてしまい、もう、今度は、自ら、この世を去ろうと、決断した。そして、電車に飛び込もうとしたが、勇気がなくて、出来なかった。だから、今度は、重しを付けて、池に飛び込んだが、重しが軽すぎて、浮かんできてしまった。僕は、彼女の事を考えた。僕が、どんな状態になっても、只管、僕を信じて、僕を待って居てくれる彼女を。そう、黒猫のマリーの事を。僕は、号泣した。そこに、雨が降り出した。僕は、びしょ濡れになったが、そんな事は、もう、どうでもよかった。僕は、無性に、彼女に会いたくなった。【そうだ。この体は、僕一人の物だけじゃないんだ。彼女や子供達の物なんだ。】と、思った。そして、【帰ろう。そう、家に帰ろう。そして、彼女に告げよう。そして、謝ろう。】と、僕は、そう、思った。僕は、家への道を急いだ。家に着くと、彼女が、心配そうに僕を待っていてくれた。僕は、何も言わず、彼女を抱きしめた。そして、『ごめん。ごめん。俺が悪かった。俺、もう一度、やり直すよ。だから、俺に付いて来てくれないか?』と、言った。彼女は、『何、言ってるの。もう、付いて行ってるわよ。今までも、そして、これからも。何があっても一緒よ。』と、言った。僕は、涙が止まらなくなった。そして、もう一度、『ごめんな。』と、言って、そこに倒れこんだ。僕は、長時間、雨に打たれたせいで、体温が下がり、低体温症の症状が出ていた。妻は、僕が、倒れこんで、中々起き上がらないので、『あなた〜。』と、叫んだが、僕は、薄れゆく意識の中で、それを理解できず、その場に仰向けに倒れてしまった。妻は、『あなた〜。』と、言って、絶叫した。僕は、意識が遠のいて、やがて、真っ白な光に包まれた。そして、その光の中に、人影を見た。それは、微笑みながら、こっちを見ている妻だった。『お前〜。』と、心の中で叫んだ。そして、光が僕を包んだ。その光から抜けた。………その時、僕は、目覚めた。『あっ、夢だったのか?』そう、思った。
             続く

この記事に

開く コメント(1)

開く トラックバック(0)

[ すべて表示 ]


.


みんなの更新記事