この小説「酔って候」の主人公山内容堂は土佐二十四万石の十五代目藩主である。
昨年NHKテレビで大河ドラマ「功名が辻」が放映された。
なかなか好評だったがその主人公の山内一豊はこの土佐藩の開祖である。
この史伝風小説(著者あとがきから)は藩主の相次ぐ急死により思いがけず一門連枝の分家の身分から
土佐二十四万石の藩主になっていくところから、幕末政界に四賢候の一人と称せられ福井藩主松平春嶽
宇和島藩主伊達宗城、薩摩藩主島津斉彬とともに幕政改革を訴え活躍し明治維新後は官をすべて辞した
後東京で四十六歳で生涯を閉じるまでが描かれている。
物語は最後の方で
………維新後は官を辞し、ひたすらに飲み、連日、新橋、柳橋、両国の酒楼に出没して豪遊し、ついに
家産がかたむきかけたが「むかしから大名が倒産したためしがない。おれが先鞭をつけてやろう」と豪
語して、家令の諌めをきかなかった。詩がある。
蛇足だが、つけくわえたくなった…………
とある。
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| 昨は橋南に飲み、今日は橋北に酔ふ 酒有り、飲むべし、吾酔ふべし 層楼傑閣、橋側にあり 家郷万里、南洋に面す 眥を決すれば、空闊、碧茫々 唯見る、怒涛の巌腹に触るるを 壮観却ってこの風光無し 顧みて酒を呼べば、酒すでに至る 快なるかな、痛飲放恣を極む 誰か言ふ、君子は徳行を極むと 世上解せず、酔人の意 還らんと欲すれば欄前燈なほ明らかに 橋北橋南、ことごとく弦声 |
豪快な詩である。その状況がまさに目のあたりに鮮やかに浮かんでくる。
この詩を読むことによりこの小説が完結するように思う。
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