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2013 01 24 第3回 「小説 小野小町伝説」 三好京三 著 鳥影社 2004
 
  花の色はうつりにけりな いたづらに わが身世にふるながめせしまに
 
  小説の最終章近くに出てくる小野小町の和歌である。
 
平安時代の有名人と多くの名歌が登場する小説である。僧正遍昭、在原業平、大伴黒主(この人物は敵役)、文屋康秀らの古今集の六歌仙。壬生忠岑、凡河内躬恒などの撰者。小町の父、小野篁(たかむら)。
 
和歌以外は作家の想像力の産物であろう。生涯を常処女(とこおとめ)として送った小野小町。生涯を通して二人の天皇(仁明天皇と道康親王[文徳天皇])、一人の貴族(良岑宗貞:後、僧正遍昭)に深く愛され、さらに当代の多くの貴族に愛された才媛。中でも深草少将は九九日間、小町のもとに通い、百日目に雷に打たれ身を焦がして死ぬ。その悲劇に小町も悲しみにくれる。
 
多くの交誼を得た人々を失い、小町は京都山科の山荘にて最期を迎える。
 
あはれなり 我が身のはてや 朝緑 つひには野辺の 霞と思へば (辞世の句)
 
また、宗貞は『竹取物語』(史実は作者不明)を書き天皇に献上すると、天皇は、小野小町をかぐや姫になぞらえる。男の愛を受け入れぬ気高い女性としてである。また『伊勢物語』の「芥川」「東下り」の筋も登場し、楽しい読み物になっている。
 
時代に制約されながらも、作家の想像力は縦横無尽である。好色な「小町」を、もう一人登場させ、歌人として主体的に生きようとした小町の凛としたあでやかさを際立たせている。
 
貴族的洗練はあっても、性描写が大らかである。古今集の勉強にも役立つ、ちょっとエッチな好編である。       (2013・1・24) 

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