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今回はモロッコケムケム層の獣脚類歯の中でもあまり見かけないタイプの歯
(以後DFC138)をご紹介します。
DFC138はやや厚みがあり、細長い形状をしています(CBR:0.66、CHR:2.44)。
側面からの像では、近心カリナは舌面方向にねじれており、鋸歯は舌〜遠心方向に向いています。
歯冠を上から見ると「J型」です。
DFC138と同様の「J型」の断面は、マジュンガサウルスの第4前上顎骨歯、第1上顎骨歯および第1−6歯骨歯にも認められます(Fanti andTherrien.2007)。 顎前方の歯でも、いわゆる「前上顎骨歯」型とは異なった形状で、彼らはこのタイプの歯をモルフォタイプ4としています。
画像の歯は大きく、ずんぐりした形状で、DFC138とは異なった印象を受けます。
マシアカサウルスとされる脱落歯と、頭骨のイラストです。
*Smpsonet.al(2001)、 Carrano et al.(2011)より引用改変 この画像から歯冠断面の形状は分かりませんが、「J型」に近い印象を受けます。また、細長く、近心カリナが舌方向へねじれた歯冠はDFC138と類似しています(この歯は前方の歯骨歯とされています)。
頭骨のイラストからも顎前方の歯は細長い形状をしていることが分かります。
さて、ぱっと見た印象ではDFC138はマジュンガサウルスよりもマシアカサウルスの歯に似ているように思います。 モロッコケムケム層の獣脚類は不明な点が多いですが、デルタドロメウスかどうかはともかく、何らかのノアサウリダエがいたのではと考えたくなる歯です。
この歯1本で属種の推定は難しいですが、いずれにせよ顎前方の歯と考えてよいと思います。
以下、顕微鏡画像です。 近心舌面
遠心口唇面
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アフリカ(獣脚類)
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歯化石
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デルタドロメウスは恐竜歯ふぁんにはおなじみの獣脚類ですが、いまだにその歯形態は不明のままです(頭骨が未発見)。
デルタドロメウスが産出したモロッコのケムケム層からは、形態的が異なる獣脚類の歯が複数見つかるので、これら中にデルタドロメウスの歯が含まれていると思われます。
そこで、これらとデルタドロメウスと近縁と考えられている獣脚類の歯を比較して、デルタドロメウスの歯がどのような形だったか考えてみたいと思います。
1.デルタドロメウスの分類
ウィキペディアより引用改変
デルタドロメウスの分類は諸説ありますが、今回はノアサウリダエ、ネオヴェナトリダエ、そして参考としてアベリサウリダエの歯を比較対象とします。
2.文献的なデルタドロメウスの歯
*Richter et.al(2012)引用
まずは文献ではデルタドロメウスの歯がどのように扱われているか見てみましょう。
Richterら(2012)は2本の獣脚類歯(NMB-1671-R、NMB-1672-R)を「デルタドロメウス?」としており、それぞれ彼らの提唱するMT3(dromaeosaurid-like teeth)とMT4(abelisaurid-like teeth)に相当します。
形態の異なる歯を差し向けるあたり、現状ではよく分からないと言う事なのでしょうか。
3.化石マーケットにおけるデルタドロメウスの歯
これは10年ほど前に入手したケムケム層産の獣脚類歯です。直線的な後縁が特徴的で、当時はこのタイプの歯がデルタドロメウスとして流通していました。
*最近の海外市場ではアベリサウリダエとかルゴプスの名で流通していますが、国内では相変わらずデルタドロメウスの表記を見かけます。
4.アベリサウリダエとの比較
*Sereno and Brusatte(2008)、Hendrickx and Mateus(2014)、Fanti and Therrien(2007)より引用
これらのアベリサウリダエの歯は直線的な後縁を持っており、化石マーケット的なデルタドロメウスの歯と類似しています。
5.ノアサウリダエとの比較
*Araújo et.al、 Carrano et.al(2002)より引用
ノアサウリダエからは、歯の情報が得られたノアサウルス(左)とマシカカサウルス(右)の歯を参考にします。
画像は不鮮明なところもありますが、歯冠は湾曲しており、10mm弱と小型です(スケールバーから推測)。
*スミス(2005)のデータではマシアカサウルスの歯冠高は大きくても14mm程度です。
*Smpson et.al(2001)、 Fanti and Therrien(2007)より引用
マシアカサウルスの歯です。
ポジションによる形態の違いはありますが、やはり湾曲しています。
これらはケムケム層産の獣脚類歯の中で、小さく湾曲したタイプの歯です(歯冠高は10mmちょい)。
主にドロマエオサウルス類や属種不明の歯として流通しているものです。
(
その中で、マシアカサウルスと類似したものをピックアップしました。
2017.12.24、中央の画像を修正
6.ネオヴェナトリダエのとの比較
*Hendrickx and Mateus(2014)、Porfiri et.al(2001)より引用
ネオヴェナトリダエからは、ネオヴェナトル(左)と、右:メガラプトル(右)を参考にします。
これらも湾曲した歯冠で、サイズはノアサウリダエの歯と比べると大きそうです。ネオヴェナトルの歯冠高は20−40mmくらい(Hendrickxのデータより)、メガラプトルは幼体なので成体はもっと大きな歯冠だったと思われます。
ケムケムから産出する20mm以上で湾曲した歯は、カルカロドントサウルス(とラベルされた)の中に見かけることがあります(明らかなカルカロドントサウルス型の歯は除きます)。
この中に、デルタドロメウスが含まれている可能性はないでしょうか?
(体長8メートル級の獣脚類の歯ならこのくらいの大きさがあっても良い気がします)。
*カルカロドントサウルスとして入手したモロッコ産獣脚類歯(約24mm)。
歯冠は湾曲し、やや厚みがある(CBR約0.6)。カリナの位置も独特(矢印)で定型的なカルカロドントサウルスの歯とは異なる。他の獣脚類歯の可能性はないだろうか?
(幼体の前方の歯かもしれないが)
デルタドロメウスかどうかはともかく、検討が必要な歯であろう。
7.デルタドロメウスの歯はどんなカタチ?
*ケムケム層産の湾曲した獣脚類歯。
左から歯冠高(およそ)、10mm、16mm、24mm
左2つは、ドロマエオサウルス類として入手した歯。共に比較的薄い(CBR:0.5以下)が、基部断面の形状が異なる。
右の歯は他の2つよりも大きく、厚みがある(CBR:0.6)。
対象は少ないですが、デルタドロメウスと近縁とされる獣脚類の歯は湾曲しており、歯冠高は10mm前後の小さなものから、20―40mmサイズのやや大きなものまで様々なことが確認できました。
ケムケム層から産出する獣脚類歯にも湾曲したものがあり、サイズにも幅があります。これらの中にデルタドロメウスの歯が含まれている可能性が高そうです。
デルタドロメウスの頭骨の大きさや形は不明ですが、小さな頭だった場合、10mm前後の歯だったかもしれません。また、20mm以上で太い歯を持っていたとしたら、それに見合った頭骨だったかもしれません。
ただ、足が長くスレンダーな体型だったと考えられているデルタドロメウスには、太くてがっしりした歯よりも薄く鋭い歯のほうが似合っている気がします。
私見ですが、エラフロサウルスの歯に類似した10mm前後の薄くて湾曲した歯がデルタドロメウスの最有力候補かと思います。文献的にはRichterらのMT3、マーケット的にはドロマエオサウルス類とされる歯(これにもバリエーションがありそうですが)が相当します。
しかし、デルタドロメウスは8メートル級と推定されており、10mm前後の歯では小さいようにも思います。ポジションや成長段階による差異も考えられますが、別の小さなノアサウリダエの可能性もあるかもしれません(McFEETERS、2013)。
また、デルタドロメウスとされてきた(マーケット的に)直線的な後縁の歯はその可能性が低く、クリプトプスやルゴプスといったアフリカ系アベリサウリダエと関係が深そうです。
これは、ケムケム層における新たなアベリサウリダエの存在を示唆するのかもしれません。
いずれにせよ、遊離歯による推測は限界があるので、より多くの情報を持った化石の発見を待ちたいところですね。
ケムケム産の獣脚類歯は思った以上にバリエーションがあって(いまだに見たことが無いタイプに出会います)、興味が尽きません。今後も注目していこうと思います。
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久しぶりの投稿です。
福井のノドサウルス科の歯や、モンゴルの巨大翼竜(なんて良い響き)等のタイムリーな話題もありますが、相変わらずモロッコ系です^^;
この歯は後縁が直線的で、RichterらのMT4(abelisaurid-like teeth)に相当します。 細長く(CHR:2.53)、やや太い(CBR:0.65)形状は、ある部位を示すのかもしれません。
モロッコ、ケムケム層のアベリサウルス類とされる歯は、クリプトプスやルゴプスに形態が似ており、
これらとの関連を考えたくなります(同層におけるアベリサウリダエの存在)。
一方、以前これらの歯の持ち主とされた(化石業者的な話)デルタドロメウスは、ノアサウリダエやネオヴェナトリダエとされ、いまだ分類が定まりません。
しかし、アベリサウリダエではないため、上記のような歯を持っていたのか疑問を感じます。
(個人的見解です)
次回は、デルタドロメウスの歯はどのような形だったのか考えてみたいと思います。
(もちろんコレクター的見地です)
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モロッコ産の小さな獣脚類歯(10mm前後)の中でも細長く、湾曲の強いタイプです(以後、DFC-132)。
RichterらのMT3(dromaeosaurid-like teeth)に近い形態と思います。
しかし、歯根が無いのでconstriction(歯冠と歯根の間のくびれ)は確認できません。
この歯の特徴として細かな鋸歯が挙げられます。
(近心側が遠心側より小さく、特に近心歯尖と基部が小さい)。
MT3の鋸歯密度と比較しても、それらより小さいことが分かります。
*下図参照、Richterら2012のデータより作成。
MT3のMAVG(20/5mm前後)、DAVG(17/5㎜前後)
この歯を素直にMT3として良いのか少々疑問が沸いてきました。
しかし、MT3のデータは少なく(n=3)、歯冠高も考慮すべきでしょうから、もう少し検討が必要ですね。
それでは、各部の拡大画像をご覧ください。
(上より、歯冠尖部、中央部、基部)
こちらは遠心中央部の舌面と口唇面。
ブラッドグルーブ(矢印)は一部に見られますが、弱いです。
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