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スコミムス テレネンシスの歯 ニジェール ガダフォア テネレ砂漠 これは以前ご紹介したスコミムスの歯です(ひろさんの記事に刺激され標本箱から引っ張り出してきました)。 保存状態が悪くエナメルは剥がれ鋸歯が確認できないのですが、産地、歯冠のフォルム、リッジの存在からスコミムスと判定していました。しかし、鋸歯が無いため一抹の不安を覚えている標本でもあります。 そこで、今回は新たな所見を加えて再検討してみたいと思います。 これはスコミムスの歯冠表面の拡大画像です(Sereno、1998)。エナメル表面に1mm前後の細かな縦シワが確認できます。 私の標本にもこのようなシワがあるか観察してみました。 エナメル表面にはやや太いもののシワのような構造がありました(矢印)。 やっぱりスコミムスで良いのかな? こうなると鋸歯の痕跡を見つけてダメ押しをしたいですね。 そこで再度、顕微鏡で鋸歯を探してみました。 遠心上部付近のカリナの部分の顕微鏡画像です。 前回は気付かなかったのですが、カリナ上には丸い穴のようなものが縦方向に複数認められました。 上写真の拡大です。 丸い穴は位置的にもサイズ的にも鋸歯の痕跡ではないかと思います。 以上より、この化石はコンディションが悪いながらもスコミムスの歯で良いと考えます。 一見、鋸歯が確認できない状態の良くない標本でも歯冠のフォルムやエナメルのシワでスコミムスを推定することはできそうですね。 例のブースにはこれと似た歯があったように思います。コンディションを気にしなければお手頃価格でスコミムスを手に入れるチャンスかもですよ(次回のショーまで売れ残っていればいいなぁ^^)。
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アフリカ(スピノ類、その他)
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スピノサウルス・エジプティアクス(S.aegyptiacus)はエジプトのバハリア層からシュトローマーによって発見されました。そのホロタイプ標本は第二次大戦で破壊され詳細が分からなくなっていましたが、近年、残されたイラストや文献の再検討が行われています(Smith 2006)。日本においても全身骨格が復元されたことは記憶に新しいところです(恐竜2009、砂漠の奇跡)。 また、歯形態については以下のように記述があります(Buffetaut 2012)。 In Spinosaurus aegyptiacus, the enamel is described as almost completely smooth , with only very fine wrinkles close to the base of the crown (Stromer 1915). スピノサウルス・エジプティアクス歯の特徴 1、滑らかな歯冠(リッジを認めない、または弱い?)。 2、歯冠基部に細かなシワを認める。 良く見るリッジが発達しているスピノサウルス歯とは特徴が異なっていますね。 北アフリカ産のスピノサウルスにはスピノサウルス・エジプティアクス(S.aegyptiacus)とスピノサウルス・マロカヌス(S.maroccanus)が知られています。 スピノサウルス・エジプティアクスの歯形態は上記のとおりですが、スピノサウルス・マロカヌスは歯冠が保存された頭骨は未発見なのでその歯形態は不明です。 しかし、流通しているケムケム産のスピノサウルス歯には形態の違い(特にリッジの強弱)を認めるので、これらの歯が混在している可能性があります。 リッジの弱いタイプはスピノサウルス・エジプティアクスの可能性が高いと思われます(ただし、スピノサウルス・エジプティアクスはエジプトのバハリア層産です、モロッコにも生息していた可能性はありますが、ケムケム産の歯は由緒正しいとは言えません)。 そうするとリッジの強いタイプはスピノサウルス・マロカヌスの歯の可能性が高そうですが、現状ではスピノサウルス属の一種(spinosaurus sp.)の歯としておくべきだと思います。また、スピノサウルス・エジプティアクスの歯形態も完全に解明されているわけではないので年齢やポジションによってはリッジが存在していた可能性も否定できません。 北アフリカ産のスピノサウルスの歯にはエナメル質の装飾に3タイプあり、複数のスピノサウルス類の存在が示唆されるとの報告もあります(Richter,2012)。この点に注目してコレクションするのも面白いかもしれませんね。 マイコレクションの「スピノサウルス・エジプティアクス」タイプの歯です(ケムケム産)。 口唇面のリッジは非常に弱く、エナメル質は滑らかです。また、舌面のエナメル基部にはリッジを認めます。 光の当たり具合が悪くてわかりづらいですね、拡大画像でご確認ください。 口唇面、中央付近の拡大です。リッジは認めません。 舌面、エナメル基部の拡大です。リッジを認めます。 |
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スピノサウルスの歯冠表面には小さな隆起状の構造物が認められます。 この構造物については昨年の恐竜博のカタログに詳しく記載されており、保存状態の良い標本の綺麗な 拡大写真が見られます。私のスピノサウルス歯では、一見エナメル質の状態が良くても小さな隆起物の 保存状態はイマイチなものが多かったです。その中で、エナメル質の剥離が著しいですが残存エナメルの 状態が良い歯(SP-3)がありましたので拡大しました。 SP‐3の舌面です。 エナメル質は歯冠後縁の中央〜基部に存在しています。 歯冠表面に見られる複数の縦方向の盛上り(リッジ)はエナメル剥離部分にも認められます。 歯冠基部付近のエナメル質の拡大です。 縦方向に小さな隆起物が密に走っています。 歯冠中央付近のエナメル質です、基部よりも隆起物は大きくなっています。 写真では2本のリッジを認めますが、エナメル質自体が盛り上がり、その上に隆起物が乗っている様に見えます。 基部付近のエナメル質が剥離した部分です。 写真中央にリッジを認めますが、剥離部にも盛り上がった構造が認められます。 リッジは歯冠表面の構造物だけでなく、下の部分からエナメル質を伴い隆起していることが分かりました。 歯冠中央付近のエナメル剥離部です。 2本の盛り上がりを認めますが、これはエナメル上のリッジに対応しています。 また、剥離部の表面には微細な顆粒状の構造物を認めます。 後縁舌側カリナ付近を斜めから見た像です(左がカリナ)。 縦に走っていた隆起物はカリナに近づくと歯尖方向に向け斜めとなり、カリナの頂点へ伸びていきます。 こちらは唇側カリナ付近を斜めから見た像です。舌側と同様の構造を認めます。 後縁カリナを正面から見た像です。 両側から伸びた隆起物はカリナ頂上でぶつかり合っています。 この構造を恐竜博のカタログでは「ヘビの肋骨のよう」と表現しています。 後縁カリナを斜めから見た像です。 隆起物の頂点はつぶ状になっており、鋸歯のように見えます(顆粒状構造物)。 舌側、唇側から隆起物がぶつかり合いセレーションのような構造が2列に連なっています。 後縁カリナ正面からの像です。 リッジと同様に、カリナのエナメル剥離部分にも盛り上がりが認められます。 面白いことに、剥離部にもカリナに対応するかのように2列の微細な顆粒状構造物が見えます。 *2016.4.3 画像中の用語を変更しました。 私の所有する歯にも参考文献と同様に、歯冠表面の小さな隆起物を確認できました。さらに、 エナメルが剥離したカリナやリッジの下にも、それに対応するような盛り上がりが観察できた事は収穫でした。 参考文献
1)長谷川善和.スピノサウルスには鋸歯があるか.長谷川善和、ケネスカーペンター、マットラマンナ、徐星、監修.「恐竜2009−砂漠の奇跡」公式カタログ.東京:日本経済新聞社、テレビ東京、日経ナショナルジオグラフィック社、2009:118−119. 2)Hasegawa,Y. Tanaka,G. Takakuwa,Y. Koike,S. Fine sculptures on a tooth of Spinosaurus(Dinosauria, Theropoda)from Morocco. Bull.Gunma Mus.Natu.Hist. 2010 ; (14):11−20. |
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