|
今回はポルトガル(ロウリンハ層)産の2つの小さな獣脚類歯を比較検討してみます。
この2つの歯は完璧なコンディションではありませんが、「近心カリナが基部に達しない」という特徴と、基部断面の形状が確認できます。
この2つの特徴でどの程度分類できるか、ヘンドリックスの文献を参考にして検討してみましょう。
参考文献
Evolution of Teeth and Quadrate in Non-avian Theropoda (Dinosauria: Saurischia), with the Description of Torvosaurus Remains from Portugal
(情報多くオススメ。フリーでダウンロードできます)
これは、獣脚類系統を歯の形態別に色分けした表の中から、ロウリンハ層に関係ある系統を抽出したものです(ティランノサウロイデアは参考)。
カリナが近心基部に届かない歯はピンクの四角で、基部断面の形状はバーの上のアルファベットで表わされています。「8」は8の字型の断面(lateral teeth)、それ以外は
mesial teethの特徴です。
今回の歯はlateral teethが考えられるので(Aはやや前っぽいっですが)、「8」のみ対象とします。
ピンクの四角(近心カリナが基部に達しない)は、ケラトサウリア(ケラトサウルスは
mesialmost)、メガロサウロイデア、ネオヴェナトル、ティランノサウロイデアの一部に認められます。
また、8の字型断面はアロサウロイデアおよびティランノサウロイデアの一部に認められます。
これらの特徴を、Tooth A 、Tooth Bで見てみましょう。
Tooth Aの近心基部と断面の画像です。
断面は半分埋まっているので正確な形はわかりませんが、「8の字型」または「腎型」の可能性があります。
「8の字型」だった場合、近心カリナの特徴を合わせると、プロケラトサウルス(ティランノサウロイド)と共通した特徴となります。
一方、「腎型」だった場合、その可能性はさらに広がります。
Tooth Bの近心基部と断面の画像です。
断面は楕円形です。上記の表ではこの形態での分類は無く、この特徴は使えません。
しかし、歯冠の形態はlateral toothなのでケラトサウルスのmesialmostは除外できそうです。
また、「8の字型」断面も除外すると、ゲニオデクテス、メガロサウロイデア、ネオヴェナトルと共通した特徴となります。
さらに、黄緑の四角で囲まれた特徴(遠心鋸歯が近心より大きい:DSDI>1.2)を加えるとメガロサウロイデアの中でもピアトニッキサウリダエと共通した特徴となります。
*DSDI=MC÷DC
さて、少ない形質での無理な分類でしたが、ある程度の傾向はあったかと思います。
ロウリンハ層の獣脚類は、アベリサウルス類、アロサウルス、ケラトサウルス、トルヴォサウルスが候補に挙げられますが、近心カリナの特徴により、アベリサウルス類、アロサウルス、ケラトサウルス(mesial teeth)は除外できそうです(絶対ではないのですが)。
Tooth Aは当初は細長い歯冠と近心カリナの特徴から、メガロサウルス類を疑っていましたが、基部断面の形状が「8の字型」だとしたら、ティランノサウロイデアの可能性もあるかもしれません。現状、同層からは見つかっていませんが、地理的、年代的に考えればその存在は十分考えられます。
ピアトニッキサウリダエと共通した特徴を持っているTooth Bは興味深い歯です。
これは、トルヴォサウルスとは異なるメガロサウロイデアの存在を示唆するかもしれません
(モリソン層におけるマーショサウルスのような存在)。
もう一つ忘れてはいけないのが、ロウリンハノサウルスです。
その分類や歯形態は不明確なので、今回の歯が該当する可能性も十分あります。
(私が入手できるレベルの不完全な歯だと、もやもやが増えるだけかもしれませんが^^;)
|
ポルトガル
[ リスト | 詳細 ]
全1ページ
[1]
|
今回もポルトガル(ロウリンハ層)産の小さな獣脚類歯です。
この歯はアロサウルスsp.とラベルされていました。
状態はあまり良くないのですが、形態的な特徴がいくつか観察できたので、前回の歯との比較用に入手したものです。
歯冠形態は後方に湾曲したブレード状です。CHRは2.0です(長くもなく細くもなくといったところでしょうか)。
また、近心カリナは基部に達しません。歯冠基部の断面は卵円形です。
エナメル表面には、近心から遠心に渡る波状のシワ(tun: transverse undulation)や細かな構造(ent: enamel texture)が認められます。
鋸歯密度は、近心 12/2mm(5mm変換で30個)、 遠心 10/2mm(5mm変換で25個)です。
鋸歯形態は長方形に近く、遠視側がさらに細長い形態です。
近心鋸歯
遠心鋸歯
Transverse undulation
enamel texture
さて、いかがでしょうか。
基部に達しない近心カリナは、前回の歯と共通する特長ですが、基部断面の形状や、鋸歯密度が多少異なっています。
前回はティランンノサウロイド、今回の歯はアロサウルスとラベルされていましたが
このあたりの同定は良く分かりません^^;
ポルトガルの獣脚類歯には形態的なバリエーションがあり、その研究も進んでいるようなので、今後はもう少し踏み込んだ同定ができるようになるかもしれませんね。
(モリソン層の方も期待したいところです)
|
|
今回は、ティランノサウロイデアとラベルされていた、ポルトガル(ロウリンニャ層)産の獣脚類歯です。
その同定には疑問がありますが、まずは形態を見てみましょう。
(今回はすべてデジカメ画像のトリミングです。顕微鏡は使っていません)
1.歯冠の形状
*左から横、近心、遠心面(近心、遠心はやや斜めからの像)。 スケールは5mm。母岩の上に定規を置けなかったので切り出したプラ板です。
歯冠の高さ(CH)は約20.3mmで、横からの像は細長く(CHR : 2.61)、後方へ湾曲しています。先端が欠けているので、これらの数値はもっと大きかったでしょう。 カリナは遠心側が基部まで達しているのに対し、近心側は中央付近で消失しています。また、それぞれ鋸歯を伴っています。 歯尖からの像です。
矢印がカリナの位置(画像左が近心側)です。水平面に対して近心と遠心カリナの位置はずれています。それらの位置と遠心側の歯冠形状から、露出面が舌面と考えます。
基部からの像です。
基部は中央が凹んでいます。半分埋まっているので推測ですが、「腎型」または「8の字型」の断面とおもいます。
近心側からの像です。
先端から中央付近にかけて鋸歯を伴ったカリナを認めますが、歯冠中央付近からカリナは消失しています。
露出面が舌側と推定したので母岩にカリナが埋まっている可能性は低いと思います。
(口唇側へカリナが偏移する例はないのではと思います)
2.鋸歯 鋸歯は遠心側で先端から基部まで、近心側では中央付近まで認められます。
鋸歯密度は、近心中央:25/5mm、遠心中央:27/5mmです。
さらに拡大です(バー5㎜)。
鋸歯の形態は、ほぼ正方形です(撮影角度による誤差の可能性がありますが)。
3.表面の構造
歯冠の先端〜中央にかけて、長い咬耗(W)を認めます。
また、歯冠表面の保存状態は悪く、エナメル質は殆ど残っていません。そのためエナメル上の構造は確認できません。
近親〜遠心にかけて延びる複数の溝を認めますが、波状のシワ
(tun: transverse undulation)とは異なり、単なるひび割れのような感じです。 以上簡単な紹介でしたが、どのような印象を持たれたでしょうか?
ティランノサウロイデアとの関係は、そもそもロウリンニャ層からの報告が無い(私が調べた限り)ので、その可能性は低いと思います。
また、ポルトガルの同年代からはアヴィアティランニスというティランノサウロイデアが報告され、その歯とされる脱落歯(前上顎骨歯はD型、上顎骨と歯骨歯は細長く先端が湾曲しているという)もありますが不確定な部分も多く、今回の歯と結びつけるのは難があると思います。(Zinke,1998) (Rauhut, 2003) この歯は、細長い歯冠と近心基部にカリナが達しない特徴を持っています。
そのため、私はティランノサウロイデアよりもメガロサウルス類を疑っています。
もしかしたらトルヴォサウルスと関係があるのかもしれません。
(サイズ的には幼体でしょうか)
ポルトガルのトルヴォサウルスは、胎児を含めその歯形態が報告されている(Hendrickx,2015)ので、いずれ今回の歯と比較してみたいと思います。
|
全1ページ
[1]




