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今回はジュラ紀中期(バソニアン)フランス産のメガロサウルス類
(Dubreuillosaurus ?)として入手した獣脚類の歯(以後DFC116とします)を検証します。
DFC116の詳細画像はこちら
[DFC116の基本形状]
DFC116は波状のシワ(tun : transverse undulation)と歯冠辺縁の短いシワ
(mun : marginal undulation)を認めます。また、近心カリナが基部に達していません。
Dubreuillosaurus(以前はPoekilopleuron Valesdunensis)はジュラ紀中期(バソニアン)フランス、ノルマンディー地方で発見されたメガロサウルス類で、状態の良い頭骨が見つかっています。
頭骨には前上顎骨歯2本、上顎骨歯5本、歯骨歯2本、計9本認められ、その形態とデータセットがHendrickxら(2014)によって報告されています。そこで、上顎骨歯、歯骨歯、遊離歯のデータを使い、DFC116を比較しました。
(画像もこちらから引用しています)
[歯冠の形態]
左:DFC116、 右:Dubreuillosaurus 脱落歯
歯冠のフォルムはどちらもブレード状で近心カリナが基部に達しません。データセットを見ると大きさや厚さは類似しています。
また、tunはDFC116には認めますが、Dubreuillosaurus には認めません。
エナメル質の色合いも違っています。
DFC116の遠心鋸歯は長方形に近いですが、他の鋸歯は正方形に近い形です。
Enameltextureに大きな違いはありません。
[鋸歯の大きさ]
DubreuillosaurusとDFC116の鋸歯密度の比較です(/5mm)。
DFC116の鋸歯密度はDubreuillosaurusより大きい(鋸歯が小さい)です。
こちらはジュラ紀のメガロサウルス類とDFC116の遠心中央の鋸歯密度を比較したグラフです。
DFC116ほど細かい鋸歯を持つメガロサウルス類は認めません。
一番近いのはメガロサウルスの歯(遊離歯、CH22.5mm、DC20/5mm)です。
[まとめ]
DFC116は近心カリナが基部に達せずメガロサウルス類の特徴を持っていますが、tunの有無や鋸歯密度が異なるのでDubreuillosaurusの歯である可能性は低いと思います。
また、現在、歯形態が知られているジュラ紀のメガロサウルス類とも鋸歯密度が異なります。
ジュラ紀フランスのメガロサウルス類はPoekilopleuron、Piveteausaurus等が知られていますが、標本は断片的で歯形態は分かりません。これらの歯の可能性も否定できませんが、現状ではメガロサウルス類の歯と認識するのが妥当と思います。
一つ疑問点、
DFC116には白っぽい色の鉱物が付着しています(歯冠断面の部分、画像左)。
以前ご紹介したヌテテスとされる歯(白亜紀前期、Champblanc, France産)に付着している白色の鉱物に似ている気がします(画像右)。
もしかしたらDFC116は白亜紀前期のChampblanc産かもしれません...
(産地情報について業者に問い合わせていますが、いまだ返事無いので今以上の情報は得られなさそうです)
また、DFC116はブロ友の化隕鉱宝さんが所有するChampblanc産メガロサウルス類の歯と近い鋸歯密度を持っています。
もしかしたらこの2者には関係があるかもしれません。
(産地疑惑に追い打ちですね^^;)
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フランス
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フランス産メガロサウルス類の歯の詳細画像です。
[基本的形態]
歯冠はブレード状で、先端が残っていればかなり細長い歯だったと想像されます。
遠心カリナは基部に達しますが、近心カリナは基部に達しません。
基部の断面は類円型、CBRは0.44とあまり厚い歯ではありません。
エナメル表面には、歯冠の近心から遠心に渡る波状のシワが、先端から基部にかけて認められます。
鋸歯は比較的小型です(近心中央:23/5mm、遠心中央:22/5mm)。
この歯はメガロサウルス類の特徴(近心カリナの長さ)を認めますが、小さい鋸歯がに気になります。
いずれ、いろいろなメガロサウルス類と比較しようと思いますが、今回は形態をお楽しみください。
[鋸歯の形態]
近心側中央付近の顕微鏡画像です。
鋸歯は横から見ると正方形に近い形をしています。
近心中央〜基部付近です。
カリナが消失する部分です。
遠心中央付近の顕微鏡画像です。
鋸歯は横から見ると長方形に近い形をしています。
[血液溝の形態]
近心側の血液溝(写真右、矢印)は基部方向へ延びています。
一方、遠心側の血液溝(写真左、矢印)はあまり目立ちません(または無し)。
同様の構造が舌面、口唇面共に認められます。
[歯冠のシワ]
歯冠を横切る波状のシワが全面に認められます。
近心辺縁の顕微鏡画像です。
辺縁にも短いシワが認められます。
[エナメル表面の微細構造]
歯冠中央付近の顕微鏡画像です。
エナメル表面には細かな網目状の構造が認められます。
遠心辺縁の顕微鏡画像です。
構造物はツブ状に見えます。
歯冠には数か所、このような小さなへこみが観察されます。
よく見ると層状にひびが入っているように見えますが、鉱物が付着してできたのでしょうか?生きているときにできた傷だったら面白いですね。
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フランス(ベリアシアン期)産の小さな歯(以後DFC095とします)の歯冠表面の微細構造をご紹介した際、 catappledogさんより「流れるようなシワがバリオニクスとよく似ており、スピノサウルス類のミッシングリンクの可能性があるのでは?」という内容のコメントを頂きました。そこでDFC095とバリオニクスの微細構造および歯冠形態を比較してみました。 [微細構造所見] どちらの歯にも縦方向の流れるようなシワが確認できます。また、鋸歯の根元からは基部方向に斜めに流れています(A,B)。遠心面から見ると「ヘビの肋骨状」に見えます(C,D)。一方、シワの大きさはバリオニクスのほうが荒そうです(倍率が違うのでご注意ください)。 [歯冠の形態] バリオニクスの歯冠形態(B)は獣脚類らしい湾曲したフォルムで、表面に複数のリッジを認めます。画像では厚みは分かりませんが スミスのデータを見るとCBR(厚さを表す数値)は0.75―0.96と大きく、かなり太い歯だと思われます。 この歯とDFC095(A)は大きさも形も違いすぎます(DFC095のCHは約10mm、CBR0.58)。そこで同じくらいの大きさの歯を探したところスペイン産(Upper Barremian)のバリオニクス類に、類似した歯を見つけました(C)。 直線的な遠心カリナや舌面中央の盛り上がり方(矢印)がよく似ています。しかし、スペイン産バリオニクス類の舌面には明瞭な複数のリッジがありますがDFC095にはありません(顕微鏡で見ると中央がややくぼんでいるのですが、明らかなリッジとは言い難いです)。 [まとめ] DFC095とバリオニクス類には歯冠フォルムや微細構造に共通点が見られましたがリッジの存在という明らかな違いもありました。しかし、「ヘビの肋骨状」構造は多くのスピノサウルス類に見られるものなので両者には何らかの関係があるのではないかと思わせます。 またDFC095はリッジも無くバリオニクス類に比べ、シンプルな歯冠形態である印象を受けます。産出年代を見てもDFC095のほうが古いので、より基盤的なスピノサウリダエの可能性もありそうです(下図参照)。プロトバリオニクスとかだったら面白いですよね。 ただ、微細構造に大きな意味が無いとしたらメガロサウリアまたは他の獣脚類の可能性も否定できません。 一時は獣脚類の歯ではないかと迷っていましたが、ここにきて獣脚類の可能性がアップしてきました^^ 今回、catappledogさんに頂いたコメントを自分なりにまとめてみました。多大なヒントを与えてくださり感謝しております。この場分かりてお礼申し上げます。 |
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ヌテテスとして入手したフランス産(白亜紀前期)の小さな歯の表面を顕微鏡で観察すると、スジ〜網目状の微細な構造が認められます。 獣脚類において、この様な構造はスピノサウルスの歯で報告されています(長谷川ら、2010)。 また、マジュンガサウルスと考えられる歯にも類似した構造が認められ、当ブログにおいてご紹介しています。 スピノサウルス→ http://blogs.yahoo.co.jp/osusiburuberi/31978597.html マジュンガサウルス→ http://blogs.yahoo.co.jp/osusiburuberi/36202706.html スジ状の微細構造はワニ類やモササウルスなどの歯に見られ獣脚類では一般的ではありません。もしかしたら水棲生物の食餌と大きな関係があるのかもしれません。うむむ、また獣脚類から遠ざかってしまいました^^; しかし、マジュンガサウルスと考えられる歯にも見られるので完全に水棲生物だけのものとは言えないと思います(あの歯がワニ類だったらお手上げですが^^;)。 この歯の歯冠フォルムは典型的な獣脚類のものとは異なっており、現状では獣脚類と断定できないと考えています(もちろん否定するものではありません)。 今後さらに調べていきますが、歯冠表面の微細構造はこの歯の大きな特徴の一つであり同定のためのツールになればよいなと思っています。 では、拡大画像をどうぞ。 微細構造を際立たせるためライトを当てる角度を変えています。お見苦しい部分もありますがご容赦ください。 上3枚の画像は舌面の遠心側です(歯尖部、中央部、基部)。 細かいスジは縦方向に走っており、歯冠全面に分布しています。 小歯付近のスジは小歯の基部から斜め下(歯冠基部方向)へ伸びています。 これらのスジは細かく、小歯基部の上に複数見られます。 エウオプロケファルス(スコロサウルス)のflutingのようにも見えます。 遠心面から見るとスピノサウルスのように「ヘビの肋骨」状に見えます。 舌面の近心側も遠心側と同様の構造です。 唇面の基部付近です(画像は横向きです)。 さらに拡大御すると網目状の構造が観察できます。 |
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