風のクラシック

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ムソルグスキー「Д曠凜 璽鵐轡船並5幕」(1872〜1881)

感動の最終幕です。
第5幕はモスクワ郊外の森の中の隠れ僧院。
分離派教徒を絶滅させる命令を受けたピョートル親衛隊が迫っているのを知ると、ドシフェイは最後の決断をします。
炎の中でマルファは自らの肉欲を昇華させ、分離派教徒たちは己の信念を貫くのです。

第5幕はホヴァーンシチナの中で最も感動的な幕です。
そしてムソルグスキーは終結部の音楽を未完にして死んだので多くの問題を引き起こし、それゆえ最も興味深いものとなりました。
私の所持している4種のCDは全て終結部が異なっています。

まず分離派とは何か、解説を見てみます。
1652年、改革派の聖職者ニコンがモスクワ総主教に即位就任すると、彼によって数々の典礼改革が実行に移され、ロシア正教会はコンスタンティノープルの正教会に接近・同調をはかるようになった。つまり、ロシアが諸外国と肩をならべて発展してゆけるようになるためには、まずロシア自体が変わらなくてはならない、とニコンは考えたのである。その結果ニコンは、古来の伝統的なロシア教会に対して批判的な態度をとることになった。彼は、ロシアにおける典礼の方法をギリシアをはじめとする他の東方正教会の典礼に揃えようとして、たとえは十字のしるしを切る動作も、2本指で行っていたものを3本指で行うようにし、また、ハレルヤも2回唱えていたものを3回唱えるように変更した。ニコンのこの改革に対しては、当然ながら激しい抵抗が起こった。特に「分離派(ラスコーリニキ)」とよばれた旧勢力はの信者たちは、狂信的といえるほどの抵抗を示し、これらの一連の「ギリシア正教会化」に反対した。そうした中で、ロシア皇帝たちは、アレクセイ帝の時代以降、改革者ニコンのほうを指示して、かたや旧勢力の分離派教徒を迫害し、その政策は反キリスト教的な様相を呈することになった。
(CD PHILIPS PHCP-5145-7ゲルギエフ指揮「ホヴァーンシチナ」のロバート・レイトン秋岡陽訳より)
史実を調べていくうちにムソルグスキーは分離派の集団自決の事実を目にし、激しく心を揺さぶられたに違いありません。

また、「ボリス」の経験からマルファという女声役を作り出したのでしょう。
マルファが全ての幕を結びつける役割も果たしています。

「ホヴァーンシチナ」はホヴァンスキーの事件をきっかけとして、ロシア近代化を果たしたピョートル大帝の改革の裏で起こった悲劇、権力者に振り回される庶民の悲劇、銃兵隊の悲劇、何の罪もない古き信仰者の悲劇を深い同情をもって描いているのです。
ホヴァンスキーやゴリーツィンといった権力者の悲劇は私にはそれほど感じられませんでした。

ここには大きなドラマ展開はありません。
私には一つの大きな歌曲のように思えました。
スターソフが台本に異議を唱えても自分の考えを貫いたムソルグスキー。
虐げられた人々に深く共感し、訴えつづけてきた、あのムソルグスキー、彼らしいなあと思いました。
あなたの表現したかったことがよく分かりますよ、ムソリャニン!

さて、問題の最終場面。
分離は教徒の僧院にピョートル軍が迫ってきます。
あの何の屈託もないプレオブラジェンスキイ連隊のラッパが響いてきます。
ムソルグスキーの残した厳かな分離派教徒の合唱は深く心に届きます。
それをもとにリムスキー=コルサコフ、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチがそれぞれ最終部分を作曲しました。

.螢爛好ー=コルサコフ版(NAXOS 8.111124-6のハイキン盤)
https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/f7/a1/other_wind/folder/1127815/img_1127815_26695480_0?-1
マルファによって薪に火がつけられます。
弦によってその炎の揺らめきが表され、分離派教徒は力強く信仰の合唱を歌います。
我が守護者、救世主よ、我を守りたまえ。
我らは主の真理を広めん、我らより何ものも奪うこと能わじ。
アーメン。
(CD SONY S3K 45831 Emil Tchkeov"Khovanshchina"の英語訳より)
合唱の合間にティンパニの炎と共にピョートル軍のファンファーレが見事に交じり合います。
それはそれはもの凄い情景!
敵軍に屈せず、燃え盛る炎の中で歌う合唱の力強さは強い信仰の表れ。
大迫力の中、ピョートル軍の行進曲が取って代わり高らかに奏されて長調で終わります。

何か取ってつけたような終わり方。
それまでの息詰まるような音楽がふっとお気楽な行進曲で終わってしまう。
古いものは新しいものにとって変わる。
兎に角、リムスキーはこのように「ホヴァーンシチナ」を終わらせ、スターソフを喜ばせました。

▲好肇薀凜ンスキー版(Grammophonのアバド盤)
スターソフに宛てたムソルグスキーの晩年の手紙によると、ムソルグスキーは分離派教徒たちの集団自殺をそのまま舞台で描くことは考えていなかった。この手紙をもとに、ラムは次のように結論を下した。ムソルグスキーは実際には舞台上で殉教シーンを見せるのはやめ、それらは舞台の両ソデで行われるものとして、、音楽が次第に消えていくのに合わせて分離派教徒たちが退場し、オペラの幕とするつもりだった、と
(CDポリドールPOCG-1087「ホヴァーンシチナ」のリチャード・タルースキン一柳富美子氏の訳より)
ストラヴィンスキー版はこの記述に沿ったものです。

薪に火がつけられた後、静かで荘厳な分離派教徒の合唱が歌われます。
リムスキー版にあった、合間合間に聞こえるピョートル軍のファンファーレはなく、火のもの凄さを表すような壮絶な音楽でもありません。

厳かで悲壮。
分離派教徒の信念を、そしてその運命を静かに受け入れていく精神の力強さを感じさせます。
壮絶な炎の中、「ボリス」のあの鐘の音を思わせるゴーンという低音が響き、強い意志をもって合唱が燃え上がります。
そして分離派教徒の声は次第に弱まり弱まり、息絶えていきます。
鳥肌が立つほどの感動を覚えます。

クラウディオ・アバド指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ドシフェイ…バータ・ブルチュラーゼ
マルファ…マリヤーナ・リポフシェク
録音1989年 Grammophon POCG-1087/9

つづく

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