Message body『カミオカンデの原点の原点、日本科学界の意気込み』
丸善出版から単行本『カミオカンデとニュートリノ』
(鈴木厚人監修)が出版され好評である。この本の1章に は鈴木厚人さんの『カミオカンデーーニュートリノ探求の 原点』が書かれている。実は、この『原点』以前にカミオ カンデのスタートには発案者小柴先生の大変な御苦労があっ たのだった。それは設置のための予算の獲得だった。 当時、国の予算を使う研究の決定には学術会議法の決め るルールあった。まず研究の承認と学術会議の推薦がなさ れなければならない。そこで小柴先生は神岡鉱山施設プロ ジェクトを学術会議に持ち込んだ。そしてその原案の検討 は学術 会議物理学委員会の委員に付託された。 委員会は関連学会から選挙で選ばれた人たちで構成され ていたので、筆者も物理学会からの選出委員として加わっ ていた。東大の関係者からは内々に『(東大の『不良』= そのときの言葉で失礼!)小柴のやつが神岡鉱山あたりに 壮大で突飛な宇宙線実験施設を作るという原案が学術会議に 出されるぞ。困ったことだ、さてどうする?』という話が あった。私の眼には大学に長靴を履いて登校する、東大物 理としては異色な小柴先生の姿がちらついた。『不良』と はあの長靴のことだな、と私。 さて小柴施設を審議する物理委員会。小柴先生は長靴を 履かず『ふつうの姿』でやってきた。しかし当時の物理委 員会は物性関係者が多かった 。(これは物理学会の専門分 野の人数比を反映していたかもしれない)もちろん各委員 はこの原案に賛成しなかった。 これは東大の予算ではない。東大理学部物理学科のある 一つの講座の予算にも拘わらず当時2億円以上の予算要求だっ た。そのころ、大学の講座研究費は数百万円、科研費も当たって もその程度。それが2億!これは他の研究室の講座研究費 を圧迫する。文部省の研究開発費の総額は各年度で決まっ ているから、東大の一研究室がそのほとんどを奪ってはな らない、と物性関係者は主張した。 しかし議論を重ねるうちに自然に原案支持に傾いていっ た。その理由はただ一つ、このプロジェクトが成功すれば 世界で画期的な評価が得られると納得したからだった。 学 術会議をパスしても東大の教授会が待っていた。東大の物 理学科の各講座は当時圧倒的に物性関連が多かったから難 関だった。学術会議物理委員会と同じ議論が蒸し返された。 それに加えて教授会は『人手』の危惧が問題にされたそう だ。膨大な装置の建設はだれがやるのか。小柴先生が長靴 で通ってもおいつかない。大学院生?北アルプスの奥の山 の1000メートルの鉱山に好んで通う大学院生などいる のか? そのような議論がつづく中、最後はやはり『成功すれば 画期的』という結論で、東大からの予算申請は上位にラン クづけされた。当時、日本の物理科学の研究者は貧弱な予 算しかないのをよそに常に『世界一をめざす気風』があっ たのだ。他の予算を圧迫しよう と、大学院生の志望者がな かろうと、『世界で画期的』が優先された。この日本科学 界の気風こそ失ってはならない教訓だ。 (カナダBC州銅鉱山) |

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予算獲得に苦労した話は小柴先生自身がよく話されていましたから承知していましたが、その難問をクリアーしたのが世界一を目指す、日本科学界の気風にあったとは、全く知りませんでした。でも「一番で無くてはいけないんですか」の発言当たりから最近の「何とかファースト」流行の風潮は、100年の計で物事を判断する良き伝統はどこかに飛んで行ってしまったのでは無いでしょうか。
2017/5/30(火) 午後 2:43 [ new*ch*n*es ]
以前、カミオカンデの事でコメントしたと思います。軍事費の問題と混同してしまったため(国家の予算を教育費に宛てた方が良い)、カミオカンデに否定的なコメントをしてしまったのですが、現在では私の考えが間違えであったことを反省しております。
大槻先生の御文章で述べられていることは、日本がカミオカンデに支出する予算が2億円とのこと。私たちは(というか私は)ニュートリノの研究には不十分だけれど、少ない研究費でここまでやったよ、との苦しい状況であると察知しました。
sernの研究費は年間1000億円です。
ttps://indico.cern.ch/event/308909/contributions/1678971/attachments/590042/812128/Introduction.pdf
2017/5/30(火) 午後 3:16 [ 減二 ]