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五分程で丘を下りきり、河馬車が停止した場所にはサカキが寝所にしている家よりも遙かに大きく、まるで西洋の城のような外見の建物が聳え立っていた。大きな門の前には二人の風体の悪い男が立っていて、サカキの顔を見ると同時に背筋を伸ばし敬礼を示した。サカキは門兵らしき二人の男に黙礼を返し、開かれた門の中へと進んだ。
外観に比べ建物の中は簡素な造りで、今にも崩れ落ちるのでは無いかと思わせる部分も少なくは無かった。 サカキは真っ直ぐに伸びた廊下を進み、突き当たりの大きな扉で仕切られた部屋の中に進んでいった。サカキが部屋に入ると同時に、中にいた者達は直ぐさま姿勢を整え、敬礼でサカキを迎えた。唯一部屋の奥に大きな椅子に腰掛けた口髭を蓄えた男は、微動だにせずにサカキを睨み付けた。 「イイご身分だな。どれだけ待たせれば気が済むんだ?」 口髭の男は厳しい口調をサカキに向けたが、サカキに向ける表情は綻んでいた。 「済まなかった」 サカキは口髭の男の目の前に歩み寄り、一言謝罪の言葉を口にすると、二人は笑顔で握手を交わした。 「俺と会う暇が無い程忙しかったのか?」 「色々とあって・・・・」 「色々ねぇ?」 サカキは口髭の男がサカキとの再会の喜びに浸るのも束の間に本題を切り出した。口髭の男の部下と思われる男がサカキの座る椅子を用意し、サカキはその椅子に座ると同時に話を始めた。 「それで、どんな具合だ?」 「どんな具合って、会って早々その話か? How are you ?とか言えないのか?」 「悪かった。どう見ても健康そのものだから」 「それはどうも。お礼ついでに良い知らせだ。俺の方は期待していた以上に順調だ。あと一ヶ月もすれば準備は整う。後はフォルトレスの出方次第だ」 口髭の男の言葉にサカキは無言で頷くと同時に立ち上がった。 「フォルトレスは俺がどうにかする。お前は自分の仕事のことだけを考えろ」 サカキの言葉に口髭の男は一瞬表情を曇らせたが、それを隠すように作り笑いで誤魔化した。 「それと、これは悪い知らせなんだが、お前が気に掛けていた音。あれはお前の推測通りだった。しかも思っていた以上に時間は限られてるぜ」 口髭の男はサカキに皮肉を込めた口調で言い、何かを考えているように黙り込んだサカキを見詰めた。 「そうか」 サカキはそう一言呟くと、その場をあとにしコルトの待つ河馬車へと戻った。 |
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