いざ進め、満身創痍ing life!

平凡な毎日から生まれた物語・・・

ツリー

[ リスト | 詳細 ]

見知らぬ男が語る「ハナのない少年」の物語
記事検索
検索

全2ページ

[1] [2]

[ 次のページ ]

 少年は六年生になりました。少年は九番ででキャッチャーでした。たくさん練習してキャッチャーにな

れたのは嬉しいが、九番バッターは余り嬉しくありませんでした。けれど、代打よりはましだ、と少年は

思いました。ピッチャーは小林君でした。小林君はサードを守っていた頃から強肩だと先生に褒められて

いました。だから六年生になるとピッチャーに転向しました。キャッチャーは誰もやりたいという人がい

なかったし、キャッチャー用のグローブを持っているのも少年だけでした。小林君の球は速いと少年は思

いました。小林君の球は強肩だから、ブォー、と音がしました。少年はよく小林君の球をパスボールして

しまいました。小林君は下手くそ、と大声で怒鳴るときもあったし、大きな溜息を吐くだけの時もありま

した。少年は溜息の方が悲しく思えました。だから少年はレギュラーになってからも一生懸命に練習しま

した。小林君の球が捕れなければキャッチャーを止めなければならない。そうなったら鼻のない自分は解

雇される、と少年は必死に練習をしました。春。少年はキャッチャーで八番で初めての試合に出場しまし

た。小林君はエースで四番でした。試合は負けてしまいました。6対5でした。小林君は四打席、三ヒッ

ト、一ホーマー、三打点の活躍でした。少年は四打数一ヒットでした。それとエラーを三回してしまいま

した。少年のエラーのせいで、二点を失いました。少年は試合の後に小林君に謝ろうと考えました。けれ

ど小林君は少年が謝る前に五点も取られてごめん、と少年に言いました。少年は必死に首を振りました。

もう一度小林君がごめん、と言いました。少年はもっと練習しようと考えました。兄ちゃん競馬、興味あ

るか?実は俺は大の競馬ファンなんだ。けれど、全然当たらんのだ。どんなに本命を狙っても、全く当た

らんのだ。それで、偶に大穴を買うと大本命がきやがる。どうしても勝てねえから、毎週賭けるのを我慢

して、年に一度天皇賞しか馬券は買わんことにしてるんだ。去年と一昨年は見事に外れたが、今年は当た

りそうな気がするんだ。しかもどでかいのが。もうすぐ年に一度の楽しみが・・・・・・。兄ちゃんも買ってみ

たらどうだ?素人の方が当たるって言うし。

 九月、少年は小学校最期の大会にキャッチャー、六番で出場しました。小林君はエースで四番。小林君

は野球をしていないときでも少年に話し掛けるようになっていました。少年は嬉しいと思いました。準決

勝、試合は2対1で負けてしまいました。少年は三打数、一安打。ツーベースを打ちました。一打点も記

録しました。エラーはゼロでした。小林君は試合が終わると少年にごめん、と言いました。小林君は泣い

ていました。少年も小林君が泣いているのを見ると、涙が溢れてきました。悔しい。ツーベースじゃなく

て、ホームランだったら勝っていたのに、と少年は悔しい気持ちになりました。もっと練習しようと思い

ました。もっと上手くなりたいと思いました。少年は少年野球チームを引退しました。引退しても練習は

続けました。小林君も少年と一緒に練習をしました。小林君は少年に中学に行っても一緒に野球をしよう

と言いました。少年は嬉しくなりました。うん、と頷きました。お前さんどこのファンだ?野球だよ、野

球。どこだ?俺は巨人が好きだ。分かるか?ジャイアンツだよ。

 十二月、クリスマスの五日前。少年はクラスの男の子に鼻がないことをからかわれました。少年は悲し

い気持ちになりました。少年は何も言い返せずに下を向くと、小林君は少年をからかった男の子に殴りか

かりました。少年をからかった男の子は鼻血を出しました。小林君は駆け付けた先生に喧嘩の理由を聞か

れました。小林君は俯いて黙っていました。肩が震えていました。先生は少しだけ不機嫌な声で理由をも

う一度聞きました。小林君は答えませんでした。クラスの女の子の一人が小林君は悪くないと言いまし

た。少年は黙っていました。小林君も黙っていました。喧嘩の原因を女の子から聞いた先生は少年をから

かった男の子を叱りました。小林君を褒めました。みんなに見習うように、と言いました。人を虐めるの

はその人が弱いからだ、と言いました。少年は自分は弱い人よりも弱い、と悲しい気持ちになりました。

小林君は先生を睨んでいました。学校が終わると少年は小林君と一緒に帰りました。いつもは小林君は帰

り道、野球の話をしましたが、その日は何も喋りませんでした。少年も何も喋らずに小林君と並んで歩き

ました。商店街ではクリスマスソングが流れていました。クリスマスツリーも飾られていました。少年は

小林君にありがとう、と言いました。小林君は何が、と不機嫌な顔で答えました。少年は助けてくれてあ

りがとう、と言いました。小林君は少年の方ではなくツリーを見ていました。助けたんじゃない。ただ殴

りたかっただけだ、と言いました。ツリーを見ていた小林君は少年の方を向きました。にっこりと笑いま

した。悲しそうににっこりと笑いました。小林君は好きなプロ野球選手の話を始めました。大きな声で野

球の話を話しました。中学の話しもしました。小林君はがんばってキャッチャーのレギュラーになれ、と

少年に言いました。少年はうん、と頷きました。小林君はエースピッチャーになると言いました。少年は

うん、と頷きました。小林君はまたツリーの方に顔を向けてしまいました。小林君はピッチャーとキャッ

チャーは夫婦だ、とツリーに向かって言いました。それから、俺とお前は友達だ、とツリーに向かって言

いました。少年はそっぽを向いた小林君にうん、と答えました。小林君の後ろ姿はなんだか照れくさそう

に見えました。少年も友達という言葉が嬉しいけれど照れくさいような気がしました。小林君は突然走り

出しました。家までランニングだ、と少年の方を振り向かずに言いました。少年は頷き小林君の後を追い

ました。商店街にはクリスマスソングが流れていました。少年は楽しい気持ちでした。少年は小林君に追

い付き、横に並んで走りました。小林君は少年の顔を見て笑いました。少年も笑いました。ジングルベル

が遠くから聞こえました。少年は走りながら歌いました。小林君も一緒に歌いました。少年には、なんだ

かクリスマスが待ち遠しく思えました。ジングルベル、ジングルベル、鈴がー鳴るー。ってお前、俺の話

ちゃんと聞いてたのか?何とか言え!チェッ。無愛想な猫だよ。猫なんかと話しても何も面白くねえ。う

ぅ、さぶい、さぶい。今夜は冷えるなぁ。さっさと帰って寝ましょうか、ときたもんだ。き〜い〜よ〜し

〜、こ〜の〜よ〜る〜、月が〜出た、出った〜、月が〜あっ、よいっ、よいっ、って曇りじゃねえか。寒

い、寒い。


 大きなクリスマスツリーは青や赤や黄色に光り、路地裏では猫がツリーを見上げていた。空からは雪が

キラキラと落ちて、コンクリートの道に小さな模様を付けて消える。

 空き缶は北風に吹かれ、カラカラと音を立てて転がっていった。路地裏の猫はそれに驚き姿を消した。

ツリーはキラキラと輝いていた。

ツリー5(1〜6)

 少年は五年生になりました。クラス替えでタコとチュウとは別々のクラスになりました。タコとチュウ

は同じクラスになりました。少年は小林君と同じクラスになりました。少年は嫌だなぁ、と悲しい気持ち

になりました。けれど、小林君は一年生の時や、二年生の時のように、少年をからかったりはしませんで

した。少年のことを笑わない代わりに、少年を睨み付けるようになりました。少年は笑われる方が少しだ

けいいなと思いました。五年生になった少年は、少年野球のチームに入りました。小林君も入っている野

球チームに入りました。少年は余り運動が得意では無かったので、野球チームに入ることは少しだけ嫌だ

な、と思っていました。しかし、少年の父親は大の巨人ファンでした。少年の父親は、少年に王貞治の話

を何度も聞かせました。少年は父親の話を聞いて、王貞治と言う人はすごい人なんだと思いました。少年

の父親は、少年に王貞治のような野球選手になれと言いました。けれど少年は自分は王貞治のようにはな

れないと思いましたが、父親が楽しそうに話をするのを頷くだけで聞いていました。チームで少年は一番

下手くそでした。だから他の人より沢山練習をしなければいけないと考えました。少年は沢山練習しまし

た。野球をしているときだけは小林君は少年を睨み付けたりしませんでした。時々ではあるけれど、少年

に話し掛けたりもしてくれました。野球をしているときだけは・・・・・・。だから少年は野球が好きになりま

した。好きになると、辛い練習が楽しくなりました。小林君は五年生なのに六年生より上手でした。五年

生なのに小林君はサードで五番でした。五年生なのにホームランも打てました。小林君はたまに少年にバ

ッティングのコツを教えてくれました。そして少年に言いました。いつか俺は王貞治の記録をやぶる。少

年はきっと小林君なら出来ると思いました。思った通りのことを小林君に言いました。小林君は嬉しそう

に笑いました。少年も笑いました。けれど小林君が少年に笑いかけてくれるのは野球をしているときだけ

でした。小林君は教室では少年に話し掛けませんでした。目が合うと、睨み付けるか、目を反らしまし

た。少年は悲しくなりました。テッシュペーパーが何で二枚で一枚だか知ってるか?俺にも分からん。思

わないか?わざわざ二枚重ねないで、もっと分厚い紙にすりゃあいいだろ?そうだろ?俺の言うこと、間

違ってるか?俺はそう言うことに敏感なんだ。世の中のどうにも納得がいかないことに。世の中の不条理

ってやつさ。分かるか?俺は不条理だらけの世の中で、周りの奴らが気にも留めないことを沢山見つけた

んだ。だからって給料が上がるわけでもないがな。自慢じゃねえんだ。誰も俺が他の奴より鋭いと言って

るわけじゃねえ。勘違いすんなよ。

 五年生になったクリスマスの五日前、少年は両親にクリスマスプレゼトに何が欲しいか早く決めなさい

と言われました。少年は迷っていました。少年は父親のおさがりのボロボロのグローブを使っていまし

た。だから新しいグローブが欲しいと思っていました。けれど、少年は自分のバットを持っていませんで

した。だからバットも欲しいと思いました。二つは買ってもらえない、と少年は悩んでいました。新しい

グローブがあれば、エラーが少なくなるような気がするし、自分のバットがあれば、打率が上がるような

気がしました。少年はバットを買ってもらって打率が上がる方が嬉しいと思いましたが、エラーをすると

みんなに迷惑がかかってしまうと思いました。少年は迷っていました。少年は父親の意見を聞こうと考え

ました。少年の父親は居間で寝転がりながら新聞を読んでいました。少年の父親は新聞を見ながら言いま

した。とうとう解雇か・・・・・・。少年は解雇の意味がよく分からなかったので、父親に意味を尋ねました。

少年の父親が大好きな巨人軍のキャッチャーがチームを追い出されるという意味でした。少年は新聞に載

っているその選手の顔写真を見ましたが、見たこともない顔でした。父親の話では、今年も、去年も、一

度も試合には出ていないと言うことでした。三年生の時、少年は野球中継を殆ど見ませんでした。だから

きっと知らないんだと思いました。少年は父親にどうしてこの選手は解雇になったのかを尋ねました。少

年の父親は言いました。こいつには華がない。父親の言葉を少年は鼻がないと勘違いしました。けれど、

新聞の写真の選手には鼻がありました。もしかしたらこれは鼻があったときの写真なのかな、と考えまし

た。鼻がないと解雇になると思った少年は自分のことを考えました。なんだか悲しい気持ちになりまし

た。悲しくなった少年に父親は言いました。こいつはマスクをかぶっていればいい選手だが、バッティン

グが糞だ、と少年に言いました。少年は考えました。自分もマスクをかぶれば鼻が無いことを隠すことが

出来ると・・・・・・。少年は父親に言いました。キャッチャー用のグローブが欲しいと・・・・・・。少年の父親は

余りキャッチャーが好きではないので、いい顔はしませんでした。けれど、少年は解雇されたくはありま

せんでした。来年からは六年生になるので、もしかしたらレギュラーになれるかもしれないので、解雇さ

れるのは嫌でした。それに解雇されれば小林君と話をすることが出来なくなると思いました。それは嫌だ

な、と少年は父親にもう一度お願いました。キャッチャー用のグローブが欲しい。少年の父親はそれなら

野村のような選手になれと少年に言いました。野村がどんな選手なのか少年には分からなかったけれど、

少年はうん、と頷きました。クリスマスの日、少年はキャッチャー用のグローブをもらいました。なんだ

か不格好なパンみたいな形だなぁと少年は少しだけ悲しくなりました。けれどこれで解雇されないで済

む、とホッと溜息を吐きました。ところでお前、オンナいるのか?正直に言えよ。照れてもしょうがねえ

だろ。俺がお前ぐらいの時はすごかったぜ。こう見えても、髪の毛もふさふさしてて、痩せてたんだ。そ

こいらのオンナは俺をアラン・ドロンと勝手に呼ぶ始末だ。俺も迷惑ではあったが、悪い気はしねえ。ア

ラン・ドロン知ってるか?何だ、知らねえのか?それはもういい男なんだ。それに俺は瓜二つだったんだ

ぞ。なんだよ、その目は?信じてねえだろ?だったら今度写真見せてやるよ。あっ、そう言えばあの当時

俺は一枚も写真に映ったことが無かったんだ。残念だったな。けど、俺は嘘は言ってねえからな。

ツリー4(1〜6)

 少年は四年生になりました。相変わらず少年はタコとチュウと三人で遊んでいました。もちろん二人は

少年の鼻を笑ったりはしません。時々二人は少年を叩いたりしました。少年は痛いのは嫌だったけれど、

嘘の笑い顔を浮かべ我慢していました。少年は鼻を笑われる時の方が、痛いことを知っていました。心の

ずっと奥の方が、チクリと痛いことを・・・・・・。

 そう言えば、こないだ新聞に消費税がまた上がるって書いてあったぞ。馬鹿にするのもいい加減にしろ

って話だよ。これでも俺は若い頃学生運動ってやつに参加してたんだ。分かるか?毛沢東?知ってるか?

それなら、ゲバラは知ってるか?チェ・ゲバラだよ。そんなことも知らねえのか?今の若い奴らは、どこ

まで脳天気なのかね?根性見せて、革命の一つでも起こしてみやがれってんだ!聞いてんのか?まった

く・・・・・・。

 四年生になっても、少年はタコよりもチュウよりも背が小さいままでした。だから、いつも二人の言葉

に頷くだけで、自分の考えていることは殆ど口にしませんでした。その日も少年は二人の話を楽しそうに

聞いていました。楽しそうにしているだけで、本当は楽しくなかったけれど、少年は笑っていました。商

店街にある駄菓子屋で、チュウはお菓子を買いました。学校帰りの買い食いは禁止されていましたが、少

年は何も言えませんでした。そのお菓子はオマケでシールが一枚入っている、男の子に人気のお菓子。少

年もシールを十二枚持っていました。タコは五十枚持っていました。チュウは数え切れないぐらい持って

いました。だから少年はクリスマスのプレゼントに、そのお菓子を一箱まるごと欲しいと母親に言いまし

た。一箱まるごとだと、十二枚のシールが一気に三十六枚になるので、少年は五日後のクリスマスが待ち

遠しくてたまりませんでした。少年はそのことを二人に自慢しました。いつもは余り自分のことを話しま

せんでしたが、少年は嬉しさの余り、二人にそのことを話しました。少年の話に二人はそうなんだ、とだ

け言って、違う話を始めました。少年は二人が羨ましがるのを想像していたため、なんだかガッカリして

しまいました。少年は箱ごとだよ、ともう一度二人に言いました。だから何?チュウはそう言って買った

ばかりのお菓子を開けました。何だよこれ持ってるよ、とチュウは言い、タコはそれならくれ、と言いま

した。少年は寂しくなりました。少年は寂しくて、二人にかまって欲しくて、二人の名前を呼びました。

何だよ?と言われ、少年は慌てました。何も言うことが思い浮かばずに、少年は俯きました。実は、神社

に僕の持ってるシールを隠したんだ。少年は嘘を言いました。そのシールを見つけた方に、クリスマスに

買ってもらうシールを全部上げる。少年の言葉に二人の目は輝きました。少年は少しだけ嬉しくなりまし

たが、嘘を吐いたせいで直ぐに不安になってしまいました。二人は今すぐ神社に行こうと言い、少年は二

人に着いて神社に向かいました。二人は必死にシールを捜しました。けれど、見つかりませんでした。少

年は不安でした。後悔しました。タコが本当にあるのか?と少し怒った口調で少年に言いました。少年は

本当だよ、と言って作り笑いを浮かべました。だんだんと暗くなり、探すのは明日にしようとチュウが言

いました。タコもそうしようと言いました。少年もそれがいいと頷きました。少年は家に帰るとシールを

全部ポッケットに入れ、神社に向かいました。神社の境内の下に潜り込み、シールを隠しました。少年は

嘘吐きにならずに済んだことで、安心しました。辺りはもう真っ暗でした。帰り道、商店街にはクリスマ

スソングが流れていました。ツリーもピカピカと光っていました。少年はモヤモヤした胸の辺りを抑え、

家に向かいました。次の日、学校が終わるとタコとチュウはは走って神社に向かいました。少年も二人と

一緒に走りました。少年もなんだかわくわくしていました。神社に着いて直ぐに、チュウが十二枚のシー

ルを見つけました。嬉しそうにはしゃぐチュウをタコは羨ましそうに眺めていました。チュウはタコに言

いました。半分上げるよ。チュウの言葉にタコは嬉しそうに本当か?と言いました。十二枚と二十四枚で

三十六枚。だから十八枚上げる、とチュウは言いました。本当にいいのか、とタコが尋ねると、チュウは

友達だから、と笑いながら答えました。友達だかはんぶんこ。少年はチュウはの言葉を心の中で呟きまし

た。少年は九九の三の段を心の中で呟きました。さんいちがいち、さんにがろく、さざんがく、さんしじ

ゅうに、さんごじゅうご、さぶろくじゅうはち、さんしちにじゅういち、さんぱにじゅうし、さんくにじ

ゅうしち。三十六にはなりませんでした。さんしじゅうにとさんぱにじゅうし。四と八で十二。少年は僕

も友達でしょ、とは言えませんでした。帰り道、商店街を歩きながら少年はクリスマスなんて嫌いだと思

いました。

 兄ちゃん。星の話ししてやる。お星様の話だ。毎晩、空に輝いてるお星様は、とんでもなく遠くにある

んだ。太陽の光がお星様にぶつかって、跳ね返って、俺んとこまで届くまでに、何千年、何万年とかかる

んだ。だから今見えるお星様は、もう存在してないかもしれんのだ。分かるか?どう言うことかって言う

と、そう言うことが男のロマンだってことが言いたいわけさ。分かるだろ?お前さんにも。何万光年も先

のロマンが?どうだ?この辺がカッカと熱くなるだろ?胸の辺りが?どうだ?

ツリー3(1〜6)

 少年が三年生になると、友達が出来ました。二年生から、三年生に上がるときのクラス替えで、小林君

とは別のクラスになりました。だから少年は鼻がないことで小林君にからかわれることが無くなりまし

た。新しいクラス。会田君と村上君。あだ名はタコとチュウ。二人は少年の鼻を笑ったりはしませんでし

た。だから少年は二人が好きでした。二人は少年をキタと呼びました。三人は学校が終わると毎日一緒に

遊びました。タコとチュウは買ってもらったばかりの自転車を持っていました。少年は足の着かないお母

さんの自転車を借りていました。チュウの自転車は三段変速ギアが着いていましたが、直ぐにチェーンが

外れてしまいました。少年は自転車の外れたチェーンを直すことが上手でした。少年はいつも得意になっ

て外れたチェーンを直してあげました。チュウの自転車のチェーンが外れるといいのにと考えていまし

た。
 
 携帯持ってるか?便利だぞ。最近買ったんだけど、いいぞ。いつでもどこでも電話が掛けられる。お

前、昔の携帯見たことあるか?俺も実物は無いが、こんなにでかかったんだぞ。嘘じゃねえよ。携帯電話

のくせに、携帯すんのも一苦労。
 
 三年生になった年の十二月、少年は商店街に飾られたクリスマスツリーを見て、やっぱりわくわくしま

した。待ち遠しいクリスマスまであと五日。少年はタコとチュウと二人で遊んでいました。チュウは寒い

から家でゲームをしようと言いましたが、タコは隠れん坊がしたいと言いました。少年は本当はゲームの

方がいいなと思ったけれど、どっちでもいいと答えました。チュウよりタコの方が体が大きいので、三人

は隠れん坊をすることになりました。一番体の小さい少年は、それに従いました。学校の近くにある神社

で隠れん坊をすることになり、少年は神社で一人で隠れるのは怖いと思いましたが、言いませんでした。

弱虫と思われるのは嫌なことでした。最初はチュウが鬼になりました。少年は一人で隠れました。神社の

境内の下に入り込み、小さくなって隠れました。なかなか少年は見つからず、少年は隠れている間に、蟻

地獄の巣を二つと、地蜘蛛の巣を三つ見つけました。蟻地獄の巣は寒いので蟻地獄は居ませんでした。地

蜘蛛の巣を引っ張り出すと、蜘蛛は寝ていたところを邪魔され、少年を睨み付けました。少年は蜘蛛にご

めんねと言いました。蜘蛛は何も答えずに、少年の手から逃げようと歩き出しました。少年は地蜘蛛を二

人に見せようと考えました。少年は二人が喜び、自分のことをすごいとほめる姿を想像しました。少年は

逃げようとする地蜘蛛を逃がさぬように、自分を見つけてくれるのをじっと待ちました。けれど、いつま

で経っても少年は見つかりませんでした。少年は待ちくたびれて、自分から出て行こうと考えましたが、

それは何となく悔しい気がしたので、じっと自分を見つけてくれるのを待っていました。カラスの鳴き声

と共に、辺りは次第に暗くなっていきました。少年はおっかないなと思いながら、自分の手から逃げよう

とする地蜘蛛を弄んでいました。とうとう地蜘蛛が見えないぐらいに辺りは真っ暗になり、少年は寒さで

感覚の無くなった指先で、地蜘蛛を探しました。けれど真っ暗で地蜘蛛を見つけることは出来ませんでし

た。少年は仕方なく境内の下から出て、二人の名前を呼びました。タコー!チュウー!二人の返事の代わ

りにカラスがカーと答えました。鳥居にカラスの姿を見つけました。カラスは少年を睨んでいました。少

年はおしっこがちびりそうになるのを堪え、走り出しました。商店街まで来ると少年はホッと安心して溜

息を吐き、歩き出しました。商店街にはクリスマスソングが流れ、クリスマスツリーがキラキラと輝いて

いました。少年は二人のことを考え、少しだけ悲しくなりました。だから楽しいクリスマスソングは自分

を馬鹿にして笑っているように思えました。少年はクリスマスが嫌いになりました。

 煙草持ってるか?吸わないんだっけ?そうか、健康の為か?そうだ、いいこと教えてやる。特別だぞ。

タマネギは血をさらさらにしてくれるんだ。タマネギ。好きか?いいんだぞ。体に。俺はあんまり好きじ

ゃないんだ。どうしてかって?苦いだろ。ピーマンも嫌いだ。あと、パセリ。セロリも嫌いだ。あれは人

間の食いもんじゃねえな。そう思うだろ?

ツリー2(1〜6)

 二年生になった少年は、二年生になってもみんなに笑われ続けていました。そして、十二月。嫌いなク

リスマスの時期がやって来ました。商店街にはクリスマスツリーがキラキラと輝き、少年はやっぱりクリ

スマスが楽しみだと思いました。

 兄ちゃん、何で煙草、吸わないんだ?何となく?旨くない?そうか、好きずきだからな。

 二年生のクリスマスの五日前に、少年は恋をしました。初めての恋。初恋です。相手は由美子ちゃん。

笑うとえくぼが出来る女の子です。由美子ちゃんは他の子と違い、少年が鼻のないことを笑ったりしませ

んでした。その日も、少年をからかう小林君に注意をしました。少年は嬉しくて、お礼を言いたかったけ

れど、上手く言えませんでした。その日の帰り道、少年は由美子ちゃんと二人きりで帰りました。嬉しく

て、スキップしそうになるのを我慢しながら、由美子ちゃんの隣を歩きました。少年は由美子ちゃんに好

きだと言いたいと思いましたが、自分は鼻がないことを思い出し、止めました。由美子ちゃんは少年に大

きなクリスマスツリーが見たいと言いました。テレビで見るような大きなクリスマスツリーが見たい

と・・・・・・。少年は由美子ちゃんに見せてあげると言いました。小指と小指で指切りげんまんをして、家に

帰りました。少年は困りました。由美子ちゃんと約束したクリスマスツリーのことで、困りました。商店

街には大きなツリーは売っていないし、売っていても少年のお小遣いでは足りないことを知っていまし

た。家の庭には大きな柿の木はあるが、もみの木ではありません。少年は困りました。困って、困って、

クリスマスの日。少年は嘘つきになってしまいました。少年は由美子ちゃんにごめんねを言うことが出来

ませんでした。それでも、由美子ちゃんは少年のことを嫌いになりませんでした。その日も小林君は赤鼻

のトナカイの歌を替え歌にして、少年をからかいました。由美子ちゃんはそれを見て言いました。かわい

そうだよ。少年は本当に自分はかわいそうだと思いました。そして、また、クリスマスが嫌いになりまし

た。

 そう言えば、兄ちゃん、プラズマって知ってるかい?そう、俺もよくは知らないんだが・・・・・・。興味な

い?駄目だなぁ、若い内は何にでも興味を持たないと。廃人みたいになっちまうぞ。

全2ページ

[1] [2]

[ 次のページ ]


.
ouo*_t*po*
ouo*_t*po*
男性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Yahoo!からのお知らせ

過去の記事一覧

検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
コンタクトレンズで遠近両用?
「2WEEKメニコンプレミオ遠近両用」
無料モニター募集中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事