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最初の夜、まだボクは何も知らなかった。 キミは何だか随分眠そうで、それでもキミはそこで何よりも魅力的で、冷たい花のようだった。 二度目の夜、ボクは右手に小さな地図とコンパスを握り締め、それでも何も知らずにいた。 キミは小さな花を無数に散りばめたワンピースを着てそこで誰かを待っていた。 三度目の夜、ボクは水辺に映る自分の姿を見た。 キミは黒い星の欠片を積み上げて空に届きそうな印をつくった。 四度目の夜、ボクは自分の名前を知った。 キミは小さな赤ん坊を腕に抱き黒い鳥と歌を歌っていた。 五度目の夜、ボクはどこから来たのかを知った。 キミは空の色をした日傘を差して流れ行く星の数を数えていた。 六度目の夜、ボクは何処に向かっているのかを知った。 キミは長い髪を解き細長い風を背中に突き刺しながら空より高い大木の木陰で眠っていた。 七度目の夜、ボクはこの世界の過去を知った。 キミは虹色の草を敷き詰めた絨毯の上で黒猫とワルツを踊っていた。 八度目の夜、ボクは太陽の行き先を知った。 キミは南からの風を吸い込みそれを北の空に向かって口笛に変えた。 九度目の夜、ボクは自分が何者かを知った。 キミは初めてボクの存在に気が付き赤い涙を流した。 最後の夜、ボクは全てを知った。 キミはボクの腕の中で真っ赤に染まり歌いながら眠っていた。 婦女暴行及び殺人の罪で実刑判決を受けたA被告の自宅にあったノートより・・・
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「1分」の小説世界
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それが現実なのか夢の中なのかぼくには分からなかった。 |
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