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佐藤初女さん(87歳)
http://www.geocities.jp/yuki_no_isukia/frame.html
http://www5c.biglobe.ne.jp/~izanami/kaminohado/008sathohatusne.html
佐藤初女さんという人が登場したからには、これを書かずにゃ〜済ませることは出来ない。
(この「にゃ〜」というところに既に不吉な予感がする)
まず言ってしまう。
森のイスキアを訪ねた2度目か3度目の時、酒を飲んだ。
毎回飲んでいるがこの時は、
飲んで〜飲んで〜飲まれて 飲んで〜
飲んで〜飲みつぶれて 眠るまで飲んでしまった。
別に、
忘れてしまいたいことや〜どうしようもない寂しさに〜包まれた訳ではないのに・・・
(忘れてしまいたいことは、飲んだあとにやってきたが)
まだ暗いうちに目覚める。
そして恥かしがり始める。
何を恥ずかしがってるんだ!
半分眠りながら恥かしがるんじゃない!
どっちかにしろ!どっちかに!
ボラティアで働く女の子に抱きかかえられるようにして2階まで上がってきたような、来なかったような。
昼間、数名でフキノトウを取りに行った。
森のイスキアに来る目的の一つは「フキノトウの天婦羅」
その時はフキノトウの季節が過ぎつつあって、4、5人で近くの山林を探し回ったが、ない!
めぼしいところは既に採集されていて取り尽くされている。
出掛ける前に理想的なフキノトウとはどんなものか女の子に見せてもらった。
まだ花が開いていない土の中からちょびっとだけ頭を出したもの。
開いたものはもので料理法はあるのだが、天婦羅にはなんといってもまだ蕾のもの。それがおいしい。
ほとんど収穫なく開きかかったものなど採集して、草臥れ果てて戻った。
それでも夕餉には立派なフキノトウの天婦羅が出た。
そして酒。
そして飲みつぶれて〜眠るまで飲んでしまった。
こんな時、初女さんは決して止めたりしない。好きなだけ好きなことをやらせている。
そして暗いうちの目覚め。
夜というのは順番で言えば次第に朝になることになっている。常識的には。
よく「早く誕生日が来ないかな」とか「早くクリスマスイブが来ないかな」という「来ないかな」タイプの人がいるが「来ないでくれ」タイプの人も世の中にいる。
出来ることならこのまま夜がずっと続いてくれないかな、という人も。
その時の私がそうだった。
太陽が地球の向こう側で行ったり来たりを繰り返して欲しかった。
こちら側に顔を出すんじゃねえ!
朝が近づくにつれ血中アルコール濃度は次第に下がり、それに反比例して恥かし濃度が増していく。
暫定的なプランではあったが、決心した。
皆がまだ起き出してこないうちに、ここから一旦出よう!
入りたくなるような穴が見つかればよし、たとえ見つからなくとも正しい方向性を見定め、その後しかるべき行動を取ろう!
静かに階下に下りると、まだ寝静まっていて台所のカウンターに昨日昼間に行なったふきのとう採集の道具が載っていた。
ナイフとビニール袋が幾つかずつあった。それを手にして表に出る。
そして歩いた。
私はふきのとうを探していたのではなく、入りたい穴を探していた。
農道を歩き、幾つもの畑を抜け、林を抜け、あたりは明るくなってきたが、該当する穴は見つからない。
そんな手ごろな穴なんてそうそう見つかるもんじゃない、という結論に達した頃、私は一つの林の中に立ち、呆然としていた。
これは・・・これは・・・えーと、これは・・・
ふきのとうの群生だった。
しかもまだ地面から僅かに蕾の先を出し始めたばかりの群生。
夥しい数のふきのとうが広い林の中一面に広がっていた。
そこにあることをすっかり忘れられているような手付かずの林。
完璧なフキノトウ!
どれぐらい掘り返していたのだろう。
そこには取りたいだけの、いや取りきれないフキノトウがあった。
夢中で取りつづけた。まるで取れば取るだけ昨夜の酔いつぶれが帳消しになるとでもいうように・・・
100以上のフキノトウを取った。
どこをどう歩いたかわからなかったから地図作成には時間がかかった。
地元の人に聞き聞きして次第に精度の高い地図を完成させ、遠い道を歩いて帰ってきた。
一階の広い部屋には昼食を終えたばかりの人たちが丸いテーブルを囲んで寛いでいる。
台所のカウンターにフキノトウの袋を置き、
「何を採ってきたんだか・・・」の目で女の子が近づいてくるのを目の端にとらえながら、
部屋を出て2階への階段を上がり始める。
「せんせぇーーっ!!!」大きな驚愕の上ずった声。
「これ見てください!これっ!!」
階段を上る速度が遅くなる。
なにやら皆がわさわさと寄ってくる気配。
これはすごいね。よくみつけたな。これならあのひとに送れるね。いやいやたいしたもんだ。
皆が庭に植樹しに出たのを機に荷物を持って階下に下りる。
部屋に残っていた初女さんに挨拶して出ようとするところへ
「私、送ってきます!」とボランティアの子が素早く軽自動車を回してくる。
彼女は完璧フキノトウにまだ興奮していて、その素晴らしさについて熱っぽく話し続けた。
バス停に着き、荷物を降ろし、軽いサヨナラの挨拶を交わし、車を発進させたが、すぐに停車し、しばらくの間があった後、運転席の窓から首を出し、
「よ!っ!ぱ!ら!い! は ダァーメッ!!!」
「フキノトウ、ありがとぉーーーっ!!!」
急発進して砂埃をあげ車はあっという間に小さくなった。
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