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1.最近日本の新聞で、
「ウイグルでは一貫して中国(戦前までは中華民国・戦後は中共)からの独立運動が行なわれてきた」、「中国刑務所でのウイグル人に対する拷問はひどいものだ」、「ウイグル人は中国に支配されるようになってから貧しい暮らしに落とされ虐げられている」
といった類の話が多くなっている。

これは本当のことなのか?実はわたしはこうした話の種本を見つけることが出来た。それが表題の
「中国を追われたウイグル人」
(水谷尚子/2007/文春新書;初出は「諸君!」へ2006年5月号)
である。著者は中央大学講師(近現代日中関係史専門)をされている。

1.ところが私はこの本を読んであっと驚いたのである。

これまでの中国研究者は、文献に基づく研究は盛んにされていたが、中国人生き証人から直かに丹念に相手の気持ちの中に飛び込み、その核心の話を聞きだす努力はさほど払われなかった傾向があったといわれている。水谷氏は誰にでも親しまれる優れた人間性もお持ちなのであろうが、直かに話を聞きだす手法の研究を嘗てない段階にまで高めることに成功された研究者であるといわれている。大いなる期待を持ちつつご本を読ませて頂いた。

処がである:
まず本のカバーをあけるとカバーの裏側に次のように記されている。

「中国を追われたウイグル人
−亡命者が語る政治弾圧
血も凍る拷問と虐殺の数々。核実験場にされるウイグル自治区。国内外で荒れくるう中国の少数民族弾圧のすさまじい実態を、命がけで亡命した者たちから聞き出した、戦慄の記録」。

これはすごいことだと誰でも考えるであろう。処がである。

「ウイグル人亡命者の口述史を纏める作業は、まるで平均台の上を歩かされているような感覚である。彼らの「語り」は、傍証となる資料を探すことがほぼ不可能で、客観的検証が非常に難しい。執筆時は常に、証言者の「語り」が本当に信頼に足るものなのか、自分自身が記している内容が正しいのかどうか、自問し続けている状態だった。だが、たとえ亡命者たちの「語り」の中に「語りたくない部分」があったとしても、それでもなお彼らの語れる部分に耳を傾け、彼らと痛みを分かち、それを活字に残しておきたいと思った」(同書「序にかえて」p.10)。

これではこの本に書かれていることが真実かどうか、読者には全然分からない。

さらに、
「確かに、東トルキスタン問題の取材は難しい。・・しかし、どちらの言い分が正しいかはともかく、自由社会のメディアは、小さき声も丁寧に拾いあげ、記録する努力をすべきだと、筆者は強く思っている」(同書p.91)。

実は現在、日本では圧倒的に一方の側の声だけが流されている。それは中国側の声ではない。ウイグル亡命者の声だけが一方的に流されているのである。この本の中でも殆んど一方的にウイグル人亡命者の声だけが流されている。

つまり水谷氏が言っていることは、一方の側の主張だけを一方的に流す、しかも全然証拠もなく、客観的裏づけがなくても流すことは許される、それが自分の信条だということなのである。

如何なる誹謗・中傷も許されるのだという無茶苦茶な考え方が果たして許されるものだろうか?

しかも、
「中国の近現代史や日中関係を専門とする筆者が、専門外の「新疆の民族問題」に興味を抱くようになったのは(云々)・・」
(同書「おわりに」p.201)

とあるように、新疆ウイグル問題は氏の「専門外」であった。

ところがよく様々な月刊誌などに登場されて櫻井よしこ氏等と対談されているが、まるで見てきたかのようにウイグルで大変なことが起きていると語られている。それを読む読者は、まさか氏が確信犯的週刊誌と同レベルの考えの方だとは思わず、まともな研究者であると信じ、またそうした肩書きも有るから、氏の言われることが真実だと思ってしまうわけだ。このような誤魔化しがこの本には含まれている。だから読者の方はこの本が一種の「とんでも本」であることを知って頂きたい。

今日本の多くの新聞はこの程度の”研究者”を信じて一方的なことをどんどん書かれているが、その根底にあるものとは「傍証となる資料」や「客観的検証」でなく、「ストックホルム症候群」にかかった善意の甘い「証言を完全に信用する傾向のある」”研究者”の一方的思い込みだったのだ。

1.その1つの例を次に述べよう。もと中国十大富豪の1人である「世界ウイグル会議」議長のラビア・カーディルさんの話が第1章として纏められている。

ところが、このインタビューは2006年3月2日、3日、9日にあった(同書p.14)。そしてこのインタビューが「諸君!」に発表されたのは2006年5月号であるから、4月には発表されている。

つまり、インタビューをしてわずか1ヶ月程度で発表されているのだ。しかも内容が「とても素直にはうなづけないこと」だらけなのである。

であれば徹底的に裏を取る努力をされたのか?氏の言われていることは「傍証となる資料を探すことがほぼ不可能」、「客観的検証が非常に難しい」そしてわずか1ヶ月で発表である。日本のまともな研究者はもっと丁寧に研究されているだろうと私は信じている。

つまり氏の行なわれていることとは、研究者の肩書きを示しつつ、実は確信犯的週刊誌記者と同じことを行っているという一種の「詐術」である。

1.確かにこの本には私にとって容易には信じられないことが沢山盛り込まれている。その一例を示そう。

2005年3月、ラビアさんは米国へ亡命した。その8ヵ月後、
2005年11月、ラビアさんはホワイトハウス近くに「世界ウイグル会議」事務所を開いた。その2ヵ月後、
2006年1月5日、「自宅近くで、不自然な自動車事故に遭い」(同書p.14)、「夜七時頃。・・見通しが悪い道ではないのに、車が正面から衝突してきて、当たったのちにバックして、又衝突するという行為を三度繰り返しました。三度目の衝突直前に、秘書も私も車から逃げ出しました。私たちの車は大破・・私は肋骨を折り、首の骨にひびが入る重傷を負い・・男の乗っていた車はマイクロバスのような大型バン」(同書p.15-16)。

この事件についてラビアさんは、
「暗殺未遂ではないかとの噂が広まっているようですが、憶測でものは言えません」という(同書p.16)。

その2ヵ月後、
2006年3月、ラビアさんは水谷氏のインタビューを受けた。
「交通事故からまだ二ヶ月余りですが、事務所に来客が絶えることがなく、忙しいです。医者には安静を言われているのですが、仕事をせずにはいられない。こうして命があるのは神様の思し召しだと思います」(同p.16)
と語る(つづく)。

参考文献:
「中国を追われたウイグル人」
(水谷尚子/2007/文春新書)

参考記事:
書評「中国を追われたウイグル人」090809「1」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39750792.html
書評「中国を追われたウイグル人」090809「2」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39752811.html
(エッセー)ウイグルの針刺し事件を考える090909
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「3」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39942413.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「1」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-1」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40044904.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「2」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-2」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40044905.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「3」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-3」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40084645.html

それ以外の参考記事は下記のとおり:
ウイグル暴動関連重要記事目次
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39719208.html
旧「政治」分野記事
旧「政治」分野記事目次「1」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/43262016.html
旧「政治」分野記事目次「2」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/43262120.html
旧「政治」分野記事目次「3」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/43262225.html

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