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日本一のHERO俳優 【宮内洋】 出演作品エピソードガイド&各種レポート

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(観劇:4日昼・夜/21日昼・夜)
 
【 作品データ 】
演出/吉村ゆう 原案/石田多重 脚本/布勢博一 音楽/大島ミチル 舞台監督/梅澤秀次 出演/中村美津子、川野太郎、二宮さよ子、曾我廼家寛太郎、水澤心吾、宮内洋、他
 
【 STORY 】
 時は明治三十九年の春。丹後の豪商野村家の座敷では、野村家の長女・初子(二宮さよ子)と若狭湾の綱元・中井家の長男・吾郎(川野太郎)との見合いが行われていた。だが吾郎は初子の美しさより初子の世話をする係女中のゆき(中村美律子)のかいがいしさに惹かれ、この縁談成立と周囲が盛り上がる中、酒の勢いも手伝って話を破棄したいと言い出す。教養も美しさも兼ね備えている自分を差し置いて貧しい小作農家の娘を選んだ吾郎を激しく憎悪する初子。それは逆恨みとなりゆきへの辛い仕打ちとなって現れる。一方、父親の逆鱗に触れ家を勘当された吾郎はその身ひとつでゆきを迎えに来る。戸惑いながらも吾郎の深い愛を知ったゆきは、吾郎のためだけに生きる決心をする。
 
◆第一幕 第一場/野村家の座敷
 緞帳が上がり始めると、調子のいいお囃子が聞こえて来る。初子と吾郎のお見合いの席でひょっとこのお面を被りドジョウすくいを踊っているのは仲人の増田武四郎(宮内洋)。年頃の二人を引き合わせた増田の、堅苦しいのは抜きにして場を和ませようという計らいなのだろうが、紋付きの羽織袴に酒が入ってのドジョウすくいじゃ、見合いと言うよりただの宴会(^^;おまけに頬に入れた朱色の目立つこと(笑)。赤ら顔に足元もおぼつかない千鳥足で初子と吾郎の仲を冷やかす様は完全にただの酔っ払いオヤジと化している。あ、この役ってもしかして宮内洋の地でやってる?(爆)
 
 ひとつひとつの挙動がやたら大袈裟で、そのコミカルな言動でムードメーカーとなっている増田。その詳しい家柄や家業は不明だが地元の名士だと思われる。豪商・野村家の長女と、網元で水産会社としても成長を続ける「兼善」の跡取息子との縁談を取りまとめるほどの人望があり世話好きだが、周囲に気を使う細やかな一面も持ち合わせている。例えば初子に歌を勧めるも「ローレライ」を歌うと言われ、ドイツ語と英語の区別もつかないけどとりあえず囃してみたり、吾郎に社交ダンスを薦める初子に合わせ慣れないダンスの真似事をしてみたり。場を盛り上げるためには捨て身で何でもやるという、いわゆる宴会部長タイプ。よくいるよね、こういう人(^^;
 
 公演が始まった当初は、その役柄に対してハジケっぷりが足りずやや物足りない印象だった宮内洋。だが後半に入ると宴会じゃなくて(笑)見合いの場面の雰囲気がぐっと良くなった。台詞の間合いが若干テンポアップし、掛け合いの台詞がスムーズに流れるようになって細かい台詞が随分と聞き取りやすくなっている。芝居にも余裕が出たのか、元々大袈裟だった挙動が更に勢い付きハジケっぷりも増して、両家を取りまとめる仲人としての「立場」と舞台での宮内の「存在感」がようやく一致した。初見と比較すると声の通りや伸びがかなり改善されているので、やっぱり年明けは多少風邪っぽかったのかも知れない。最も本人は否定していたようだが(^^;
 
◆第二幕 第三場/みなと屋
 お見合い縁談破棄騒動から8年余りが過ぎていた。一度は駆け落ちをしたものの、吾郎の父親に捕まり生木を裂かれるように引き離された吾郎とゆきは、互いを思いながらもそれぞれの道を歩んでいた。野村家の主人の言いつけで無愛想な樵の元へ嫁いだゆきは、ひょんな事からゆきと別れた後に吾郎が芸者に産ませた赤ん坊がいる事を知って、手元に引き取り「のぶ」と名付け育てていた。
 
 一方、縁談は破談にされるわ係女中は縁談相手と駆け落ちするわで、良家のお嬢様のプライドをズタズタにされた初子は、同じく兄の恋愛騒動の煽りを食らって人生の方向性を見誤った吾郎の弟・英次(来須修二)と組んで悪徳高利貸し業を営み暴利をむさぼっていた。ある日、初子と英次が借金の形に親から遊郭に身売りされる少女を引き取りにみなと屋へとやって来た。そこへみなと屋の奥座敷で初子の兄・孝助(水澤心吾)と仕事の打ち合わせをしていた増田が登場する。薄い灰色っぽい着物に茶色(小豆色なのかな?照明の加減で色がよく分からない(^^;)の羽織を着た増田は、ゆっくりと茶色の扇子を扇ぎ初子たちの会話を黙って聞いている。
 
 吾郎が来年の府議会議員に立候補するらしいとの噂を聞いた初子が増田にツッコむと「まだはっきり決まってはいないが、そろそろいいんじゃないかと思っている」とほのめかす。この様子だと増田が先頭きって吾郎の立候補を応援してる感じがするので、ひょっとして後援会の会長にでもなったのかも知れない。一度は家を追い出された吾郎だったが、ゆきと別れた見返りに家業を継ぐ事を許されて今では「兼善」の若き社長となっていた。だが、失恋の痛手から芸者に入れ揚げ子供まで作ってしまう吾郎。そんな吾郎を案じた増田は芸者に身を引かせ、生まれた赤ん坊は増田に預けられて、今ではゆきが育てている。そういう経緯を全て知っていても増田は吾郎を信頼し、高く評価しているらしい。
 
 どうにかして吾郎の尻尾を掴もうとしている初子は、噂で聞いた吾郎の隠し子について増田に追求するが、増田は一笑に伏し相手にしない。この辺りの毅然とした態度やすっくとまっすぐな立ち姿はとても美しい。これが本当にドジョウすくいを踊っていたあの酔っ払いオヤジ(^^;かと思うほどで(笑)、口数こそ少ないが立ち姿だけでその存在感は充分。初子に吾郎の隠し子について「とことん調べますえ」と言われ、一瞬ハッとして振り向く仕草は、酔っ払いオヤジなどではなく完全に(以下省略(^^;)。
 
 そこへ幼い娘のぶを連れたゆきが野菜の行商にやって来る。思いがけない初子との再会に驚くゆき。今でもゆきを下僕のように扱う初子の相変わらずの横暴さに兄の孝助は憤りを感じるが、生活に追われ娘を育てる事に必死なゆきには、初子など気にしている暇はなかった。
 
 帰り際、のぶの頭をなぜる増田はそれまでの落ち着いた語り口とは一転、まるで赤ん坊に「いないいないばあ」をやるように1オクターブ高い声でのぶをあやす。一時的とは言え手元に置いた事のある娘だ。親しみを感じるのだろうが、ケラケラと笑うのぶを見て「笑うた笑うた」と好々爺のように喜ぶ増田はまるで孫をあやしてるみたいだ(^^;つか、7歳にもなってあの程度で笑うか?余程面白い顔をしたとかじゃないと・・・あ、そうか。きっと客席から見えないように面白い顔をしたのかも、と初見の時は脳内補完した(笑)。だが三度目に観た時には増田の台詞が変わっていた。「笑うた」ではなく「笑うてくれた」になっていた。つまり「大して面白くもないのにのぶちゃんが笑ってくれた」という意味だろう。これなら納得(爆)。

◆第二幕 第四場/望洋亭の座敷
 孝助の資金援助でゆきはのぶを女学校へ進学させる事が出来た。だが関東大震災で横浜の事務所を失った孝助と野村家は没落する。売りに出された野村の屋敷を買い取り料亭にしたゆきは、女将としてその手腕を発揮していた。その頃、府議会議員になっていた吾郎の妻が亡くなり、二人の間に子供がいなかったため養子縁組の話が持ち上がる。その際に増田が、どうせなら血のつながった実子の方がいいのではないかと、ゆきがのぶを育てている事を吾郎に打ち明ける。ゆきの人生を狂わせてしまったと罪の意識を感じていた吾郎、そのゆきが自分の子供を育てていると知った吾郎は訳も分からずゆきの元へと駆け付ける。吾郎には内緒にするとゆきと約束していた増田は狼狽し、吾郎を追って花道から登場。
 
 「言わないって約束したのに」と増田の「裏切り」を嘆くゆきと「後で恩を売るつもりか?」と一方的にゆきを責める吾郎の間に入り必死で言い訳をする増田。だがこの時点ではもう、吾郎の方が完全に主導権を握っていて立場が強い。府議会議員のセンセイだから仕方ないか。挙句の果てに「すまんが席をはずしてくれ」と命令口調で言われた増田は、目線を二人に向けたままゆっくりと後ずさる。そして数歩歩いて立ち止まり、ちょっと後ろを気にするような素振りを見せるが、やがてすぐに思い直したように歩き去る。立ち止まって後ろを気にするような素振りから歩き去るまでの一連の動きはキレがあり、その身のこなしは、情けない声で「吾郎は〜ん」と追いかけていた増田とはエラい違いだ。やっぱりヒーローしている(笑)。
 
 正直、これほど難しい役を観たのは初めてかも知れない、と思った。増田のキャラクターや登場人物たちとの関係、バックボーンが最後の最後までついに掴めなかったから。増田は不思議なほど本筋に絡まない役だ。本筋に絡まない、要するに増田がいなくても物語は転がるのだ。それならば何故存在するのか。そう考えて行った時、増田は吾郎が行動を起こすきっかけを作っている、ゆきに続く最重要人物の一人だという事に気付いた。ある意味、ゆきの人生を変えてしまったのが吾郎なら、吾郎の人生を変えたのはゆきではなくこの増田ではないだろうか。増田が設定した見合いの席は吾郎が密かに心惹かれていたゆきを見つけ出す機会となり、吾郎に娘の存在を教えたために吾郎はゆきの本当の気持ちを知る事となる。もしかしたら吾郎が勘当を解かれ家業を継ぐ事になったのも増田の後押しがあったのかも知れないし、芸者と別れさせ赤ん坊を取り上げたのも吾郎の将来を思っての事だろう。

 だが、残念な事に、増田が何故そうまでして吾郎をバックアップするのかが物語の中からは掴みきれない。家族ぐるみの付き合いなのか仕事絡みなのか、金銭的な利害関係なのか。増田から見れば吾郎はまだまだ青二才だろうし、何かしらのメリットがなければ動かないだろうと思われるのだが。つまり増田の性格や背後関係がこの脚本からは見えて来ないのだ。もちろん「宴会部長」も増田の性格の一面であろうし、見た目が「ええとこの旦那」風(一説には夏目漱石という噂も(^^;)なのもそうだろう。孝助と上海貿易の打ち合わせをしている処を見るとそういう貿易関係の事業をやっているのかも知れないし、まだ若い吾郎を府会議員に当選させるためにはそれなりの金と人脈がないと無理だ。だがこれらはあくまでも筆者の想像に過ぎない。物語にはそういう表現は全く出て来ないので「本当にそういう役だったのかどうか」が分からない。だからこの脚本でこの演技、この役作りがGoodなのかBetterなのかも判断つかない(Bestは有り得ないから)のは非常に残念だ。もっと掘り下げて見てみたいと思わせる役だった。  (つづく)

['06/1/27 up date]

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