写真版ー花園だより

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読書・映画・観劇日記

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虚構の中に隠された心のヒダを自分に重ねて

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共通する原風景

 宮本輝の「河」シリーズの中でも、特に共感を覚える作品が、この「泥の河」です。それは、私が作者と同年代であるとともに、大阪生まれと言うことが深く関係しています。主人公信雄はまさに私自身の子ども時代そのものです。
 近鉄電車の当時の終点駅「上本町」から、谷町を通って千日前・高島屋前に行く大阪市電は、何か国民的な祝い事があると電飾やデコレーションで飾られた「花電車」を走らせ、それをよく父と見に行ったものです。(その電車の写真があればいいのですがありませんので、当時走っていた普通の市電の写真を掲載します。)
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 この市電で千日前まで行き昼食をとるのですが、「蓬莱(今の551)」の豚まんのことが多く、「北極」のバナナの実が入ったアイスキャンデーを食べさせてもらうこともありました。時に「いずもや」の金糸どんぶり(鰻と卵の薄焼きを細く切ったものをご飯の上にのせたれをかけたもの)を食べることもあったのですが、それは戎橋のグリコの電飾看板前の、道頓堀川に浮かんだ船屋にあったのです。戎橋の北詰の階段を下りて入る船屋の窓側で、まさに「泥の河」にふさわしい流れを見つめながら、それでも滅多と見ることのできない河の流れに喜びながら、金糸どんぶりを食べたものです。この河は、満潮時は川下から川上へと流れが変わり、子ども心に不思議な光景に見えたのを覚えています。
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 作品におけるこうした河の流れやポンポン船の描写、喜一の住む船の家といずもやの重なり、二人が出かけた祭りの夜店、信雄の甘酸っぱい恋心、見てはならぬものを見てしまったときの少年の動揺と説明のつかない涙・・・、すべてが自分の少年時代を彷彿とさせる内容です。
 昭和20年代から30年代にかけての高度成長期を前にした古き良き大阪の片鱗を、改めて思い出させる作品でした。

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