日々のこと

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舌の上の快楽

甘く、柔らかな舌触りに満たされる。
チョコレートで空腹を満たす日々。

つれあいが、会社の人からチョコレートを貰ってきた。
マルコリーニのトリュフに、
コージコーナーのプラリネに、
手作りのチョコレートケーキ。
...これは先日、知り合いになった会社の女の人から私に。
そして、ゴディバの大きな箱。

おいおい、義理にしてはすごくない?
かなり大きな箱なんですけれど。
絶対、義理ではないサイズですよ。
脳裏に不安がよぎる。
ライバル出現。

いくらでも受けて立とう。
妻という立場に胡座をかく女ではない。
正々堂々と、戦いましょう。
そっちがその気なら。

好きという気持ちを、
私の男だから、夫だから我慢しろなんて言いたくない。
正々堂々と恋をして、
私が負けたら、それはそれで仕方がない。

既婚者だから、と遠慮して欲しくない。
気持ちを受け入れる、入れないは、つれあいの問題で、
好きな気持ちは、誰にも邪魔することができないことなのだから。
好きな気持ちは、彼女も、妻である私も同じ。
どちらかが正しくて、どちらかが間違っているなんてない。
でも、まずは腹ごしらえ。
と私はチョコレートを頬張った。

「それは、お客さんからだよ。」
つれあいが呟く。
ゴディバの箱を指して。
「そう。」
と私は素っ気なく答えたが、
拍子抜けしたのか、安心したせいなのか、
舌の上に溶けていく、甘い固まりに頬が緩んだ。

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あんたが嫌いだ。
バレンタイン。
私はこの日があまり、好きではない。
あまりどころか、かなり。

一方通行の贈り物なんて、何だか虚しい。
「女」ということが理由で、チョコレートを貰えないないことが悔しい。
贈り物がチョコレートというのも、気に入らない。
だって、男の人は
可愛い形のチョコレートも、
絵の入ったチョコレートも、
綺麗な包装紙も、リボンも箱も、あまり興味がないんでしょ?
結局興味があるのは、中身ですらなく
「貰えるか」「貰えないか」なんでしょ?

プレゼントを贈るのは大好きなのに、
この日だけは、この贈り物だけは、気がのらない。
何だか義務のようで、心から楽しめない。
昔から。

なのに、今年は「あげたい男」がいた。
小学校6年生以来、そんな男は現れなかったのに。
彼に恋をしているとか、していないとか、
私の左薬指に外せない指輪があるとか、
そういうものは置いておいて、
どうしてなのか、そう思ってしまったのだ。
なのに
「そんなものに興味はない。」
と一言で振られてしまった。

「お前のことは信じない。」
と言いたくなる彼の気持ちはわからないでもないが、
彼は私を、自分の懐で測り過ぎる。
そのくせに
「お前のことは、わかっている。」
なんて言うことも腹立たしい。
それにそれって、矛盾しているような気がする。

確かに、3年間のあなたの努力は報われなかったですよ。
私は気のある素振りばかりして、結局元彼でも、あなたでもなく、
全く別の男を選びましたよ。
しかも、寝耳に水のような感じで登場した男を。
だけどね、それには理由があるんです。
あなたが自分の経験から想像しただろう以上の「現実」が。
と言っても、言い訳にしか聞こえないだろうけれど。

3年間、私は悩み続けたし、
気のある素振りどころか気があったし、
別の男を選んだのは、私ですら寝耳に水な恋だったのですよ。
10歳年上の上司なんて。
それに、自分の仕事すら安定していないあなたに
私の諸事情を背負わせるのは、ちょっと大変だろう、と
私は私で下らない想像をしてしまった。
自分の懐であなたを測って。

いつも上司から
「お前の懐で、相手の懐を測るな。」と言われていたのに。
仕事も恋も、上手くいかない。

久しぶりの失恋だ。
高校3年生の夏以来。
久しぶりに髪の色を変え、パーマをかけた。
もちろん、失恋したから。

もうちょっと時が経って、
二人の間の甘い記憶が消え去ってしまったら、
ちゃんと私の言い訳を聞いて欲しい。
恋を失うのは平気だけれど、
大切な人を失うのは哀しすぎる。
3年間の恋心より、15年間の友情の方が私は愛おしい。

好きな人がいる。
夫の会社の人で、私と同い年の人。
近々結婚するらしい。
けれど、私は好きになってしまったのだ。
たった一日、過ごしただけで。

よく喋る人だな、と思った。
背が高くて、ほんの少し肉付きが良い。
「きつい人って思われるんです。」
と本人は言ったけれど、私には穏やかで柔らかそうな人に見えた。
それでいて、とてもはっきりと言葉を使う。
「課長の奥さん」
と呼ばれることだけが、ほんの少し、くすぐったい。

よく喋るのに、
....夫に言わせると「ほっとけば何時間でも話している」
それがけたたましくないのは、きっと育ちが良いからだと思う。
特別上品なわけでもないのだけれど、
言葉に粗悪さや、雑さがなく、とても丁寧だ。

「ヴィトンは柄が嫌いなんです。」
ヴィトン以外のロゴの入った、小さな鞄を触りながら言った。
その言葉が気に入った。
私もいつも同じことを思っていたから。
好きなブランドの話も、香水の話も、恋の話も、
とても素直に話せた。
「課長には言いませんよ。」
という言葉が、とても悪戯で、私をドキドキさせる。

「どういうところがですか?」
と笑顔を見せる。
「私、あなたが好きですよ。」
という私の告白に。
きっと、そういうところ。
「今度、ご自宅に遊びに行っても良いですか?」
という積極的なところも。
彼女のそんな部分が、私の心をノックした。

私は消極的なタイプなので、ちょっと強引ぐらいがちょうど良い。
強引にやってもらわないと、
恋はできるけれど、友情はできないのだ。
手の掛かる女で申し訳ないのだけれど。
好きな男の人には積極的なのに、女の人には消極的。

結婚してからは夫がそばにいる。
その前は男の人ばかりの会社で働いていたし、
学生の頃は、どっぷりと恋愛をしていたので、
やはり男の人とばかり過ごしていた。
なのに、最近気がついた。
女の人と一緒にいるのは、楽しい。

私が持たない小物。
選ばない洋服、できない髪型、しない恋。
彼女達は私を刺激する。
あんな風になりたい、やってみたい、と思わせる。

「どんな下着が好きですか?」
から始まって、
胸の大きさや脂肪吸引、ネイルからクォン.サンウまで。
男の人とは味わえない快楽を、女の人とは貪ってしまう。
女同士って、本当に気持が良い。
もちろん、男の人とも気持ちが良いのだけれど。

男は女に求めることが好きな生き物だと思っていた。
彼と出会うまでは。

髪はショートカットがいい。
痩せろ。
この香水を付けろ。
その仕事は辞めろ。
趣味を持て。

過去に色々求められても、何一つ答えてこなかった癖に、
何も求めない彼といると、ついつい言ってしまう。

ねぇ、何か求めてよ。

彼の答えは「そのままで良いよ。」で、
私は満足しながらも、少し物足りない。

太ったら?
「いいよ。」
病気になったら?
「何も変らないよ。」
浮気をしたら?
「哀しいけれど、嫌いになれないよ。」
服装が変ったら?
「何の問題もない。」
老けたら?
「....。それは嫌だ。」

彼の要求は、誰よりも難しかった。

老いは生を受けた者の宿命なのに、
どんな人にも、唯一平等に与えられたものなのに、
それに逆らえと言うのか。

妻が女を怠り、それを見て夫は妻に女を求めなくなる。
夫が妻に女を求めなくなり、妻は女でいることを怠る。
どちらが先かわからないのだけれど、よくあることで。

努力はします。
だからずっと私を見て、私に気が付いて、私を褒めて、
私に何かを求めてね。

3時33分
時計を見ると、3が3つ並んでいた。
眠れない。
その理由は、ここに昔の女がいるからだ。

同じ部屋、同じベッドに、忘れてしまっていた昔の女が横たわっている。
そして私と同じように眠れず、私を見ている。
今の女である私を凝視し、私に昔を思い出させる。
もう捨ててしまった、忘れてしまっていたはずの感覚。

週末を利用して、夫の会社の人達とスキーに来ている。
珍しく泊まりで。

「課長の奥様」
が私だと気付かないまま、無言で過ごしてしまった。
でもそう呼ぶ彼女の方も、実は私と同じ歳で、
しかも私と彼は社内恋愛だったので、
元々私は、彼女にとって「○○主任」や「○○マネージャー」だったのだ。
くすぐったいこと、この上無し。

彼女とは違う支店、部署だったので、私はその存在を知らなかった。
なのに、彼女は私を知っている。
その理由は、私がわりと優秀な社員で、
しかも女性社員は全支店でも数えるほどしかいなかったからだ。
「あの頃、トップ3といえば...。」
「○○さんとの事で、電話をしたんですよ。」
なんて、もう忘れてしまっていたことを思い出される。

仕事に厳しく、同期のトップで、
上司にも、社員にも評価されていた女。
仕事が一番で、恋も自分も犠牲にしてきた女。
それが、昔の私。
そのおかげで病気にもなったし、恋も、恋人との未来も失った。
おまけに社内での事件に事故のように巻き込まれ、深く傷付いた。
嫌いではないが、もう捨ててしまった、忘れていた私が、
彼女の前には立っている。

仕事を辞め、結婚して、
白紙になったと思っていた。
私の中で。
何もかも、新しい自分だと。
でも、そうではないらしい。
私は課長の奥さんの前に、優秀な社員だった○○さんなのだ。
いつまでも。

昔の女と、今の女が葛藤している。
甘やかされ、我が儘を受け入れられ、何もしないで得る今の女。
厳しい中に放り込まれ、何かを成して得てきた昔の女。

夫は甘い。
ひたすら優しく、すべてを受け入れてくれる。
昔の私を知っていて。
私はそれを幸せに感じる。
今まで味わったことのない、穏やかな日々。
なのに、心のどこかで「これでいいのか。」と問いかける。

地位や名誉が欲しいのではなく、
夫にとって、こんな奥さんでいいのか、と思う。
夫婦って、もっと苦しみをわけ、
支え合うものだと思っていた。
なのに私達は、喧嘩すらしたことがない。
彼は私に何かを求めたりもしない。
昔の私に戻ったりしないように、今の私を甘やかす。

「お前はいつも60%とか70%とか幸せで、
 我が儘を言ったり、それを受け入れてもらえると100%幸せなんだ。」
と友人が言った。
私のことをわかっている、と言った男。
彼は私を知らなさ過ぎる。

友人の言葉通りなら、私を100%幸せにできるのはつれあいだ。
だけど私には、
夫といるからこそ感じる不安や、思い出してしまう過去がある。

友人は私を、女を甘く見ている。
女は単純だけれど、馬鹿な生き物ではない。
それどころか、考え深い生き物なのだ。

「贅沢な悩みだね。」
と夫はため息をつく。
「そうね。」
100%幸福を与えてくれる男の腕の中で、私は様々な事を考える。
涙が滲み、昔の女が顔を出す。
彼女は今の私を守るように、昔は昔に過ぎないと呟く。
でも、私と彼女は同じ姿で同じ格好で、同じ声で、
私は今と昔を混濁させてしまう。

あなたのこと嫌いではないのよ。
それどころか、私は好きなのよ。

昔の私は、知っているわ、と答える。
でも、私は今のあなたが好きなのよ。
私に続く、あなたが。
そして、あなたに続く私が。

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