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2018年10月25日
国立新美術館の東山魁夷展には5点の白馬の作品が展示してあります。
緑響く(1982年)
水辺の朝
草青む
白馬の森
春を呼ぶ丘
昭和47(1972)年に、画面に白馬がひそかに描かれている習作を含む18点の展覧会が開かれました。
これが「白い馬の見える風景」と言う連作シリーズです。
5点の作品はこの連作シリーズに含まれた作品です。
ところが連作シリーズの中心的作品であった「緑響く」が行く方不明になり、パリで同じ展覧会を開催するに際して、1982年に再制作された作品が展示されました。
上記掲載の作品は再制作された作品です。
1972年の「緑響く」はこんな感じでした。
「緑響く」はテレビCMにも登場して話題となった作品です。
農業用の溜池としてつくられた御射鹿池がモチーフとなっています。
その幻想的な美しさから多くのカメラマンが撮影に訪れるそうです。
この作品について東山魁夷さんは次のように言っています。
一頭の白い馬が緑の樹々に覆われた山裾の池畔に現れ、画面を右から左へと歩いて消え去った。
そんな空想が私の心のなかに浮かびました。
私はその時、なんとなくモーツァルトのピアノ協奏曲の第二楽章の旋律が響いているのを感じました。
おだやかで、控えめながちな主題がまず、ピアノの独奏で奏でられ、深い底から立ち昇る嘆きとも祈りとも感じられるオーケストラの調べが慰めるようにそれに答えます。
白い馬はピアノの旋律で、木々の茂る背景はオーケストラです。
モーツァルトのピアノ協奏曲は第23番 K488ですが、You Tubeで聴けるので鑑賞の足しにしてください。
連作シリーズ「白い馬の見える風景」の他の13の作品です。
芒野(習作)
綿雲(習作)
曠野(習作)
原野に一羽の鶴が降り立った すぐそれは白馬の姿に変わった
渚の白馬
荒寥(習作)
森装う
風吹く浜
樹霊(習作)
夕明り
湖澄む
若葉の季節
麦秋
早春の丘(習作)
「白い馬の見える風景」について作者の言葉があります。
ある時、一頭の白い馬が、私の風景の中に、ためらいながら、小さく姿を見せた。
するとその年(1972)に描いた18点の風景(その中には習作もあるが)の全てに、小さな白い馬が現れたのである。
白い馬は、たとえば協奏曲ならば、独奏楽器による主題であり、その変奏である。
協奏する相手のオーケストラは、ここでは風景である。
白い馬は風景の中を、自由に歩き、佇み、緩やかに走る。
しかし、いつも、ひそやかに遠くの方に見える場合が多く、決して、前面に大きく現われることはない。
この小さな馬の出現は、私にとって思いがけないことである。
一切の点景を排した風景を描き続けてきた私であるし、人もそれを私の特徴と思っているに違いない。
また白い馬について以下のように語っています。
この白い馬はいったい何を表すのかと、よく、人に聞かれる。
私はその度に、見る人の心に任せたいとのみ答えてきた。
それは、私の心に内在しているものの象徴であることは間違いない。
心の祈りとでもいうべきものであろうか。
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