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2019年5月23日
三菱一号館美術館でラスキン生誕200年記念ラファエロ前派の軌跡展を観てきました。
三菱一号館美術館
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中庭
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イギリスヴィクトリア朝の中葉、ロイヤル・アカデミー美術学校に通うミレイ、ハント、ロセッティの3人の画家が意気投合し、画家・美術評論家・パトロンのジョン・ラスキンへの傾倒と、「卑近」なアカデミズムへの反発と「遠望」として中世への憧れを強めて行きました。
アカデミズムとはラファエロ・サンツィオや初代ロイヤル・アカデミー会長のジョシュア・レイノルズの作品などを良いものとして考える一派です。
展示会場にはありませんでしたが、
ラファエロの作品
キリストの変容
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アレキサンドリアの聖カタリナ
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レイノルズの作品
無垢なる年頃
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ミレイ、ハント、ロセッティにロセッティの弟、コリンソン、ウェルナー、スティーヴンスが加わり、7人で「ラファエロ前派兄弟団」を結成しました。
ラファエロ前派は「ラファエロ前派兄弟団」とその周辺にいた画家達やロセッティと師弟関係にあったバーン=ジョーンズ、ラスキンから影響を受けたウイリアム・モリスも含まれます。

この展覧会では美術評論家ジョン・ラスキンの生誕200周年に当たり、「現代画家論」で評価したターナーの作品、ラスキン自身の作品、それとラファエロ前派の作品を展示していました。
ターナー
エーレンブライトシュタトン
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ジョン・ラスキン
木の習作
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ストラスブール大聖堂の塔
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ばらの習作
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 ラスキンは自分でも描くことができる美術評論家だったのです。

「画家の妻たち」の作者澤地久枝はこう書いています。
「モデルが女性の職業として確立されるまで、画家とモデルの関係には微妙な要素が絡まりがちであったと思われる。アトリエという一種の密室、長い時間、緊張の持続と解放、そしてその成果についてのよろこびの共有--
そこから愛人もしくは夫婦へと人生が変って行った例は数多く知られている。そして、モデルであり妻もしくは愛人であることの幸福な完結はかなりの難事業である。悲劇も生まれた。
モデルとして、画家の注文に沿って様々なポーズを撮るとしても、ある一線を犯されることはないという「契約」が生まれる最初のケース。それが、ラファエロ前派と呼ばれるビクトリア女王時代のイギリスの画家と、彼らのためにポーズしたモデルたちの例ではないだろうか。」

神曲のダンテと同じ名前を持つダンテ・ゲイブリュル・ロセッティは「神曲」を題材としてエリザベス・エレノア・シダルをモデルとして描いています。
ダンテが見たラルケとレアの幻影のための習作
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シダルは夫人帽子店でお針子として働いていた時モデルとして見出されました。
シダルはロセッティだけでなく、ラファエロ前派のジョン・エヴァレット・ミレイ、ウルター・デ・ヴァレル、ホフマン・ハントのためにもポーズをとっています。
特にミレイの「オフェーリア」では浴槽に裾までの衣装を付けて横たわり、このポーズを5時間続けたため、冷たく冷えて肺炎になり1ヶ月医師にかかり、シダルの父親が150ポンド請求訴訟を起こしたというエピソードは有名です。
展示されていませんでしたが、ミレイの「オフェーリア」です。
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ロセッティはシダルの中に「神曲」のベアトリーチェを見出しモデルとして独占し、務めまで辞めさせました。
二人は婚約しましたが、長い間そのままの関係で、病弱だったシダルは結婚の約束がどうなるのか心配で麻薬中毒になってしまいます。
経済的にも楽でなく、それほど幸せではなかったようです。
シダルが余命いくばくもなく、結婚生活は長く続かないと考えて、ロセッティはシダルと挙式に踏み切ります。
結婚式はダンテの誕生日だったそうです。
結婚生活は僅か2年で、シダルがアヘンを飲んで死亡してしまいました。
不幸な人生だったシダルですが、絵の才能をジョン・ラスキンに認められ年額150ポンドを提供するという申し出を受けたこともありました。
またラスキンの父が彼女に会い伯爵夫人としても通用する女性と称賛されたという話はよく知られています。
展覧会には無かったのですが、シダルの作品を2点紹介します。
レディー・クレア
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クラーフ・ソンダース
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ロセッティより6歳年下のウイリアム・モリスは裕福な家庭の生まれで、モデルだったジェイン・バーデンと結婚しています。
バーデンは美しい女性だったと言われ、シダルと同じ貧しい家庭の出身ながら知性と気品も備わった女性だったと言うことです。
1年遅れで結婚したシダルとは家族ぐるみで付き合っていたそうです。
ウイリアム・モリスの作品
アルテミス
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エアの住人の物語
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知るだの亡きあとはロセッティとジェイン・モリスは半ば公然の親密な間柄になっています。

結婚以前にモデルをしていた時のロセッティの
王妃の私室のランスロット卿
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結婚後にジェイン・モリスをモデルにした作品
窓辺の女性
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水辺の柳のための習作
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記憶の女性
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モデルのファニ・コンフォースとは画家のG.P.ボイスとロセッティの間で三角関係になっています。
ファニ・コンフォースをモデルとしたロセッティの作品
G.P.ボイスとファニ・コンフォース
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この時期は3人の間は友好的だったようです。

ファニ・コンフォース
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この作品は展示されていません。

この展覧会の目玉はロセッティの魔性のヴィーナスでしょう。
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この作品は擁護者であるジョン・ラスキンから「粗悪」、「嫌悪を感じる」、「色彩の使い方が不適切」だと痛烈な批判を受けています。
その為ラスキンとロセッティの関係は決裂し、関係修復が試みられることなく、疎遠となってしまいました。
ラスキンの批判記事によると、瞳は「黄水晶のような淡い茶色」ではちみつ色の長いまつげと「黄褐色の髪」を持つという。
しかし作品のヴィーナスを見ると、瞳は「青みがかった緑色」であり、髪は赤毛です。
実はロセッティは以前に手掛けた作品を大々的に描き直すという「癖」がありました。
習作との相違点、モデルが異なる点などから、この作品は2回にわたって描き直したことを指摘する説があります。
つまりラスキンが「粗悪」、「嫌悪」を感じた作品は、今と大きく異なっていたことになります。

この展覧会には部屋ごと撮影フリーと言う場所がありました。
ロセッティの作品が多く展示されていて、魔性のヴィーナスも展示されていました。
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この部屋にはジョン・エヴァレット・ミレイの「滝」もありました。
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この作品の中の女性はジョン・ラスキンの妻エフィー・ラスキンです。
ミレイがエフィーを描いた作品
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 この作品は展示されていません。

ラスキンは自分の妻とミレイの間に芽生えた愛が最終的には情事へと変わっていくのを望んでいたというか、勧めさえしていたと言われています。
ラスキンはロリコン趣味的な処があり、当時師弟関係にあったローズ・ラ・トゥーシュに夢中でしたが、結局失恋してしまいます。
ラスキンはエフィーと離婚し、ミレイはエフィーと結婚しています。

ウイリアム・ホルマン・ハントの「甘美なる無為」
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本作品のモデルは最初アニー・ミラーでした。
アニー・ミラーはロセッティと付き合うようになり、ハントとアニー・ミラーの関係が破局を迎え、作品の制作は中断されました。
それから6年後にファニ・ウォーがモデルになり再び作品の制作が着手され、完成しました。
そしてハントはファニ・ウォーと結婚しました。
ファニ・ウォーは結婚後死別し、ハントは妹のエディス・ウォーと再婚しました。

ラファエロ前派の恋愛相関図はなかなか複雑で興味深いです。

繰り返しになりますが「アトリエという一種の密室、長い時間、緊張の持続と解放、そしてその成果の共有。そこから愛人もしくは夫婦へと人生変わっていった例は数多く知られている。」

ラスキンからイタリア旅行の支援を受けたバーン=ジョーンズはルネサンス美術を学んできました。
赦しの樹
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三美神
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ミケランジェロを思い出させます。

女性像は
少女の頭部習作
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女性の頭部
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ラファエロ前派の画家の中で、一番有名になったのはバーン=ジョーンズではないでしょうか。


こんな撮影スポットもありました。
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