2003年製作 ドイツ
原題:Das Wunder von Bern
監督:ゼーンケ・ヴォルトマン
脚本:ゼーンケ・ヴォルトマン、ロッフス・ハーン
音楽:マルセル・バルゾッティ
出演:
マチアス・ルバンスキー:ルーイ・クラムロート
リヒャルト・ルバンスキー:ペーター・ローマイヤー
クリスタ・ルバンスキー:ヨハンナ・ガストドロフ
ブルーノ・ルバンスキー:ミルコ・ラング
イングリット・ルバンスキー:ビルテ・ヴォルター
ヘルムート・ラーン:サーシャ・ゲーペル
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1954年の西ドイツ。
第2次大戦で出征した父がソ連の捕虜となって以来、ずっと母子家庭の中で育ってきた11才の少年マチアス(ルーイ・クラムロート)。
母クリスタ(ヨハンナ・ガストドロフ)がバーの店を営業し、兄ブルーノ(ミルコ・ラング)と姉イングリッド(ビルテ・ヴォルター)の4人で暮らしていた。
大のサッカー好きであるマチアスは、地元のサッカー選手ラーン(サーシャ・ゲーペル)に憧れ、彼を父のように慕っていた。
ラーンは鞄持ちをさせるマチアスに言う。
”お前はマスコットだ。お前がいれば勝てる。”
そんなある日、マチアスの父リヒャルト(ペーター・ローマイヤー)が、遂に家に帰ってくる。
けれども捕虜の心の傷を負ったリヒャルトは、戦後の環境と価値観になじめず、苛立ちと不満を募らせ、ようやく再会を果たした妻子との心の溝はいたずらに広がるばかり。
そんなおり、スイスのベルンでW杯サッカーが開催されることになり、ラーンもドイツの代表メンバーに選出される。
父と完全に不仲になってしまったマチアスはラーンを応援したい一心で、家出を試みるが、駅まで追いかけてきた父リヒャルトに連れ戻される。
リヒャルトは、恩給をもらえない社会を恨み、家族を自分の手で養えない情けなさを実感し、すさんでいたのだ。
マチアスはそんな父からベルトで叩かれるお仕置きを受ける。
それを見た妻クリスタは初めて夫を激しく非難した。
私と子供たちの気持ちが分らないの?
俺のせいか?
お前は何をした!
長男は口ばかりの赤だ。
娘は兵隊に色目。
下の子は家出だ。
原因はあなたよ!
強くなるよう鍛えてるだけだ。一人前に。
そうなの?
私がこの家族を養ってきたのよ。
バーで家計を支え、子供を育てたの。
それを引っかき回して、元通りにするの?
そんなことは・・・
教えてあげる。
(あなたが)戻るまで幸せだった。
でも(今は)子供たちが暗いの。
悲しく惨めで。
収容所に戻れと?
自分を哀れむばかりで、人のことも考えてよ。
みんながあなたの気持ちばかり考えるの。
少しは分らない?
ブルーノはバンド。妹はバーがある。あの子の煙草もそうよ。
それが生活よ。それにね。
あなたは礼儀知らずよ!
一方、出場機会を与えらないラーンもまたすさんでいて、チーム内の問題児となっていた。
手を焼く監督と掃除のおばさんの何気ない会話。
(チーム内の)その1人が問題児でね。
でもお気に入りでしょ。問題児ほど可愛いいの。
だからこそ罰しにくい。
バカね。全く下らない!
ドイツじゃないの。罰だけが能じゃないわ。
でも反抗は統率を乱す。
たまには目を瞑るのよ。
苦あれば楽あり。
リンゴも熟れれば木から落ちる。
そうじのオバサンの言葉に感心する監督だった。
ドイツ・チームはW杯を勝ちあがっていった。
ラーンも出場機会が与えられるようになって活躍をするようになっていく。
大事に飼っていたウサギを父に殺されてしまい、落ち込むマチアス。
池のほとりで、マチアスと母の会話。
ママ・・・。パパは変わった?
なぜ?
意地悪で。
マチアス・・・。
ウサギがいなくなって悲しいわよね。
それが毎日続くと思って。12年間。毎日よ。
想像できる?
パパはずっとそうだったの。12年間も。
僕のせいじゃ。
パパのせい?
私たちのせいでもない。
でもよくはできる。
あなたは素晴らしい子よ。
でもパパもいい人なの。本当は。
支えればいい父親になる。
待ってあげて。
自然に任せましょ。
リヒャルトと長男ブルーノは諍いとなり、父を見限るようにブルーノはついに家を出た。弟マチアスに父への手紙を残して。
リヒャルトは教会の神父に心の内を告白。
混乱し、全てが違う。
やろうとしても、悪くなる一方で。
ブルーノも出て行き。
捕虜の者たちと大勢話してきた多くが苦しみを恥じている。
家族を閉め出しても不安だ。
収容の残した傷を見られるのが怖いんだ。
夜、リヒャルトはマチアスに収容所生活を話し出した。
悲惨な毎日。心のすべて(父親の弱い面)をさらけ出した。
妻と娘(姉)が離れた場所でそれを聞いていた。
ブルーノが出て行ったのは自分のせいだという父リヒャルトだが、母は近づいて言う。
耐えられなかったの。長男の責任に。
ここを出たかっただけ。
大人として決断したの。
でも、まだ3人いる。
皆(マチアスに)あなたが必要なの。
マチアスには両親の気持ちが分ってきた。
ドイツは勝ちあがり、ついに決勝でハンガリーと戦うことに。
ハンガリーはこの4年間無敗の王者チーム。
第1試合でも8対3の大差でみっともなく敗れている相手だった。
深夜、リヒャルトはマチアスを叩き起こし、神父に借りた車でスイスのベルンに向けて走り出した。
息子に決勝戦を見させてあげようと。
試合が始まり、移動中の車のラジオで試合を知るマチアス。
先行されが2対2で前半終了。
ドイツの町中の外には誰ひとり人がいない。
テレビ、ラジオの観戦だ。
後半が始まったところで、リヒャルトとマチアスの車が決勝戦の球場に到着。
マチアスが球場に忍び込み、選手通路へ。
ラーンはそんなマチアスに気づく。
勇気をもらったラーンはすぐに見事な決勝ゴールをあげる。
ハンガリーの猛攻を凌ぎタイムアウト。
ドイツ・チームが奇蹟の勝利をあげ、1954年のW杯王者となった。
優勝チームのメンバーの乗った列車に、駅では祝うファンで一杯。
上手くその列車に乗り込んだマチアスとリヒャルト。
笑顔のマチアスはラーンに言う。
”やっぱり僕がいないと勝てないんでしょ。”
ラーンは答える。
”そうさ。言ったとおりだろ。”
この列車の中でマチアスリヒャルトが2人きりになったとき、マチアスはブルーノの残していった手紙を父に渡す。
喧嘩別れしていったブルーノだが、優しい言葉が書かれた手紙を見た父は思わず涙する。
”ダメな父さんだ。子供のように泣き虫で。”
”ドイツ男だって、たまには泣くよ。”とマチアスは言い、親子は肩を抱き合った。
実に素晴らしい映画です。
選手ラーンのW杯と彼が知り合う地元の男の子の家族を同時進行でストーリーが展開するという上手いストーリーです。
スポーツ記者の夫婦のエピソード(レビューでは省略)も絡めて、さらに上手にストーリーが作られていました。
見所満載です。
もちろん、ドイツやドイツ人のための誇る映画であることは間違いありませんが、そんな変な外国感情の入り込む余地がありませんでした。
それは、やっぱりひとつの家族の愛がベースになっているからでしょう。
特に母親のセリフには感動します。
息子マチアスにお仕置をした夫を非難するセリフには涙が出ました。
でも息子マチアスには夫の悪口は言いません。
苦しむ父親を支えてあげて欲しいと言います。(立ち直るまで)待ってあげて欲しいと。
今の日本でこんな立ち回りができる母親がどれだけいるでしょうか。
ソ連の収容所生活での地獄の苦しみはどれだけむごいものか。
優しくなれずに人間が変わってしまうのも頷けます。
そんなリヒャルトが最後は家族の愛のおかげで立ち直ります。
息子に優しくなります。
本当に素晴らしい映画でした。
普通のスポーツ・ドラマとは違った作品といえます。
2007/5/20 ★★★★* (評価:4.5 /5)
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ドイツは敗戦後、日本以上に大変な歴史を織り成してきたようで、この映画のワールドカップで人々がどれだけ夢中になったかが今になってよくわかります。戦争の傷跡は兵士にもその家族にも深く残されるというのも描かれていて素晴らしい作品でしたね。TBありがとうございました。
2007/5/21(月) 午後 6:32
Choroさん。敗戦から国が復興するには人が立ち上がり前に向かって進まなければならず、立ち直るためのきっかけや後押しが必要ですよね。それがW杯でもあり、家族の愛でもあり、友情でもあるのでしょうね。ドイツでこの映画がヒットしたわけが分ります。ホントに良い作品にめぐり合える事ができました。(^^)
2007/5/22(火) 午前 1:00 [ PANA ]
家族愛と言うのもテーマなんですが、この大会での優勝がどれだけドイツ国民を勇気付けたかがヒシヒシ伝わってくる一作でした。(・ω・)bグッ 爽快さと温かみを感じてくれましたねぇ〜。
2007/5/22(火) 午前 1:31
Kaz.さん。敗戦国ドイツが国民に誇りを取り戻した大会なのでしょうね。サッカーは見ている人を燃え上がらせます。あの熱狂的興奮は、日本ではサッカー好きな人以外は理解できないようです。海外では国民全員が燃え上がります。ドイツチームの監督は大変だった様子が映画の中でもうかがえます。勝てば英雄、負ければ断罪、のような立場ですよね。それにしても良い映画でした。
2007/5/22(火) 午後 6:08 [ PANA ]
派手さはなく地味な作品だと思うのですが、その中にとてもアツイ想いを感じさせる映画だと思いました。この映画は期待しないでみたのですがなかなか本当に良かったなぁ〜とじんわりときました。
2007/5/22(火) 午後 11:42
yukiさん。始まりがなんとなく始まって、徐々に徐々に引き込まれていきました。地味な映画なんでしょうね。なので、最後まで観ると、じわじわっとくるんでしょうけど。ホント良かったですね。(^^)
2007/5/23(水) 午前 1:04 [ PANA ]