tammyのブログ

日々鑑賞した映画の記録です。

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素晴らしき日曜日

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『素晴らしき日曜日』 (1947 日本)
監督:黒澤明
出演:沼崎勲、中北千枝子、渡辺篤、中村是好、内海突破、並木一郎、他
 
 
人が行き交う日曜の朝、駅前では男が壁にもたれて彼女を待っている。
地面を見ると、誰かが捨てたのか、まだ火の点いた煙草が落ちていた。
男がそれを拾って口に近づけた瞬間、やって来た彼女が男の腕を叩き、それを制した。
「どうせ来たってどうしようもなかったんだ」とデートの約束をしていたにも関わらず男は彼女にグチをこぼす。
所持金は、二人合わせて35円・・・
貧乏な二人は精一杯のおしゃれをしているのだが、金持ちの人と比べるとかなり見劣りしてしまう。
男は貧乏であることを恥じ、そんな世の中に絶望しているようだ。
女はそんな男を呆れながらも励まし支えている。
女は35円で今日一日を楽しもうと言う。
しかし、モデルハウスを見に行ってもどうせ買えっこない物に悲しさは増し、少年野球に
混ぜてもらってヒットを打っても団子屋の看板を破いて弁償させられる。
戦時中友人だったという男のキャバレーに行ってもただの物乞いだと思われ相手にしてもらえず、
動物園に行っても途中で雨に降られる。
クラシックコンサートに行っても、目の前でダフ屋によってチケットは完売になり、そのことに男は激怒し、喧嘩になるが、結局負けて情けなさは募る。
男は彼女を家に誘うが、女は少しためらう。
だが女は「こんな一日の別れは嫌だ」と男が居候している友人の下宿へ行くのだ。
畳はやぶれ、天井からは雨漏りするボロ家で、二人は座って会話もしない。
ただただ二人は自分たちの貧しさとみすぼらしさに打ちひしがれていた。
女は「お茶を入れましょうか」と聞くが、男は「そんなの飲みたくねぇよ」と言う。
そして男は彼女を抱こうとするがはねのけられ、動揺した彼女は部屋を出て行った。
男は狭く暗い部屋の中を彷徨う。
彼女の忘れていったバッグからは小さな犬のぬいぐるみが見えた。
それを男は手に取り見つめていると、ドアの開く音がする。
振り向くとそこには雨に濡れた彼女が背を向けて立っていた。
女はコートを脱ごうとするが、泣き崩れてしまう。
男は「わかったよ」と言って彼女の傍に寄り、二人とも泣くのだった。
窓の外は雨も止んで晴れてきている。
二人は再び外に出て、喫茶店でコーヒーを飲む。
そこでミルク代をぼったくられ、二人で将来「安くて美味しいコーヒー」を出す店を開こうと夢を語る。
男はふと目に付いた「音楽堂」へ彼女を連れて行き、枯葉の積もった舞台に立って、先ほど聴け
なかったシューベルトの「未完成交響曲」を指揮するというのだ。
もちろん楽団もいなければ、音楽も流れない。
それを彼女はただ拍手をして見守るのだ。
だが男は途中で諦めてうずくまってしまう。
それを見た女は私たち観客に向かって「拍手をください」と拍手を請う。
そして男は立ち上がり指揮をする・・・
流れるはずのない音が聴こえてくる、寒々しい野外音楽堂が少しばかり立派に見えてくる。
女は男の指揮する姿をただただ見つめている・・・
 
 
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日曜にしか会えない二人にとって、きっと今までで最悪の日曜になったはず・・・
観ている方は本当に二人が気の毒でなりません。
ですが、そこには彼らを見つめる温かい眼差しが感じられるから観ている方もどこか救われるのです。
今では考えられないほど貧しい二人が、懸命に休日を生きている姿は見終わった後も目に焼き付きます。
「俺には君だけなんだぜ」と男は女に何度か言いますが、その時の男の瞳の輝きがとても印象深かったです。
特に私は野外音楽堂の指揮を終えてからのラストがとても好きです。
 
 
駅のホームのベンチに二人で座り、無言の中、女は一筋の涙をこぼします。
男はそれに気づいているのかいないのか、女を見てコートの襟を正してあげるのです。
「また今度の日曜ね」と女は言い、男は彼女の乗った電車を笑顔で手を振り見送ります。
そしてホームに残った男の足元には火の点いた煙草が一つ落ちています・・・
男はそれをじっと見つめ、彼女が乗って行った電車の線路を見やり、口に手をあてます。
観ている方は「どうするつもりだ」と思うところですが、男は優しく笑い、煙草を靴で消すのです。
そして夜の街並みをバックに男の晴れ晴れとした姿とシューベルトの「未完成交響曲」が鳴り響きます・・・
 
 
「彼は成長したのだな」と感じるラストです。
お金がないとか貧乏だとか、ただそれだけが彼を苦しめていたわけではなく、心の貧しさが彼を捉えていたのでした。
それを彼女が解き放ってくれたのですね・・・
何が二人にとって「素晴らしき日曜日」だったのかと考えると、それはある種の解放感だったのかもしれません。
これでもかと最悪な出来事に出合いながらも、その悲しみを二人で乗り越えた先の幸福感とでも言うような、そんな清々しさがありました。
二人はまた明日から始まる一週間を、お互いが会える次の日曜日を目指して生活していくのでしょうね
 
私はこの映画から勇気をもらいました。
地味ですが、二人の深い愛情が観ている私たちまで伝わります。
励ましたくなる二人の姿を見て、逆にこちらの方が励まされているような感覚になりました。
沼崎勲も中北千枝子も今まで知らない俳優さんでしたが、美男美女ではなくてもとても雰囲気の良い二人でしたね。
本当に良い映画でした・・・
 
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最近は昔の邦画、特に黒澤明監督の作品を立て続けに観ています。
毎日映画を見るのが楽しいですね〜
これから少しの間邦画ばかりのレビューになると思われます・・・^^;
 
 

閉じる コメント(10)

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初めまして。
私,この映画が大好きで何度か見ています。
わたしも決して裕福とは言えず,
特に子供の頃は貧しかったのですが,
想像力が心を豊かにする,
という大切なことを感じ取れるように思います。
それは,まったくジャンルは違うけど,
「ショーシャンク」なんかでも描かれていた世界だと思います。

2013/3/2(土) 午後 0:13 jazzclub

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昭和22年ころですね。
若い男性は、戦争からの帰還者でしょうし、職場復帰しても給与は少なくみんな貧しい。(映画は見ていませんので想像です)
頬杖を突いているカップル。辛そうだけど自分たちが悪い訳ではない。
日曜が来れば、また会える。いずれ「未完成」は聞けるだろう。
今の時代から見詰め直すと、その貧しさは克服しているんですね。
黒沢監督は、予見していたのでしょう。
だから、勇気が貰えるのだと思いました。

2013/3/2(土) 午後 7:48 ギャラさん

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こんばんは。
いつの時代も恋人同士はにたものですね。あの時代の風景や風俗が
異国のような気がします。黒澤監督はこんな映画も撮っていたんですね。
抱きしめたくなるような映画でしたね。

2013/3/2(土) 午後 11:17 [ hisa24 ]

jazzclubさん、こんにちは。
こちらこそ初めまして♪
コメント有難うございます。

この映画お好きなんですね〜
私も今回鑑賞してDVDが欲しいくらいに大好きな映画になりました。
私はこの映画で描かれていたような時代をまったく知りませんし、想像するのも難しいほどです。
やはり貧しさの代わりに得るものは大きいようですね…
「ショーシャンク」は随分前に観ましたが、これも良い映画でしたね。
内容は違いますが、どこか通じる部分がある気がします。

2013/3/5(火) 午後 5:47 [ tammy ]

ギャラさん、こんにちは。
時代設定はきっと戦後間もない頃だと思うので、昭和20年代なのでしょうね。
戦争で破壊されたと思われる崩れ落ちた家屋や、コンクリートの瓦礫が色んなシーンの背景に写っていました。
私はセットで撮影されたのかと思ったのですが、当時の実際の東京で撮ったと知って驚きました。
あと、今よりも西洋風の建物が多いのにも驚かされました。

貧しいながらに懸命に生きる二人の姿を観ていると勇気をもらえます。
こういった貧しい時代を、今の80歳代や90歳代の方々は生きて来られたわけですよね。
そう思うと、彼らの努力のお陰で今の豊かな生活があるのだと有り難く思えます。

2013/3/5(火) 午後 6:06 [ tammy ]

hisa24さん、こんばんは。

この映画の風景はまるで古い洋画を観ているようでしたね。
二人がコンサートを聴くために行った、日比谷公会堂の建物もとても重厚感のある西洋風の建物でした。
黒澤監督の作品は「七人の侍」と「生きる」しか観たことがなかったので、今回の作品は少し黒澤監督のイメージと違う印象を受けました。

ラストの駅のホームのシーンがすごく好きで何回も見直したのですが、あの男の清々しい表情から勇気をもらいましたね〜
仰る通り「抱きしめたくなるような映画」でした(^^)
辛いけれども温かいストーリーでしたね♪

2013/3/5(火) 午後 7:53 [ tammy ]

こんにちは。
tammyさんのレビューとこの頬杖のステールを見ていると
シンプルだけども美しいカップルですね♪
わたしも観たくなってつたで探しましたが黒沢作品コーナーでは
見つかりませんでした(笑) 戦後間もない名もなく貧しく・・
雰囲気を演出するため名もない俳優さん女優さんを起用したそうですね〜 ぜひまた捜して観たい作品です。

2013/3/9(土) 午後 6:28 [ リュー( ryu) ]

ryuさん、こんばんは。
戦後の時代を健気に懸命に生きてる二人の姿を見ると、とても応援したくなりました。
頬杖をついてる写真はコーヒーに入れるミルク代をぼったくられた喫茶店ですね(笑)
でも、良い写真でしょう〜
そう、まだ無名の俳優さんを起用したようですね。
この間観た『酔いどれ天使』にも中北千枝子さんが出演されていました。
この映画の出演者は誰も知りませんでしたが、有名俳優が出ていなくてもこれだけ良い映画を作れるものなんですね。
是非また機会があれば捜してみてください♪

2013/3/11(月) 午後 7:44 [ tammy ]

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たしか以前記事にされていたことを思い出しました。
私もコメントしていましたね。
あらためてtammyさんの記事でも、シーンを思い出します。

2015/4/22(水) 午前 8:09 ギャラさん

> ギャラさん、こんばんは。
再びコメントありがとうございます♪

無名の俳優が演じていたこともあり、登場人物がとても身近に感じられましたね。
当時の東京の雰囲気も伝わる素敵な作品でした。
個人的にラストシーンが本当に好きなんですよ。
とても勇気が貰えた作品ですね〜(^^)

2015/4/27(月) 午後 7:54 [ tammy ]

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