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師走のことだった。
電話を受けたとき、
私はてっきりその女性が、お子さんの受験に関する話をしているのだと思った。
「あのう、看護学校を受けたいので、塾で勉強を教えてほしいのですが」
「この塾のことはどちらでお知りになられたのですか?」
「私の会社の同僚のKさんの娘さんが、そちらに通っていたと聞いて、お願いしたいと思いまして」
「そうですか、Kさんのお知り合いなのですね。懐かしいです。頑張り屋の娘さんでしたよ」
「看護学校の入試はいつですか?」
「年内に社会人入試がありますので、小論文の書き方を教えてほしいんです」
「そうですか、お子さんは社会人なのですね」
「あの・・・。受験するのは私なんですが」
「え。あの、あなたが看護学校をこれから受験なさるのですか。失礼ですが、おいくつですか」
「43歳ですけど、どうしても看護士になりたいんです」
「・・・」
「あ、あの、とにかく一度、教室の方に来ていただけますか」
「では、引き受けていただけるのですね」
「とにかく話を聞かせてください。その上で考えさせていただきます」
その女性Sさんは、高校を卒業してからすぐに今勤めている会社に就職して現在に至るという。
お姉さんが一人いて癌を患っているという。
Sさんは看病の為などで病院に通うようになって、どうしても看護士になりたいと思ったらしい。
「先生、私は若い人と一般入試で競っても、とても学力では勝てないから社会人入試で入りたいんです」
「社会人入試は小論文だけですか?」
「はい、小論文と面接だから、私が本当に看護士になりたい気持ちを伝えれば・・・」
「でも、受験する人は全員、そういう気持ちですから、なかなか難しい戦いになりますよね」
「ええ、だから上手い書き方を教えてほしいのです」
「うーん・・・」
受験に必要な小論文の添削を、お小遣い程度の金額で引き受けた私だったが、
私には社会人入試の合否が、小論文や面接で決まるとは思えなかった。
おそらく履歴書を重視して、ある程度の理系の知識があると思われる社会人を合格させるであろうと。
社会人入試の結果はすぐに出た。
数十人の受験生の中で、合格したのは、ほんの数名だった。
あらかじめ履歴書で選抜した中から、小論文と面接で決めたはずだ。
「先生。忙しいのに小論文を見ていただいて本当にありがとうございました」
「いえ、よく頑張りましたよね。結果よりも、その挑戦する気持ちが大事ですよね」
「はい・・・。それで、あの、これから一般入試に受かるように受験勉強したいのです」
「え、これから受験勉強ですか」
「はい、受験科目は国語、英語、数学です。これが過去問です」
過去問を見ると、高校入試程度と高校1〜2年程度が半々くらい出題されている。
社会人がこれから2、3ヶ月で、勉強して受かるには大変だと思った。
Sさんは、国語と英語は比較的得意そうだが、数学が・・・。
Sさんの挑戦が始まった。
会社には退職願を出して、背水の陣である。
数学は、中学の基礎の計算から始めて1ヶ月、次に高校の範囲に突入した。なかなか苦戦。
そこで、以前に知り合いの塾の先生から教えてもらった数学の㊙参考書を取り寄せて、問題を絞る。
この判断は的中した。
Sさんの数学の学力は驚く程上がった。
それもそのはず。Sさんは朝から晩まで、繰り返し繰り返し同じ問題をやったのだ!
43歳の受験生は、第一志望の看護学院こそ不合格(合格者は46人中6人のみ)だったが、
第二志望の看護学院には無事に合格した。
Sさんは合格が決まると、お菓子を持って御礼にきてくれた。
その時に来ていた塾生全員にお菓子を手渡して、
「こんなおばちゃんでも頑張ったのだから、みんなも頑張って勉強してね」と笑顔をみせた
「先生、本当にお世話になりました。必ず看護士になって社会貢献してみせます」
Sさんが看護士になる。
考えてみれば、私も少しだけ間接的に社会貢献したことになるのかな(笑)
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「教育全般」
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40代で看護師を目指す人は少なくないようです。
必ず看護師になって社会貢献してみせます。
社会貢献という利他的な、高い目標があるから
頑張ることができたと思います。高校の数学を、
家庭教師するために勉強しようと思いましたが、
時間が取れません。すべき事としたい事をリストを
あげて優先順位を考えて取り組みたいです。数学は、高校に
教育実習に行きました。教員免許、当時は、すぐに教師になる
わけでないのでいらないと思いました。就職を斡旋して欲しい
人は、教員免許の申請を辞退するよう貼り紙があり、
教員採用試験に合格した二人を除き全員辞退しました。
2014/7/2(水) 午前 3:30 [ さくら@ ]