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私は、ラジオの二ッポン放送系列「テレフォン人生相談」のリスナーである。
私の聞いている信越放送の放送時間は、平日の午前11:05 ~ 11:25くらいだから、
実質は20分くらいの番組である。
その20分の中に、相談者の人生が凝縮されている。
この番組をほぼ毎日聞くようになって、かれこれ25年近くになるが、
放送の中には忘れられないものも多い。
その中から、二つの人生相談を紹介したい。
(いずれ日もパーソナリティは加藤諦三さん。早稲田大学名誉教授・作家・心理学者である)
一つ目の人生相談は、3〜4年前だったろうか…
(以下は私の記憶に残っている場面・事柄だけであるので、細かい数字は記憶が曖昧ですが)
加藤諦三「もしもし、テレフォン人生相談です」
女性相談者「あのね、聞いてよ! 息子が私のマンションから出て行かないのよ。
私の買ったマンションなのよ。なぜか出て行かないのよ。どうすればいいか分からないから、
それでね、電話したのよ」
加藤「最初に相談者の年齢、職業、家族構成を教えてください」
相談者「50台よ。教師をしているのよ。亭主と私と息子がいるの」
加藤「わかりました。それで、今日の相談はどのようなことですか」
相談者「だから息子が出て行かないのよ。鍵を中から掛けて開けないのよ」
加藤「息子さんが出て行かないのは、あなたの住んでいるマンションなのですか」
相談者「違うわよ。私が買ったマンションなのよ。それなのに、息子が約束の1週間を過ぎても出て行 かないのよ。すぐに出て行くって言うから貸したのよ」
加藤「あなたが住んで居る所とは別の所にマンションを買ったのに、息子さんがそこを使っていて、
あなたを入れないということですね?」
相談者「そうよ、だから最初からそう言ってるでしょ。息子はすぐに出て行くから貸してくれって言っ たのよ。でも、ちっとも出て行かないのよ。どうすれば出て行くのか教えてほしいのよ」
加藤「あのぅ、親子なのですから、落ち着いて息子さんと話し合ってみたらどうですか」
相談者「それが出来ないから電話したのよ。あなた、ニュースステーションに出ている評論家の人でし ょ? あなたなら何でも出来るでしょ。何とかしてよ」
加藤「私はあの方とは違います。加藤諦三です」
相談者「え、本当にあなた、あの人じゃないの?」
加藤「あなたは本当に先生をなさっているのですか?」
相談者「そうよ、中学で教師をしているのよ」
加藤「あのぅ…あなたは先生として、生徒さんに好かれているのでしょうか?」
相談者「そんなの当たり前でしょ。みんな私の事が好きよ。決まっているじゃないの」
加藤「はたして、そうでしょうか。私にはそう思えないのですが。息子さんのことは、あなたにも原因 があるように思えますが…」
相談者「そんなことないわよ。あなた、何を言っているのよ。もういいわよ!」
『ガシャ!…ツー・ツー・ツー……』
(ここで放送は終了し、終わりの音楽がかかる)
私は、このような性格の人が教師をやっていることに愕然とした。
でも、これは例外中の例外だと思っていた。
そして、この日は一日中、とても嫌な気分だった。
しかし、それから数年後には、
この女性にかなり近い性格の教師を自分の生活圏内に発見することになる…。
二つ目の人生相談は、5〜6年前だったろうか…
(やはり、私の記憶に残っている場面・事柄だけで、細かい数字は記憶が曖昧です)
加藤「もしもし、テレフォン人生相談です」
相談者「はじめまして、宜しくお願いします」
加藤「最初に相談者の年齢、職業、家族構成を教えてください」
相談者「57歳、製造業、家族は居りません。昔は結婚もして家族もいましたが、今は一人で暮らして おります」
加藤「わかりました。それで、今日の相談はどのようなことですか」
相談者「私は昔、子どもが生まれたばかりの頃に離婚して、私は家を出たのですが、その子どもに会い たいのです」
加藤「そうですか。その前に、相談者が離婚して家を出た理由を教えてもらっても良いですか」
相談者「昔、自営業をしていたのですが、事業に失敗いたしまして、大きな借金を作ってしまいました 。その後、借金取りが家に押し掛けるようになり、このままでは家族に迷惑が掛かると思い、離婚 届を出して、私一人が家を出ました。妻は生まれたばかりの子どもを連れて実家に帰ったと、後 に友人から聞きました」
加藤「そうですか。奥さんは小さなお子さんを抱えて大変だったと思いますが、あなたも大変だったと 思います。あなたは家を出てからどうしていましたか?」
相談者「私は誰も知り合いの居ない遠い場所に行き、保証人がいらなくても良いという住み込みの仕事 を見つけて、そこで働くようになりました。そして、自分の住み込みに必要な分を差し引いて、残 りは妻と子どもへの仕送りに充てました」
加藤「あなたは、その生活を今までずっと続けていたのですか?」
相談者「はい、そうです。」
加藤「今はお子さんも随分と大きくなっているのではないですか?」
相談者「はい、息子は随分前に成人して家庭も持っているらしいです」
加藤「奥さんや息子さんは、あなたが今どこでどんな生活をしているのかは知っているのですか?」
相談者「いいえ。私は借金取りが来るのが怖かったから、住所も名前も伏せて送金をしておりました。 だから、誰も私の住所を知りません」
加藤「そうなのですか。一人でよく頑張りましたね。でも、なぜ今になって、もう大人になって家庭も ある息子さんに会いたいのか、その理由を教えてください」
相談者「私、末期癌なのです。手遅れだから、あと二ヶ月ほどの命だと医者から宣告されました。でも、先 生とお話しをしている間に、息子には会わない方が良いと思うようになりました」
加藤「あなた…あなた、ほんとうに良く頑張ってきたね。あなた、ほんとうに一人で良く頑張ったよね 。あなたの息子さんへの思いは、きっと届いているはずですよ。あなた、ほんとうによくがんば ってきたね、ほんとうに……」
相談者「先生、(涙声で)ほんとうに、ありがとうございました」
私はこの放送のあと嗚咽してしまった。
そしてこの日、この男性の声が繰り返し聞こえてきて、仕事をしていても、何をしていても、涙がとまらずに困った。
彼のとった行動や判断が正しいとか正しくないとか、そんなことはどうでもいい。
幼い男の子に対するこの父親の深い愛情を知らされ、この男性の一生を思うととても辛かった。
男性はいつも男の子の写真をみて、それだけを生き甲斐にがんばって生きてきたに違いない。
加藤先生の「あなた、ほんとうにがんばったね、がんばったね」という彼に寄り添う言葉と気持ちは、
たった一人でがんばり続けて、たった一人で死んでいく彼の深い孤独を救ったのではないだろうか。
ずっと忘れることが出来ない、つらい放送内容である。
加藤諦三さん
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こんばんは。
じっくり相談内容を読ませて頂きました・・・
昔と今では、時代が違うとは言え「教育者とは!?かくあるべき!」と言う心構え!と言いますか「人格」があってしかるべきだと思います・・・
少なくとも、子供達に道徳を教え!時には評価さえする教育者が・・
最初の相談者の教育者の様な方ばかりでしたら、ゾッとします!!!
(「あなたには、人にものを教える資格などない!」とハッキリ申し上げたい!!)
次の男性の方のご相談と、回答に・・・今・・・実際涙が止まりません・・・相談者の男性のお気持ちを考えると・・・涙・・・
加藤先生の「これまでよく頑張ってきましたね・・・」その言葉がどんなに、この男性の心を救ったことか・・・素晴らしい!感動しました・・・
「これが、真の教育者の真の言葉では!?」
「前出の女性教師さん!あなたの様な方を給料ど○○○!って言うのよ!!怒」・・・☆
2013/7/15(月) 午後 9:17 [ 今日も、こっそり自然観察! ]
こんばんわぁ〜
私も良く聴きま〜す!
どうのこうの方法論だけではない、心のケアが聴けるのでいい番組ですね。♬♫♬
いつもありがとうございます。
2013/7/15(月) 午後 9:23 [ royalhip ]
こっそり自然観察さん、こんばんは! とても書くのが辛かったです。
おそらく。この方の父親も子ども思いの父親であったのでは、と思っています。彼は自分に与えられた大きな親の愛情を子どもにもあげたかった…でも、愛する子どもと一緒に暮らせない。
唯一。仕送りすることだけが、自分に出来る父親としての愛情の表現だったのではないでしょうか。
…加藤先生の温かい言葉にも心の奥が揺さぶられました。
アドバイスではなくて、この男性に加藤先生は寄り添ったのです。
少なくとも、この時の加藤先生は、アドバイザーなどではなく、
同じく子どもを愛するひとりの父親として、
正直にそのまま言葉を絞り出したように思いました。
昨今、薄情な親の話題がニュースで報道されるたびに、
私はこの男性のことを思いだします。
教員をやっているという馬鹿な母親に育てられた子どもは、
やはり、母親そっくりのワガママで自分勝手な大人になるのでしょう。
この男性の低くて落ち着いた声をこれからも忘れることはありません。
万が一、男性の息子さんがこの放送を聞いていてくれたら。
そんなことって、あり得ないでしょうが。
2013/7/16(火) 午後 9:03 [ 湖池健彦 Essay ]
royalhipさん、こんばんは!
テレフォン人生相談は、その時代時代の鏡なのだと思います。
昨今の放送内容に多いのは、浮気・詐欺・家庭不和・子どもの非行などがとても多いですね。
人と人のつながりや信頼関係がとても希薄になってきていて、
人の心も殺伐としているように思います。
離婚しても養育費さえ払おうとしない父親が多いと聞きます。
養育費と言っても、相場が2万円程度だそうですが、
それすら払わない。それでも親といえますか?
自己愛ばかりで、親としての愛情がないのです。
未熟ということばで片付けてはならないと思います。
2013/7/16(火) 午後 9:16 [ 湖池健彦 Essay ]
カウンセリングの基本は何か適切なことをアドバイスするのではなく「傾聴」することです。加藤先生は相手の気持に寄り添ってそれが出来る方ですよね。話をしただけで癒される、そんな人になりたいものです。何十年もかかりそうですが。
テレフォン人生相談で思い出しましたが、時どきパーソナリテーをつとめていた児玉清さんが好きでした・・・。
2013/7/16(火) 午後 11:09 [ yui*ma*m* ]
こんにちは
湖池健彦 aromaさんから素晴らしいお話を聞けて、本当に良かったです。
この2つのお話は、ある意味で対比的になっていますね。
最初の話の、50代の教員ですが、加藤先生に対する言葉の遣い方からして、最悪のアホ教員ですね。
こういうバカタレの教員が多いから、いじめも減らないし問題が多いのだと思います。
こんな教員が生徒から慕われている訳ないですね。
最低の人種を見た気がします。
それに対してもう一人の方は、素晴らしいですね。
本当に湖池健彦 aromaさんが一日中涙が出ていた気持ちがよく解ります。
不思議にこういう気持ちの優しい人は、早く死んでしまうものですね。
反対にバカタレ50おばやん教員は、きっと長生きすると思います。
よく昔から『憎まれっ子世に憚る』と言いますから…。
いつもありがとうございます。
2013/7/17(水) 午前 11:57 [ てんし ]
yui*ma*m*さん、こんばんは!
人生相談パーソナリティーとしての児玉清さん、素敵でしたね。
児玉さん自身、実は多くの苦悩を背負いながらも、それを口にしませんでしたね。早く亡くなられて悔しいです。
実は児玉さんの別のラジオ番組での「書評」を聞いて参考にしていました。
同じく、亡くなられてしまいましたが、市川森一さん…
市川さんは、永島慎司原作の漫画「若者たち」を脚本して、
NHK銀河テレビ小説「黄色い涙」を書いてくれました!
私はこのドラマを若い頃にみて、
東京の阿佐ヶ谷の三畳間に一年だけ住みました。
そのことについては、やはりblogの随想録に書いてあります。
市川先生の脚本には今もって強い影響を受けています。
お二人とも、心から尊敬できる先生です。
2013/7/17(水) 午後 7:17 [ 湖池健彦 Essay ]
てんしさん、こんばんは!
毎日、素敵な富士山を見せていただき、感謝しています。
私は思うんです。
この男性には男の子を思う愛情があったから、
こんなに頑張れたんだなと。
保証人も要らないような住み込みの仕事は、
おそらく誰もやりたがらない仕事だったはずです。
それを何十年も続けて…身体はボロボロだったはずです。
この男性の声ですが、話し方も内容も「誠実」そのものを感じました。
加藤先生も、いつもの理論的な話し方ではなくて、
しんみり、「ほんとうに、あなた、がんばったね…」を繰り返しました。
おそらく、心ある男性なら、みんな同じ気持ちになったと思います。
それと正反対の馬鹿女には、いずれは天罰が与えられると思います。
この馬鹿女の言うことには誰一人として耳を貸さなくなります。
この男性が静かな心で最期のときを迎えたことを信じたいです。
2013/7/17(水) 午後 7:31 [ 湖池健彦 Essay ]
最初に書かれている教員さん、(私はその番組を聴いていないのでなんとも言えませんが)病んでいたのでは?と思います。教員として一生懸命頑張って、家庭をおろそかにしてしまった・・とも考えられます。頑張りすぎるとおかしくなってしまいます。もしかしたら、学校では生徒のために尽くす良い先生だったのかもしれないです。どこにもすがる物がなくてテレフォン人生相談に電話をかけた、可愛そうな人だったかもしれないです。
時々少数派の意見になってしまう私。
2013/7/17(水) 午後 8:20 [ yui*ma*m* ]
yui*ma*m*さん、こんにちは!
そうですね、
私は文章でしか放送内容を書けないので伝わりませんが、
この教員の口調には閉口しました。
大声で一方的にまくしたてる口調…
実は、加藤先生は放送の途中でそれについても苦言を呈しています。
まるで、風邪をひいただけで公共の救急車を呼ぶ感覚に近いものを、
この相談者からは感じました。
また、自分で勝手に他の評論家と間違えておきながら、
やはり一方的に電話を切ってしまう感覚は、
教員には不適であると思います。
yui*ma*m*さんが思ってあげたような思いやりを、
少しでも、この教員がもっていることを祈ります。
2013/7/18(木) 午後 3:56 [ 湖池健彦 Essay ]
長寿番組ですね。人気のある番組なんだと思います。
相談者の人生と自分の人生を照らし合わせてみると色々な気づきもあるのでしょう。
前者の教員の方の様子を聞いて「こんな風にはなりたくないな」と思われた方も多かったでしょう。それはそれで一定のインパクトがありますね。後者の病気の方のお話はもらい泣きしそうになりました。深い愛情も感じますが、自分の生きた証しというか意味を確認したかったのではないかと思います。その<生きた意味>を加藤さんが思いっ切り認めてくれた。これが相談者の大きな救いになったのだと思います。素敵なお話を紹介して下さりありがとうございました。
2013/7/18(木) 午後 7:29
こんにちは♪人生相談の例二つなんですが、内容は最初のは
次のは
ですね。一件目の女性相談者。教師としてとか、親として以前に、人間失格だと思ってしまいます。教師の仕事が「教科書の内容を教える」だけなら勤まるかもしれませんが、人を育てる教える「教育」は無理でしょう。この女性が重度の二重人格者なら、パーソナリティに対する無礼な言動も理解出来ますが…教育の場に留まるべき人物ではないでしょう。二件目の男性相談者は…多くは語れません。無権利状態で、或いは劣悪な状態でも頑張り続けて…ですか(T_T)これは日本の政治の貧困がもたらした悲劇です。それでも悟りを拓いたような心境を聞かされたら「頑張って生き抜いてきたんですね」しか言えませんよね。
2013/7/19(金) 午後 0:53 [ 人生航路 ]
ママさん、こんばんは!
テレフォン人生相談が始まったのは1965年からです。
我が家にはある事情からテレビが無い時代があり、
そのおかげで様々なラジオ番組を聞く機会に恵まれました。
大人になっても、気に入った番組がいくつかあります。
その中でも「人生相談」は、ママさんがおっしゃる通りで、
『相談者の人生と自分の人生を照らし合わせてみる』ことで、
自分と向き合うことが出来る番組です。
この男性の人生を、加藤先生が思いっきり認めてくれた…
そう、その通りです。
そして、そのことに私も心を動かされたのだと思います。
この男性と私はいくつかの共通点があります。
ママさんのコメントでやっと分かりました。
この男性が加藤先生に認められたことで、私も嬉しかった…
それだからこそ、私は涙が止まらなかったし、
今もって放送が忘れられない…
私は嗚咽した理由がよくわかっていませんでしたが、
ママさんの文章を読んで、その理由がはっきり分かりました。
やはりママさんは人生の達人です。
2013/7/19(金) 午後 9:25 [ 湖池健彦 Essay ]
人生航路さん、こんばんは!
今年の三月だったでしょうか。北海道のある町で、猛吹雪があり、
その中で娘を抱きかかえて凍死した父親のことが新聞に載ったのは。
父親が命をかけて守った一人娘は、無事救出されたのですが、
この小学生の娘さんは数年前に母親を亡くしていて天涯孤独に…
真面目に精一杯がんばっている人は、
精神的にも肉体的にも無理をしています。
だから早くお迎えが来てしまいます。
それを考えると、世の中は、人生は、本当に理不尽なものですよね。
人生航路さんは幼い頃から苦労された方だとお察しします。
どうか、底辺でがんばっている方々を励まし続けてください。
2013/7/19(金) 午後 9:51 [ 湖池健彦 Essay ]
こんばんは。ここに書いて良いか迷いましたが・・。
実は湖池様が私の考えた「ヘンな文」に疑問を持って下さってるお陰で、レッスンの時、みんなが考えそして覚えるきっかけとなっています。(たぶん)
夏休みは夏期講習でお忙しいと思いますが、息抜きで私の所にお越しの際は「??」っていう文があったら遠慮なく書いて(貼り付けて)下さいね。
最近、講師が私に「質問はないのか」って聞いてきます
2013/7/23(火) 午後 11:53 [ yui*ma*m* ]
yui*ma*m*さん、こんばんは!
はい、お察しの通りです。多忙なのと、頭が疲れてます〜。
なるべく行きます・・・
2013/7/24(水) 午後 10:12 [ 湖池健彦 Essay ]