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「大谷翔平というスーパースター」
スポーツ選手がどんな記録を作ろうが、活躍しようが、
その運動能力が時代のニーズに合致しただけの話題であるから、
「ふーん、金メダル、良かったね」「すごいね」
くらいの感想しか持たないのだが、
大谷翔平という青年については、とても興味がある。 始めて彼の姿や活躍を知った時の印象は、
「まるで金太郎みたいな青年だな」、そう思った。
ほとんどのプロスポーツ選手は、髪型を気にする。
染めてみたり、アフロヘアーやモヒカン刈りにしてみたりで、
その精神構造は子供みたいなものだ。
胸元には下品な金色の鎖をしたりで、何とか目立ちたいらしい。
芸のない安っぽい芸能人に近い選手も多い。
今、大リーグ挑戦の大谷翔平選手は、キャンプでの前評判を覆して、
160キロを越える剛速球をバンバン投げ、
メジャーの投手のくせ球を豪快にスタンドに運ぶ。
それは彼の稀に見る卓越した運動能力のなせる技なのだが、
そんなことで彼に興味をもったわけではない。
彼はいつも自然体なのである。
髪型は、1000円カットの床屋でやってもらったのと変わらないし、
インタビューで語る言葉にも飾り気がない。
まったくもって屈託がない。
イチローのように格好をつけた言葉を用意しない。
冬季オリンピックで、
表彰台に大きな耳輪をつけて上がった日本の青年がいたが、
大谷翔平という青年は、その対極に存在している。
彼にはいっさいの飾りは必要ではないのだ。
こんなプロ野球選手を今まで見たことがない。
まさに始めて出現した「スーパースター」なのである。
※フリーイラスト集より
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「私の父」参
今日、泥だらけの車を GSで洗ってもらっている間に、置かれていた漫画を手に取った。
表紙の「プレイボール2」の文字が目に入ったからだ。
僕が中学・高校を通してずっと心の拠り所にした漫画だ。
作者のちばあきおは「プレーボール」を連載中に亡くなった、だから「プレーボールは」は未完のまま終わった。
「プレーボール2」コージィ城倉 原案 ちばあきお とある、
故・ちばあきおが描いている…と誰も疑わないタッチだ。
ちばあきおは生きていた。その作品の中にも生きている。読者の中にも生きている。兄のちばてつやの心の中にも生きている。
僕の父も生きている。いつか逢って話せる日が来るまで心の中で生きている。
この三ヶ月、末期癌の父に何をしてあげられるのか、それしか考えることが出来なかったが、今はもう何もしてあげられない。
涙をこらえて弔辞を読み上げてくれた娘のためにも、
最期まで生きようとした父の強い意志を受け継いでいくためにも、
僕がしっかり生きなきゃいかん。
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「私の父」弐
父は一箇月の入院を経て転院、終末医療の病棟に移って三日目だ。
頭には転移がないから、意識も思考力もしっかりある、しかし。
177cm 42kg の父の身体に毎日アロマオイルを塗布する私がいる。
俺のことはいいから、早く仕事に行けと私を気遣う父がいる。
まったく食事がとれない日には、私も食事が喉を通らない。
一椀のお粥を食した父を見届けた日は、私の足取りも軽い。
市役所一筋に勤め上げてやっと母と旅行にでも、そう考えた矢先に、市長に懇願されて商工会議所の仕事をやる羽目に。
任期途中で母が急性白血病であることがわかり、すぐに辞職。
母の前では笑顔を作り、毎日二人で病院に通ったね父さん。
二十年後の今、その役目は僕一人だよ父さん。
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「私の父」
二十年前、母が一年間の闘病の末に亡くなってからずっと、
九十歳になる父は、母の衣類など遺品を何一つ捨てられなかった。
先日。父が救急車で運ばれ、入院。先はまったく見えない。
家の中は無機質で重くて冷えた空気だけになってしまった。
胸が締め付けられ呼吸が苦しくて眠られない。寂しさの塊だ。
見もしない離れた部屋のテレビを付けっぱなしにしていた父。
深夜に仕事から帰る私のために外灯をつけて待っていた父。
「先に寝ていて良いからね、その方が嬉しい」と言っていた私。
横須賀の海軍で終戦を迎えた父は、戦後を真っ直ぐに生きてきた。
「奇跡はないのですか」昨日叔父が発した言葉を、今日は私が担当医に繰り返した。
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「ねこ物語」〈第1話〉前半
僕は勝手気ままに三日程ぶらりんと外出をして、
森野家のお屋敷を留守にしていたんだ。
最初はぐんと伸びたススキに視界を邪魔されて、
それで道を間違えたのかと思い、
僕が前に残しておいた目印とか匂いをたよりにして、
何度も別の道をたどって探してみたんだけれど、
初秋の紅葉も鮮やかな森野博士の広大なお屋敷は、
跡形もなくすっかり消えてしまっていてね、
そこには見渡す限りの枯れススキの群生があるだけだった。
僕は仲間の中ではかなり賢いやつといわれているけど、
それでもこの数日間に起きた出来事を想像するのは難しいよね。
あれ程に大きなお屋敷とお庭がね、突然になくなるなんてさ、
たとえ取り壊すにしたって、数週間はかかるはずだしね。
なんとか取り壊して撤去できたとしても、
屋敷の土台の後や、匂いくらいは残っているはずだよ。
待てよ、気のせいかな。
僅かにネロリの香りがするような気も…。
わずか数日の探検とは言え、僕が食べたものといったら、
草原のバッタやら蝉、それにレモングラスくらいだったから、
僕は腹ぺこ状態のまま「これからどうしようか」
「お腹空いたよ〜」と途方に暮れていたんだ。
腹が減ったら散歩もできぬ、ん?
だから僕の足は何度か訪れたことのある近所の家、そう。
優しいおばあさんのいる三階建てのお洒落な住宅に向かっていた。
その柔和な表情のおばあさん《名前はイトさんという》は、
僕の姿を見つけるとね、そのシワクチャな顔を、
尚更にシワクチャクチャにしてさぁ、
「かわいいね、ほんとにかわいいね」と喜んでくれるんだ。
さてと。今日は何をご馳走してくれるのかな。
そのイトさんが赤い半纏をまとって、
いつも日向ぼっこをしている広い縁側の扉は閉まっていた。
そんな時、僕は庭に植えてある大きな梅の木に上ってさ、
スルスルと二階のイトさんの部屋まで行くことにしている。
その日は少し肌寒かったけれど、
好天だったから窓はすこし開いていて、差し込む日光の下、
イトさんは毛糸を使っての編み物に集中しているところだった。
後半へとつづく
↑お盆に掃除をしていたら出てきた絵はがきより。「日本捨猫防止会」03-472-8XXXとある。
はじめに。
「ねこ物語」は三毛ねこの物語です。
森野家の屋敷が突然消えてしまったあと、
屋敷で飼われていた三毛ねこが、
野良猫として爽やかに健やかに生きていく物語です。
〈第1話・前半〉に出てくる森野家の屋敷とは、
私が2013年に文芸社から出版したファンタジー小説「アロマ物語」
の舞台となったアロマ屋敷のことですので、
アロマ物語の読者の方には、想い出していただけるかも知れません。
森野博士や森野香織・山川健も、後半では登場させるつもりです。
いずれにせよ、主人公はねこです。
アロマ物語とは関係なく楽しんでいただけるように
話を進めていきますので、想像力を掻き立てて楽しんでください。
湖池健彦
付記
九十歳になった父親の健康状態が良くないので、
連載は度々中断したり、かなり不定期にもなりますが、
書くことが自分の気持ちを立て直す切っ掛けにもなってます。
文章を書くことは、自分を反映させること、見直すことでもあります。
先ずは第100話は必ずに、
100話以降もずっと書いていくつもりでいます。
※参考
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