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「私の父」
二十年前、母が一年間の闘病の末に亡くなってからずっと、
九十歳になる父は、母の衣類など遺品を何一つ捨てられなかった。
先日。父が救急車で運ばれ、入院。先はまったく見えない。
家の中は無機質で重くて冷えた空気だけになってしまった。
胸が締め付けられ呼吸が苦しくて眠られない。寂しさの塊だ。
見もしない離れた部屋のテレビを付けっぱなしにしていた父。
深夜に仕事から帰る私のために外灯をつけて待っていた父。
「先に寝ていて良いからね、その方が嬉しい」と言っていた私。
横須賀の海軍で終戦を迎えた父は、戦後を真っ直ぐに生きてきた。
「奇跡はないのですか」昨日叔父が発した言葉を、今日は私が担当医に繰り返した。
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2017年09月18日
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