俺の映画日記

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ポン・ジュノの新作。
『殺人の追憶』で世を震撼させた才人監督の新作は如何に??と興味津津で
見に行った。

自分的には、大傑作とは言わないが、それでも、「さすが」と言わしめるだけの
ものは十分にあった・・。

オープニングで・・、
荒涼としたすすき原の大地を一人母親がカメラ方向に歩いて来る。
「一体、何が始まるのだろう?」と我々は思う・・・。
そして、やにわに、哀調あふれるタンゴのような曲にのって、
母親は一人踊り始めるのである・・・。
いきなり、意表をつかれた。

思うに、映画もドラマも、まずはオープニングが大事である。
最初の5分で引きつけられるか、どうかが勝負だ。
オープニングに魅力があるドラマは、そのまま良作である場合もあり、
又、駄作と終わる場合もある・・。
しかし、オープニングに魅力がないものは、すべからく駄作に終わる・・・
ここの所、そんな気がしている・・・。

という事でいうと、ポン・ジュノのこのオープニングには引きつけられたのだ。

(最近の例でいうと、『沈まぬ太陽』は、オープニングで「これは大丈夫か?」
 という気がしたし、イーストウッドの『チェンジリング』は、単なる日常の描写なのに、
何か惹かれるものがあった・・・)

物語は、荒涼な大地で踊る、母親のいわばイメージショットとでも言うべき
映像から始まり、タイトル。
その後、家で草を切る母親と、外で遊ぶ青年の描写・・となる。

この草を切る音が妙に生々しく・・、本当にリアルな音で、しかも殺意というか、
殺傷力というか、それをイメージさせる生々しい音なのだ・・。
ここで、我々は、母親が息子に気をとられ指を誤って切るのではなかろうか・・
という危うさを感じ、しかも音で、何ともいえぬ「切る」という事のリアルさ、
生々しさを感じるのである・・。

そして、実際、息子の前で犬が轢かれ、事件へと繋がっていくのである。
その追跡と殺人の間で、的確に、息子の性格・欠点などが過不足なく
描写されていくのである・・・。

いや・・・見事というしかない。
魅力的な映画というのは、すべからく、最初の何分かで物語への導入と
人物の描写を的確に済ませてしまうのである・・。
この映画も、その条件を十二分に兼ね備えている・・・。

導入で引きつけられたので、あとは心地よく物語にのっていける・・。

通して感じたのは、全てがポン・ジュノに統括されている・・という気がした事だ。
『チェンジリング』を見た時にも、映像の背後にいるイーストウッドの
堂々とした監督ぶりを垣間見たという気がしたが・・、
イーストウッドのそれは、監督椅子に悠々と座りながら、
ある部分を演者に任せ、ある部分はカメラマンに任せ・・という、
泰然とした監督ぶり・・というかそういう風な見え方であった・・。

が、ポンは違う。
物語の背後で垣間見えるのは、映像のサイズ、アングルに、
そして役者の箸の上げ下げや台詞の抑揚にまで、指図し統括していく
ポンの徹底ぶりである・・。
ここに見えるのは、物語の帰趨にまで徹底的に拘り、統括していく
神とでもいうべき筆運び・・というか、眼差しというか
(否、眼差しというよりは、全てを干渉している気がする)
というようなものである。

徹底的に計算され尽くしていて、100%ポンの頭の中で出来上がったものを
そのまま映像化したものを、我々は見せられている・・・そんな気がする。

完全主義者黒澤明は、頭の中で積み上げたものを絵コンテとして具体化し、
しかし、現場では、自然条件やその他に拘りつつ、
ある種のハプニングを望んだという逸話もあるが・・、
ポンに関しては、たぶん、ハプニングすら許さない完全主義で臨んだのでは
あるまいか・・という程、物語の隅々というか、物語そのものに、
ポンの神の手が施されている・・としかいいようがない・・ものを感じる。

しかし、それが、妙に心地良かったりもするのである・。

物語は急転直下、新犯人は意外にも意外にも・・という帰着点をみるのだが、
その後が、又、見事・・。 

ラストシーンである。
異論もあろうとは思うのだが、
僕はこのラストに痺れた。
何故か、『汚れた血』(カラックス)のラストを思い出したのだ。

バスの中、自分の膝の「全てを忘れる壺」に針を打つ母親・・・、
そしてどうなるのか?
母は、立ちあがり、やにわに踊り出す・・。
そしてかかるオープニングのタンゴ曲、
ここの映像が見事なのである。バスの外から捉えた
逆行気味の母親のフルショット。
物語は、黒にフェードアウトして終わる・・。

果たして、母親は針を打つ事で全てを忘れたのか?
それとも単に忘れた振りをして、今後生きていくのか?
半ば視聴者の見方に委ねられた・・というか、どちらともとれるような
捉え方をあえてしたのだ・・・。

震えるラストである・・・。

ポン・ジュノ、見事としか言いようがない結末である。

映像のルックも、何ともいいようのない灰色ががった色合い、
又引きのショットは、風景の中に点のように人間が歩く構図・・、
物語の気分、母親の気分を象徴していて見事である。
ここには、自然のハプニングなど一ミリも入れないぞ・・という監督の
ある種の決意と覚悟が見てとれるのだ。喝采!!

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