俺の映画日記

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この『最後の忠臣蔵』は、5年程前に、NHKのドラマで放送していたのを
見た事がある。上川隆也と香川照之が、寺坂と瀬尾を演じていた。
その記憶があったのだが、この映画は、田中陽造の脚色により全く別物と
なっている。
 
映画版の脚色では、瀬尾と大石の遺児・可音との機微に焦点が当てられている・・。
それは、親子の情でもあり、可音からすれば、初めて知った男が瀬尾で
あるので、淡い恋心みたいなものも芽生え・・、育て親と遺児の物語で
あると共に、どこか淡い男と女の恋模様・・みたいなものも描かれている
ような・・、そんなはかなき物語に仕上がっているような気がした・・。
 
僕は、珍しく、後半の婚礼で可音を見送る瀬尾とのカットバックに涙し、
又、切腹する時に彼がフラッシュバックで思い出す少女時代の可音との
思い出の数々に又、泣けてきた・・・。
 
 
この映画を見る前の先週金曜の朝日新聞夕刊に、山根貞男氏の評が
載っていた。(途中からの記述ではあるが・・・↓)
 
「可音は孫左衛門を育ての親として慕うと共に、恋心も抱くが、孫左衛門の
 気持ちは判然としない。そこを抜きにすれば、ラストの死はあまりに単純
 すぎる。又、婚姻の行列に旧赤穂藩ゆかりの人々が参集するシーンでは
 誰もが可音を異様な程高貴な人に奉り過ぎではないか。
 疑問の2点が同根だとすれば、ただ忠義を賛美するだけの映画になってしまう。ならば、随所に印象深く出てくる「曽根崎心中」の意味も読み取れない。・・・・・」
 
・・・という記述、評があり、実はあまり期待して行かなかったのであるが、
僕自身は、山根氏の疑問は全く判らなかった・・・。
 
まず、孫左衛門の可音への気持ちは判然としない・・というが、
僕は、凄くよく判った・・。
 
これが現代劇ならば、もっと彼は可音に対する気持ちを表現出来たし、
もしくは、知らず知らずの間に表情に出ている・・という表現も可能だろう。
しかし、これは忠義に厚い、又、武士としての誇りを、矜持を人一倍持ちたい男の物語である。
そんな彼が、可音に対する気持ちを出すという、失態を演じる訳がない。
つまり、ドラマの中で、孫左衛門が可音に対する淡い気持ちを表情で
出す・・などという事は不可能なのである。
というか、そういう表情を決して見せないのが、この孫左衛門という男、
そのキャラクターなのである。
従って、観客は、孫左衛門の気分を推し量るしかない。
 
但し、推し量るしかない、孫左衛門の心情ではあるが、そこに脚本上の
仕掛けが一つ施されている。
それが人形浄瑠璃「曽根崎心中」である。
 
僕は、脈絡もなく入ってくる、この人形浄瑠璃に最初戸惑っていたが、
やがて、これは孫左衛門の深層心理なのではなかろうか、とさえ
思った。
つまり、孫左衛門の淡き恋心のようなものを表現する、ツールなのである。
 
従って、僕は役所広司の桜庭ななみに対する感情というのが
痛い程分かった・・・・。
 
もちろん、山根さんに比べて浅学な僕の単なる好意的読み違えかも
知れないが・・・・。
 
そして、そのように考えてくると、これは、もちろん「忠義」を前面に押し出した映画ではあるが、そのような「忠臣蔵」の衣をまとった、育ての親と遺児の道ならぬ淡き恋を描いた映画だといえるのではなかろうか、
と思うのだ。
従って、僕は、山根さんの批評とは逆に、この映画は、「忠臣蔵」の
体裁をとったラブストーリーであるという風に見えた。
又、少なくとも、脚色の田中陽造、監督の杉田成道には、そのような意図があった・・と解釈した・・。
 
彼らは「忠臣蔵」を期待する観客の期待を裏切らずに、如何に自分たちの
意図を反映させるかに、神経をすり減らしたはずである・・。
その意図は、半ば達せられ、半ば達せられなかった・・と見る。
 
それは、たぶん「忠臣蔵」的要素もきっちり描く、
又孫左衛門と可音の要素もきっちり描く・・といった、ように観客の要望に
答え過ぎたからなのではなかろうか・・・。
例えば、それでいえば、婚礼の場面で田中邦衛を出さなくとも良かったであろう・・。
あのようなシーンで、顔の判るベテラン俳優を起用する事は、
観客を知らず知らずのうちに、その挿話に引き込む事になってしまう・・。
あそこは、やはり、役所と桜庭のやり取りのみに、力を注ぐべきであった
のではなかろうか・・・と思うのだ・・・。
 
たぶん、思うに、これが、テアトル新宿系の映画館でやるような規模の
映画であれば、もっと孫左衛門と可音の関係に収斂させた、「忠臣蔵」的
要素を少なくした、少女と老武士の心情に絞った映画にする事が可能
だったろう・・。
それが、ワーナーブラザースが製作の前面に出ている映画である以上、
「忠臣蔵」的要素は、外せなかったのであろう・・。
 
 
ただ、具体的に言えないのだが、二人の関係性をもう少し艶っぽく撮る事は出来なかったのか・・とは思うのだ・・。
杉田は、TV出身であるという事を、とやかく言うつもりはないが、
少し人物の切り返しが多すぎだと思う。
もう少し、人物の雰囲気を醸し出すショットを多用して欲しかったとは思う。
 
と、こう書いてきて、山根貞男氏の評にモノ申すつもりだったが、
もしかすると、表現は迂回しているが、実は、同じような事を考えているのか、とも思った・・。が、どうなのだろう・・・。
 
 
ただ、僕は、この映画、好きである。
加古隆の音楽も、決して前に出ることなく、シーンに台詞の背後に響き、
ラストのエンドロールで初めてONになる・・といった絶妙の感じであった。
ラストのエンドロールで加古さんの音楽と共に、可音と孫左衛門の
生活の跡、その住処、細部の痕跡、が次々と現れてくる所などは、
この物語の主軸が何であったか、を如実に物語る・・。
心に染み入る・・感がした。
 
だからこそ、脚本というよりは、「忠臣蔵」的要素と「淡き恋心」の部分との
微妙なバランスが、もう少し、本当にもう少しだけ、「恋」の方に寄っていれば、文句なしの傑作になったと思うのだ・・。
そこの所の、微妙なさじ加減に、少しだけ異議あり・・というのが、
僕の感想である。
 
それは、山根氏の言っていた事と同方向なのか、全く違うベクトルなのか、
それは判らない。
ただ、映画を見る前に映画評を見るのも、良し悪しだな・・とは、いつも
思う事だ。
 
但し、そうは思ったが、「忠義」の物語としての体裁は整っており、
「忠臣蔵」的なものを見に来た客からすれば、大満足の映画なので
あろうとは思うのだ・・。
 
・・・と、こう書いてきて、もしかすると脚色の田中にも杉田にも、
「恋模様」よりは、やはり「忠義」の物語として描こう・・という気分の方が
少しだけまさっていたのか知れない・・とも思えてきた・・。
・・・だとしたら、それを見た僕としては、前記のように、さじ加減が違ったのではなかったのですか?と問いたい・・。という事だ。
 
・・・どちらにしても、作り手たちの本当の所の意図は判らない。
いつもの通り、批評は、自分ならばどうするかというエゴと感覚を基に
浮遊するだけであるのだ・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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閉じる コメント(3)

同じところで泣けました。
脚本家さんによって、脚色も違うもにですね。

2010/12/23(木) 午後 9:16 くるみ

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そうですか、確かに、周囲でもすすり泣きの音が・・・。
くるみさんの記事も見させて頂きます・・・。

2010/12/24(金) 午前 1:05 [ papiyon ]

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忠臣蔵の出来事が存在する以上、この話も実在していても不思議じゃないな〜と感じます。
それだけ、赤穂浪士の主君に対する忠誠心は素晴らしいですね。
TBさせてください!

2011/2/24(木) 午後 11:29 かず

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