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ジョゼッペ・トルナトーレ監督は、いわずと知れた「ニューシネマ・パラダイス」の作家だが、調べてみると、彼も50代中盤(56年生まれ)らしい・・。
年齢と作家の熟成は関係あるといえばあるし、全てを年齢とくっつけて考えるやり方はあまり好きではないが・・、でも、トルナトーレ監督の非常に熟達した冴えを見たような気がするのは、僕だけだろうか??
「ニューシネマ・パラダイス」における過剰なる叙情が、全くと言っていい程ないのである。映画は2時間半以上あるにも関わらず、全く緩んだ箇所がなく、非常なるテンポと緊張感でもって押し切られる・・。
しかも、叙事詩の体裁を崩さず、モリコーネの音楽も叙情といえばそうなのだが、
過剰なものではなく、叙事詩の背景にきっちりと寄り添い・・、
その結果、テンポのいい叙事詩なのだが、しかし、かえって人間の叙情を浮き上がらせるというか・・・、そういう作りになっているような気がした・・。
「ニューシネマ」もいいが、もしかしたら、映画としてはこちらの方が上かも知れぬ
という程、3時間近くの至福の映画体験であるといっていいような気がした・・・。
描かれているのは、ある家族の20世紀なのだが、そこには、当然家族愛から、
離反、別れ、喜び、様々な要素が入り込み、その縦軸として、シチリアを襲う
戦争、政治、共産主義・・等々の歴史が描かれていく・・・。
個人的には、主人公が共産主義にのめりこむ描写があるからかも知れないが、
つくづく20世紀は「政治の季節」だったのだな・・と思えた・・。
ハネケや、ケン・ローチがこの物語を描けば、当然もっと違ったテイストになったとは
思うが、トルナトーレの関心は、やはり家族の繋がりを中心とした、人と人の繋がり
みたいなものをきっちりと描きたい・・という事なのだろう。
テンポのいい叙事詩なのだが、叙事的に描けば、描くほど、情が醸し出されてくる
という非常に高級な物語・・であったような気がしている。
これが、「ニューシネマ」の頃の彼であれば、もっと押すシーンは押してきたであろう、しつこく描いたであろう事が想像されるのだが、
今回は、決してあっさりと描いている訳ではないのだが、作家が「押している」事が
我々観客には非常に判りにくい・・感じに仕立てている・・。
これは、紛れもなく作家の熟成・・である。
作家の熟成と共に見せられた、この大作は、映画館で経験する至福の体験、である。このような気分は久々である。
いつもは、作品を解剖して他山の石としようと試みるのだが、今回は、手放しで
賞賛である。そのくらい、至福の体験だったのである。
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