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本の紹介・瀧悌三著「一期は夢よ鴨居玲」
若き頃、「どのような画家になりたいですか」とよく聞かれたものです。わたしは殊更、誰かのようになりたいとも、こういった絵を描きたいとも思ったことがなかったので、いつも曖昧な返事をしていた。しかしながら、頭の片隅には、「気なる存在」や「イメージ」が無いわけではなかった。そのひとりが「鴨居玲」その人である。わたしの大学の先輩でもあり、その「退廃的なイメージ」は不思議に頭から離れることがなかった。この本「一期は夢よ鴨居玲」が発刊(1991年)されて、程なく読んだのですが、若き頃に抱いていた「伝説」以上に迫る「現実感」に、正直驚かされたものです。俳優のような整った顔立ちと、一処に収まらない「流浪の人」特有のさりげなさが、独自の「伝説」を生み出したのかもしれません。残された作品には、「鬼気迫るもの」があり、その「画家の視点」に、わたしは思わず頷いてしまう。ひとりの確かな技量を備えた画家が見たものは、人の「裏表」ではなかったのか、運命の采の目のように浮遊する「時間」そのものではなかったのか、そう思えてならない。
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