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【八甲田山 死の彷徨】

【八甲田山 死の彷徨】

せっかく読了したので、感想を書いておいたほうが良いかもしれないと思い、
書き始めましたが、なんだか暗澹たる思いが迫り、消化するのに時間が必要でした。
アマゾンに載っていた週刊文春に掲載された記事があったので、引用します。
まさに、このとおり。
++
この世の地獄! 日本陸軍史に残る悲惨な事件を味わう

日露戦争前夜の1902年、一つの壮大な人体実験が行われた。厳寒の積雪期において軍の移動が可能であるかを、八甲田山中において検証すべし。
青森第五聯隊の神田大尉と弘前第三十一聯隊の徳島大尉は、それぞれ特命を受けて過酷な雪中行軍に挑むことになる。
この世の地獄が前途に待ち受けているとも知らずに。

新田次郎『八甲田山死の彷徨』は日本陸軍史に残る悲惨な事件を題材とした山岳小説である。
気象学を修め、登山家でもあった新田の描く雪山の情景は、恐ろしいほどの現実感をもって読者の胸に迫る。雪地獄の中に呑み込まれていく兵士たちの姿は余りにも卑小であり、大自然の脅威を改めて認識させられる。

2つの部隊は明暗がはっきりと分かれる。
深雪の対策を行った三十一聯隊が1人の犠牲者も出さずに任務を完遂したのに対して、気象の苛烈さを侮り、精神論で行軍に挑んだ五聯隊は199名もの死者を出してしまうのだ。
組織が自壊するプロセスを描いた小説でもある。
雪の中で絶望した神田大尉は「天はわれ等を見放した」と呻くがそうではない。
合理性よりも軍人としての面子を優先して行動を開始したその時、彼らにはすでに死の影が忍び寄っていたのだ。兵士たちを殺したのは軍が抱えていた病理そのものだったといえる。
終章で語られる二挺の小銃を巡るエピソードに、その異常さが集約されている。
新田の筆致は冷徹を極める。不可避の運命へと向けて行軍していく者たちの姿が眼前に浮かび上がるが、押し止めることは不可能なのである。
読者は、一つ、また一つと命が失われていくさまを、ひたすら見つめ続けなければいけない。
評者:徹夜本研究会
(週刊文春 2017.3.16号掲載)
+++++
軍隊における「地位と立場による不合理性」「兵士たちのいのちの軽さ」そして「人間の知恵」「守るべきいのちへの重要さの理解」などいろいろ感じるところがありました。
同じ山に別のルートから登っているふたつの舞台の中で引き起こされる「命令系統の徹底と不徹底」からもたらされる大きな結果の違い。
組織論として読んでもとても有益な本だと感じました。
それにしても、吹雪の様子、雪のすさまじさ、行軍の難しさなど、まさに山を愛し、気象現象について知り尽くしている新田次郎氏だからこそ、書ける場面があふれています。
一緒に冬山登山をさせてもらった気分です。
こういうい人がグループの中にいたら生きて帰れなくなる恐れがあるなと感じたり、温めるのはこうすればよいのかと思いがけない方法を教えられたり、寒くなったり暖かくなったりする不思議な本でもありました。
登場人物全員にいてくれてありがとう!

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