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【釣りと不安】
「昔から魚釣りが好きですね。もう50年以上だね。そうそう釣り堀。ん?ヘラブナなんだよ。なかなか奥深くてね。 でもあの長いウキを見ていて、「当たった」っと思ったらさっとあげて釣れていると本当に我を忘れるよね。」 「でも、今はね、デイサービスに言っている「ばあさん」の帰ってくる時間を気にして、しかも家に帰って食事の準備とか全部やらなきゃいけないし、まぁ、宅配便で食事は届くからそんなに大変じゃないけど、その時間には家にいなきゃいけないしね・・・。」 うん、「落ち着いて釣りを楽しむ」ことはできなくなっちゃったよ。 ばあさん、のことばかり気になってね。頭のどこかにばあさんのことがあるんだよ。水を飲んでいるかな、とか、お昼は食べたかなとか・・・・。 「でも、やはりご主人の気分転換のために、釣り堀に行く時間は確保したほうがいいですよ。むかしほど自由にのびのびできなくても、やはりウキを見ていると心が落ち着くでしょ。」 「そうだねぇ。仲間もいるからねぇ。大丈夫でしょうかねぇ」 こういうご主人の心の中には「奥様へのいてくれてありがとう」が「心配」という形で深く入り込んでいます。 「今日、帰ったら「いてくれてありがとう」を伝えてくださいね」 「はい、ありがとうございます。釣りの話ができて、ホッとしました。また、きますのでよろしくお願いします。」 「今度来るときは釣った魚の写真を持ってきて見せてくださいね」 「はい、釣りに行く意欲が少しわいてきました。」 「今日は来てくださってありがとうございます。いてくれてありがとうございます」 75歳を過ぎたご主人は入ってきた時より表情が少し緩んでいるように感じました。 |
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