|
最近では、自然環境が目に見えるぐらいの速度で、悪化し続けています。 川は魚が激減し、野鳥も減り続けています。 以前は、猟師といわれる人が大勢いました。 鉄砲を担いで山に入り、ヤマドリ、キジ、キジバト、カモなどの野鳥を撃って生活していました。 しかし、鳥の数がどんどん減り続け猟師での生活が出来なくなってしまったのです。 これは狩猟をする人が多くなったのではなく、自然環境の悪化から野鳥が減ったのです。 自然界に異変が起きている野鳥や川魚が減った原因は、環境破壊です。中でも一番の元凶は、国内の広葉樹林を伐採し、無計画に杉林に変えてしまったことです。 杉は山に光を入れません。 光を入れるには、間伐を計画的にこまめに行わなくてはなりません。 杉の成長を野放しにすれば、密林状態となり、太陽の光が入らず草が生えなくなってしまいます。 すると、土の中のバクテリアなどの微生物が死んでいなくなり、ミミズや昆虫が住めなくなります。 虫がいなくなれば、その虫を食べている川魚も減ります。 そして川魚や昆虫を食べていた鳥がいなくなります。 結果、山は死に絶えてしまうわけです。 二つ目の元凶は酸性雨です。 中国大陸や、日本で消費燃焼される石油や石炭などの化石燃料には硫黄が入っています。 硫黄は燃焼させると、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)となり大気中に放出されます。 大気の混ざったガスは、水に溶けると強い酸性の亜硫酸となり地上に酸性雨を降らせます。 それが土壌のバクテリアを殺します。 そして、養分に富んだ土は死んでしまいます。 さらに三つ目として、 土の中の養分が減ると松枯れがおき始めます。 それを防止するため山に松枯れ防止剤をまくようになります。 山の土はこうして死んでゆきます。 ふもとや、平地では、住民が家庭用雑排水として、人工的な洗剤などを垂れ流す。 田んぼや畑に土壌改良のために農薬や化学肥料を撒き散らす。 そして四つ目の元凶が、河川改修です。 ダムや護岸工事で川を殺してしまったことです。 土壌が荒廃したのは、そういったことが重なった結果です。 食物連鎖の基本を断ち切ると、そのうえに成り立っている生命が死んでしまいます。 食物連鎖の頂点にいるには人間です。 自然の移り変わりに敏感な人たちは、その微妙な歪みに気付きます。 そして、自然破壊を防止しなければ、地球も、人間も、全ての生命も 健康のままではありえないことを実感するはずです。 食物連鎖からしても、バクテリアがいてこそ人間が存在できるほどなのです。 バクテリアは土壌にいて、森林のブナ、クスギ、カエデなどの枯葉や木の枯れたものを腐植分解します。 その過程で、有機酸(有機アシッド)が生成されます。 その酸が砂や岩石を溶かし、土壌の中のマグネシウムやカルシウムといったミネラルをイオン化させます。 そのミネラルがさらに水に溶け込み川に流れ、川から海に流れます。 そして海中のミネラルは栄養素として、海藻や貝を育てそれを食べる魚を育てます。 昨今、北海道の昆布や三陸の牡蠣の漁師さんたちは、山に広葉樹を植えて、広葉樹林の山を育てています。 彼らは、昆布や牡蠣が以前ほど取れなくなったとき山の変化に気付いたのです。 「山に杉を植えているのがおかしい。元に戻せば海も元にもどるかもしれない」と 直感的に気付き、多くの漁師さんたちが植林を始めました。 植林してから数年すると、見事に海が生き返り昆布も牡蠣も元通り採れるようになったのです。 このことは、山と海が直結しているということなのです。 食物連鎖の元を断ってはいけないのです。 循環の最初の部分であるバクテリアを殺すことは、ミネラルを枯渇させ、土壌を貧弱にし、 川を貧弱にし、海を貧弱にしてしまうことになります。 ミネラルの少ない土壌は、野菜を栄養成分の少ない、水っぽいものに変えてしまいます。 それは食べ物の質が落ち、食べ物の種類も減ることなのです。 そして人間の体も弱くなります。 人間は自分たちの生活を快適にするために作った化学物質によって、自分の首を絞めてしまったのです。 生き返った水の話いま、環境を守るために、工業排水や化学物質を下水に流さない活動や運動がなされるようになりました。日本で率先して取り組んでいるのは、滋賀県です。 滋賀県は、県民にとって大切な資源である琵琶湖を汚さないために、リンを含む合成界面活性剤の入った洗剤を使わず、天然素材の石けんを使う取り組みがなされています。 世界ではもっと早くから水質保全をしている一例に、スイスのレマン湖があります。 レマン湖を死なせないために国民全てがリンを含む合成界面活性剤を使っていません。 2000年の三宅島の火山噴火は記憶に新しく、島民全員が避難させられて島に戻ることが出来ませんでした。 三宅島の周囲は南洋海域で、さんご礁が広がる綺麗な海でした。 それがここ20年位で、観光客やダイバーが増えて、なぜか珊瑚がほとんど絶滅していたのです。 海藻や貝も減り、小さな魚たちも泳がない死の海に近づいていたそうです。 ところが火山噴火の影響で、住民が生活しなくなって2年余り経ち、 三宅島に調査団が入り海を調べたところ、見事に復活し、元の綺麗なさんご礁が広がっていたそうです。 この話には、二つの教訓があります。 ひとつは、島内に大きな産業がなく工業排水は出ないことと、住民が生活しているだけなので、海を汚染したのは合成界面活性剤の入った家庭用排水と農薬です。 もうひとつは、わずか数年でほぼ完璧に元に戻ることができる 自然の回復力はすばらしいものだということです。 今では、きびなごなど小さな魚が泳ぐようになったそうです。 この話を人間に置き換えてみると、 家庭で使っているさまざまな化学製品がいかに自分たちを汚染しているか、ということになります。 広大な珊瑚を殺すことが出来る化学物質を、日常生活の中で自分自身の体にばら撒いているのです。 ですから、三宅島の教訓からもわかるように、体にとって有害な物質を入れないようにすれば、 人間が本来持っている自然の回復力で、健康な体を取り戻せるし、維持できます。 有害な化学物質は、ゆっくり自然や人間の体を蝕んでいきます それが、環境破壊と病気の原因なのです 有害化学物質を家庭に入れない、使わない 多くの人が、早く事実を知って、自然や人間に安全な生活をしてください。 未来の子どもたちのために あなたは何ができますか? http://home-yasupapa.pya.jp/
|
1 世界への環境発信
[ リスト | 詳細 ]
全1ページ
[1]
|
写真の左から2番目が「12歳の少女、セヴァン・スズキ」 1992年6月。ブラジル、リオ・デ・ジャネイロ。 環境と開発に関する国連会議(環境サミット)に集まった世界の指導者たちを前に、 12歳の少女、セヴァン・スズキは語り始めました。 こんにちは、セヴァン・スズキです。エコを代表してお話しします。 エコというのは、 子供環境運動(エンヴァイロンメンタル・チルドレンズ・オーガニゼェーション)の略です。 カナダの12歳から13歳の子どもたちの集まりで、今の世界を変えるためにがんばっています。 あなたがた大人たちにも、ぜひ生き方をかえていただくようお願いするために、 自分たちで費用をためて、カナダからブラジルまで1万キロの旅をして来ました。 今日の私の話には、ウラもオモテもありません。 なぜって、私が環境運動をしているのは、私自身の未来のため。 自分の未来を失うことは、選挙で負けたり、株で損したりするのとはわけがちがうんですから。 私がここに立って話をしているのは、未来に生きる子どもたちのためです。 世界中の飢えに苦しむ子どもたちのためです。 そして、もう行くところもなく、死に絶えようとしている無数の動物たちのためです。 太陽のもとにでるのが、私はこわい。オゾン層に穴があいたから。呼吸をすることさえこわい。 空気にどんな毒が入っているかもしれないから。父とよくバンクーバーで釣りをしたものです。 数年前に、体中ガンでおかされた魚に出会うまで。 そして今、動物や植物たちが毎日のように絶滅していくのを、私たちは耳にします。 それらは、もう永遠にもどってはこないんです。 私の世代には、夢があります。 いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見ることです。 でも、私の子どもたちの世代は、もうそんな夢をもつこともできなくなるのではないか? あなたがたは、私ぐらいのとしの時に、そんなことを心配したことがありますか。 こんな大変なことが、ものすごいいきおいで起こっているのに、私たち人間ときたら、 まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています。 まだ子どもの私には、この危機を救うのに何をしたらいいのかはっきりわかりません。 でも、あなたがた大人にも知ってほしいんです。 あなたがたもよい解決法なんてもっていないっていうことを。 オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう 死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。 絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。 そして、 今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのかあなたは知らないでしょう。どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。 ここでは、あなたがたは政府とか企業とか団体とかの代表でしょう。 あるいは、報道関係者か政治家かもしれない。 でもほんとうは、 あなたがたもだれかの母親であり、父親であり、姉妹であり、兄弟であり、 おばであり、おじなんです。 そしてあなたがたのだれもが、だれかの子どもなんです。 私はまだ子どもですが、 ここにいる私たちみんなが同じ大きな家族の一員であることを知っています。 そうです50億以上の人間からなる大家族。 いいえ、実は3千万種類の生物からなる大家族です。 国境や各国の政府がどんなに私たちを分けへだてようとしても、 このことは変えようがありません。 私は子どもですが、みんながこの大家族の一員であり、 ひとつの目標に向けて心をひとつにして 行動しなければならないことを知っています。 私は怒っています。でも、自分を見失ってはいません。 私は恐い。でも、自分の気持ちを世界中に伝えることを、私は恐れません。 私の国でのむだ使いはたいへんなものです。買っては捨て、また買っては捨てています。 それでも物を浪費しつづける北の国々は、南の国々と富を分かちあおうとはしません。 物がありあまっているのに、私たちは自分の富を、そのほんの少しでも手ばなすのがこわいんです。 カナダの私たちは十分な食物と水と住まいを持つめぐまれた生活をしています。 時計、自転車、コンピューター、テレビ、 私たちの持っているものを数えあげたら何日もかかることでしょう。 2日前ここブラジルで、家のないストリートチルドレンと出会い、私たちはショックを受けました。 ひとりの子どもが私たちにこう言いました。 「ぼくが金持ちだったらなぁ。もしそうなら、家のない子すべてに、食べ物と、
着る物と、薬と、住む場所と、やさしさと愛情をあげるのに。」
家もなにもないひとりの子どもが、分かちあうことを考えているというのに、すべてを持っている私たちがこんなに欲が深いのは、いったいどうしてなんでしょう。 これらのめぐまれない子どもたちが、私と同じぐらいの年だということが、私の頭をはなれません。 どこに生れついたかによって、こんなにも人生がちがってしまう。 私がリオの貧民窟に住む子どものひとりだったかもしれないんです。 ソマリアの飢えた子どもだったかも、中東の戦争で犠牲になるか、 インドでこじきをしてたかもしれないんです。 もし戦争のために使われているお金をぜんぶ、貧しさと環境問題を解決するために使えば この地球はすばらしい星になるでしょう。 私はまだ子どもだけどこのことを知っています。 学校で、いや、幼稚園でさえ、あなたがた大人は私たちに、 世のなかでどうふるまうかを教えてくれます。 たとえば、 * 争いをしないこと * 話しあいで解決すること * 他人を尊重すること * ちらかしたら自分でかたずけること * ほかの生き物をむやみに傷つけないこと * 分かちあうこと * そして欲ばらないことならばなぜ、あなたがたは、私たちにするなということをしているんですか。 なぜあなたがたがこうした会議に出席しているのか、どうか忘れないでください。 そしていったい誰のためにやっているのか。 それはあなたがたの子ども、つまり私たちのためです。 あなたがたはこうした会議で、私たちがどんな世界に育ち生きていくのかを決めているんです。 親たちはよく「だいじょうぶ。すべてうまくいくよ」といって子供たちをなぐさめるものです。 あるいは、「できるだけのことはしてるから」とか、「この世の終わりじゃあるまいし」とか。 しかし大人たちはもうこんななぐさめの言葉さえ使うことができなくなっているようです。 おききしますが、私たち子どもの未来を真剣に考えたことがありますか。 父はいつも私に不言実行、つまり、なにをいうかではなく、 なにをするかでその人の値うちが決まる、といいます。 しかしあなたがた大人がやっていることのせいで、私たちは泣いています。 あなたがたはいつも私たちを愛しているといいます。 しかし、私はいわせてもらいたい。 もしそのことばが本当なら、どうか、本当だということを行動でしめしてください。 最後まで私の話をきいてくださってありがとうございました。 (翻訳:ナマケモノ倶楽部) |
|
最近、「環境ホルモン」という言葉をあまり聴かなくなりましたが、何が環境ホルモンかが次第に明確になってきたため、使われることが少なくなっています。 しかし忘れてはならない言葉です。 今一度思い起こし、未来への道しるべにと、掲載してみました。 環境ホルモンは、正式な名称を「外因性内分泌攪乱化学物質」といいます。 天然のホルモンは、精巣や卵巣、副腎、甲状腺、脳下垂体といった、内分泌器官によって作られ、 体内の各所に運ばれますが、環境ホルモンは、外部から身体に取り込まれ、 体内で天然ホルモンに似た作用をもたらし、ホルモンの働きをかき乱します。 しかし、現在の所、何が環境ホルモンで、何が環境ホルモンではないのか、 厳密に判定する国際的な方法や基準は、定まっていません。 このことが、環境ホルモン問題で解決すべき、最優先の課題となっています。 『奪われし未来』の警鐘 ダイオキシンやPCBなどと、私たちの日常生活の中にも、これら有害な化学物質の名前がしばしば登場します。 1996年、アメリカで発刊された一冊の本が、世界中で大きな話題を呼びました。 『奪われし未来』(原題"OUR STOLEN FUTURE")です。この本は、3人の著者によって書かれました。 WWFアメリカの科学顧問であるシーア・コルボーン、 ジャーナリストのダイアン・ダマノスキ、 そして動物学の博士号を持ちオルトン・ジョーンズ財団の代表を務める ジョン・ピーターソン・マイヤーズ。 立場の違うこの3人の人物が書き記したのは、有害な化学物質による影響、 いわゆる「環境ホルモン」の脅威についてでした。 環境ホルモンの脅威 動物や植物は全て、その細胞の中に「遺伝子(DNA)」というものを持っています。 この遺伝子とは、その生物のからだ作りについてのばプログラムで、設計図の役割を果たすものです。 もっとも、遺伝子だけで身体が健全に発育し、機能するわけではありません。 この遺伝子に発動命令を出す「伝令役」がいます。 その代表選手が、「ホルモン」と呼ばれる物質です。 ホルモンは、生物の生体を構成する、何十兆という細胞の中の遺伝子情報を引き出し、 正しく作用させるという大事な役割を果たします。 身体の健全な成長などを促す、欠かすことの出来ないものです。 ところが最近、このホルモンと同じような顔をした「ニセモノ」の登場が問題になり始めていました。 すなわち、「環境ホルモン」です。 このニセモノは、天然ホルモンと似たような力を持った化学物質で、身体に入り込むと、 勝手に遺伝子に命令を出してしまいます。 例えば、天然の女性ホルモンと同じような働きを持つ環境ホルモンを、 外部から摂取してしまった場合、ホルモンの作用を受ける遺伝子側は、 女性ホルモンが命令を伝えてきたものと誤解してしまい、 本来と違った身体の作用を引き出してしまうことになるのです。 これが「オスのメス化」というような、不自然な事態や、然るべき時期に、 然るべき成長を遂げられない「発育不全」、 あるいは生殖器官などの異常を引き起こしてしまうのです。 ホルモンが正しく作用しないと、遺伝子がどんなに正常でもそのプログラムは実行されません。 されないばかりか、間違ったタイミングで命令を、実行してしまうことさえある。 ホルモンの「かく乱」、つまり環境ホルモンの問題が、遺伝子の異常に引けを取らない恐ろしい影響を 引き起こすものであることは、想像がつくでしょう。 環境ホルモンの影響!? この環境ホルモン問題を世界的に、知らしめることになったのが、 1996年にアメリカで刊行された、"OUR STOLEN FUTURE"邦題『奪われし未来』でした。 この本の冒頭で「前兆」として紹介されているのが、 アメリカの五大湖で確認された魚のガンを始め、 ヨーロッパ、地中海などで1950年代以降確認された、おびただしい野生生物の大量死、 奇形の発生、不妊、行動の異常などの衝撃的な事例が『前兆』として紹介されています。 当時、調査にあたった人たちは、その原因を、水質の汚染や農薬、化学薬品によるものと 直感的に見抜いていたとようですが、その仕組み、つまり科学的な関連性が立証されるまでには、 少なからぬ時間を要すことになりました。 ▼環境ホルモンによる影響の事例 (『奪われし未来』より) 1950年代 アメリカ・フロリダ州 ハクトウワシの個体数の80%に生殖異常が見られる。 1950年代 イギリス カワウソがいなくなる。原因は80年代まで不明。 1960年代 五大湖・オンタリオ湖 セグロカモメのコロニー(集団繁殖地)でヒナの80%が死亡。 または奇形が発生。 1970年代 アメリカ・南カリフォルニア セイヨウカモメの生殖異常。 メス同志のつがいが確認される。 1980年代 アメリカ・フロリダ州 ワニの卵の80%が死亡。多数のオスの生殖器に異常。 1988年 北海沿岸 1万5千頭にのぼるアザラシが死亡。 1990年 地中海 ウィルスによるスジイルカの大量死。体内からPCBの通常の倍以上検出される。 1992年 デンマーク ヒトの精子が約50年の間に半減。 人体への影響 なぜ異常が発生するのでしょうか? その原因と仕組みを追求していたWWFアメリカのシーア・コルボーン博士が、試行錯誤の末、これら野生生物の異常に関する膨大な量の情報から、「ホルモンの異常」という仮説を立てたのは、 1980年代も終わりのことでした。 遺伝子にホルモンが命令を伝えるという作用は、全ての動物が共通して持っているものです。 カメと人間の遺伝子はもちろん違います。 しかし、この遺伝子に命令を伝えるホルモンそのものは、カメも人間も同じ物質でできているのだ。 つまり極端な話、ある動物の女性ホルモンは、違う動物の体内に入っても、 女性ホルモンとして作用するということなのです。 ならば、有害化学物質によって、生じた野生生物のホルモンかく乱は、 人間にも当然起き得ることなのではないでしょうか。 やがてこの懸念を、立証するかのような事例が次々と明るみに出ることになりました。 70年代、医療用に開発され、世界中で多くの妊婦に投与されたホルモン剤などが、 実は恐ろしい影響を胎児に与えることも、明らかにされました。 この胎児への影響は、環境ホルモンが「未来を奪うもの」とする理由として、 しばしば挙げられるものです。では、胎児はどのような影響を受けることになるのでしょうか。 レイチェル・カーソンが『沈黙の春』で合成化学物質、特に農薬などの毒性が、 生物へ与える悪影響について言及した1950年代には、まだホルモン異常という影響の 細かい仕組みまでは、解明されていませんでした。 しかし、カーソンはこの時すでに、重要な問題を指摘していました。 すなわち、有害な化学物質が、生物の体内に蓄積される、という事実です。 人間に限らず、哺乳類が最も成長する期間は、生まれた後ではなく、 生まれる前の胎内にいる時期です。 この時期、胎児は一兆分の一グラム単位という超微量のホルモンの作用で、 オス、メスの相違を決定し、身体の器官を形成していきます。 これが、母体に蓄積された有害な化学物質、 つまりは大量の環境ホルモンにさらされたらどうなるでしょうか。 とてもではありませんが、正常な胎児の成長・発育は望めないことになります。 また、母体蓄積された有害化学物質は、生まれた後も母乳を通じ、 世代を超えて受け継がれていくことになるのです。 環境ホルモンとしての作用をもたらす有害な化学物質は、現在60種類以上にものぼります。 その中には、私たちがよく新聞やテレビで名前を見る、 ダイオキシンやPCBといった化学物質が含まれています。 報道されている通り、これらの化学物質が、あちこちで、 しかも高濃度で検出されているというという事実に対し、私たちは今、 あまりにも危機感が無さ過ぎはしないでしょうか。 全ての命の未来のために 環境ホルモンは、遺伝子そのものを変異させたりはしません。 つまり、どんなに環境ホルモンが攻めてきても、先祖代代、進化の中で受け継いできた 遺伝子のプログラムは、決して壊れたりしないのです。 ホルモンの状態さえ正常に戻せれば、生きものたちは健全な遺伝子に従って、 健全な心体を取り戻せる。 世代を超えて蓄積されていく化学物質は、 逆に「世代を重ねることでクリーンにできる」(シーア・コルボーン博士の言)ものでもあります。 今ある有害化学物質の管理を徹底し、製造や使用に厳しい規制をかけることで世間への流出を押さえ、 個人レベルでも可能な限りこれらの化学物質を摂取しないようにすることで、 少なからぬ脅威が取り除かれることになるでしょう。 短期的な利権にとらわれず、情報の公開や化学物質の使用規制を実現していくことが必要です。 日本では高度経済成長期に、大規模な公害がいくつも問題となりました。 たくさんの人たちが被害に遭い、今も解決を見ないものもあります。 しかし公害はあくまでも「人間の問題」です。 話題にこそ上らないものの、公害の原因たる有害な化学物質は、 野生の世界にも必ずや影響を及ぼしたに違いありません。 その確かな記録はほとんど残っていませんが、「沈黙の春」が人知れず日本の山河に訪れ、 今の自然破壊、環境悪化の一因となったことは、十分に考えられます。 人間の問題としてのみ環境ホルモンの問題を考えるのならば、根本的な解決は到底望めません。 そもそもこの環境ホルモンの問題は、野生の世界から発せられた「警告」が発端になりました。 この警告は、ヒトのみならず、全ての生物の未来に対して発せられたものです。 私たち自身のためにも、自然への影響について、より真剣な調査を行ない、対策を立てていくことは、 欠かせないことなのです。 |
全1ページ
[1]







