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第二次世界大戦に翻弄された洋服の仕立て職人とその家族の物語。
タイトルの「H」とは、職人の父とキリスト教徒の母の間に生まれた肇くんの頭文字です。
神戸で外国人相手に仕事をしていた父親は、人との交流に「国や言葉は関係ない」と息子に教えるような国際的な感覚を持つ人物。
そんな博愛主義が戦時下ではスパイ容疑の原因になってしまったり、Hと仲良しだった近所のお兄さんは政治的思想を理由に高等警察に逮捕されてしまいます。
戦争が人々から自由を奪い疑念を生み出し、敵国を攻撃するだけでなく日本人同士が傷付け合う様子が日常の生活を舞台に切なく描かれていきます。
開戦とともに不穏な空気に染まっていく人が多い中、人間性を失うことなく、優しい眼差しで家族や社会を見守り続ける父親の達観した姿勢に感動しました☆
戦後は食糧不足で皆お腹を空かせていました。
今度は食糧を巡る諍いが起こります。
Hは、妹が疎開先から持ち帰った貴重なお米を他人に分ける母親に「おなかを空かせてる人を助けたらキリがない」と怒りをぶつけてしまいます。
それでも両親は黙って息子の怒りを受け止めます。
幼い子にそんな思いやりのない言葉を言わせてしまう状況を作ったのは、戦争を止めなかった大人たちの責任だと思ったのでしょうか。
廃墟となった町に佇む父子の会話が印象に残りました。
「みんな何も知らずに戦争を始めてしまった」と父親が呟けば、Hも「潮の流れに任せて右へ左へと揺れるワカメ」とご都合主義の元軍人や教師を揶揄します。
社会への無関心と無責任が戦争を起こす隙を与えるのだとしたら、今の日本も例外ではないと思いました☆
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