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    GHQ法規課長ラウエルと『憲法草案要綱』

<平和主義>もまた、彼ら憲法研究会の草案の大きな特徴である。ここには馬場の持論である「国際平和なくして民主主義は有りえない」、杉森の「他国との協調」が摂り入れられたが、社会党の綱領(10月15日発表)にある「恒久平和の実現」「世界恒久平和の確立」が反映されているようだ。さらにそのルーツを遡れば、土佐(高知)の自由民権運動の思想家・植木枝盛の「世界政府による軍備全廃」までたどり着く。

この平和主義は「日本国憲法第九条」に結実する。「アジア解放」を叫びつつアジアを侵略した日本軍国主義(ファシズム)は、日本に壊滅的な破壊をもたらしたが、それへの総括こそこの「平和主義」なのだ。「涙を拭いて平和と自由へ邁進する」(馬場)…これこそ彼らの決意であり、新生日本の世界への反省・懺悔である。従ってもちろん、これはアメリカによる押しつけなどではない。12月になっても、GHQ統括局法規課長マイロ・ラウエル中佐は、まだ平和条項など思い浮かべてはいなかったからだ。

●国民ハ民主主義ナラビニ平和思想ニ基ク、人格完成、社会道徳確立、諸民族トノ協同ニ努ムルノ義務ヲ有ス

これが憲法研究会の『憲法草案要綱』第二章「国民権利義務」の第十八条である。民主主義と平和主義を同等のものとし、国際協調での平和をうたっている。

<人権=自由>については、さらに非の打ち所が無いと言っても過言ではない先進的内容だ。軍部・憲兵・警察の暴力により「言論と学問の自由」を奪われた体験をもつ彼ら七人にとっては、まず何よりもこの基本的人権としての自由は、人々すべてに保障されるべきものであった。この「人権規定」には憲法学者鈴木の学識が、いかんなく発揮されている。

例えば
「法の下の平等」は、世界初の民主的憲法と言ってよいドイツ「ワイマール憲法(1919)の条文109条を参考にしたものだし、「男女の平等」はソビエト憲法(1936)の122条を、「差別の廃止」は国連憲章草案の第一条を、「言論・学術・芸術・宗教の自由」は、ワイマール142条と米国憲法修正第一条をとりいれたものだ。またこれら主だった条文と同等のものが、自由民権運動の思想家植木枝盛のつくった憲法にも見られる。鈴木は大正デモクラシーの代表的政治学者、吉野作造を通じ植木の民権思想を学んでいた。

植木枝盛の「国家は人民の自由を護るためにこそ在る。そのためにこそ憲法が必要なのだ」という主張は、鈴木に引き継がれて憲法研究会の草案となり、日本国憲法の内に実を結んだのだ。明治14年(1881)の植木の憲法にはすでに「日本国の最上権(主権)は日本全民に属す」とあり、人権規定は30ヶ条もある。植木がルソーの『民約論』やスペンサーの『社会平等論』、フランスの『人権宣言』やアメリカの『独立宣言』を学んでいたのはまちがいない。

かくて昭和20(1945)年12月26日、憲法研究会のメンバーによる『憲法草案要綱』が完成し、首相官邸とGHQへ届けられた。そして28日に新聞に掲載される。国民の憲法に対する関心も非常に高かった。アメリカ側もこの民間(政府や政党のものでない)による草案に強い関心を示し、ワシントン国務省政治顧問アッチソン、及び東京GHQ統治局ラウエルの二つのオフィスで、翻訳分析が加えられた。

終戦(8月15日)後半年の間に、日本中で十もの憲法試案が作られたが、鈴木安蔵が起草者となったこの草案こそ白眉であった。弁護士でもあるラウエルは、各章ごとに具体的な批評をした上で、「民主的で自由主義的諸原則が広く含まれており、すべて民主制と合致している」と、高い評価を下した。何しろ「労働者の権利や保護」(森戸の主張による)及び「差別の禁止」などは、アメリカ側のアイデア(『日本統治機構の改革』やラウエルの『準備報告書』など)にも無いほどのものであった。

ラウエルは日本人の意見を参照しながら、具体的な憲法案を自ら起草しようと考えていたようだ。だからこそ日本の在野の学者や評論家たちの手になる『憲法草案要綱』を、「すばらしいものができた」と喜びながらも、不足している条項について…つまり加えるべき規定を指摘することができたのだろう。ラウエルが示した主な点は

1)憲法が最高法規であるであることの規定…つまり憲法に反する法律は無効であるということ。天皇の名による機関や組織はつくれないこと。
2)違憲立法審査権を裁判所に与えることの規定…これは判例法の国アメリカでは、違憲とされた法律は無効になるので大変重要な規定だのだ。しかし日本国憲法では最高裁判所が最終判断者とされ、骨抜きにされた。
3)刑事被疑人の人権保護の規定…戦前の軍や警察の拷問や自白の強要による冤罪を防止するためである。しかしこれも被疑者(accused)を「被告人」と誤訳され、骨抜きにされるのだが。
4)県・市町村の官吏(公務員)の公選制の規定
5)国会(議会)に唯一の立法権限を与える規定…憲法41条として実現したが、72条で内閣による法案提出権が認められ、日本の民主主義はここでも骨を抜かれ機能不全となる。

これらは弁護士らしいよく目配りのきいた指摘である。つまり「憲法をどうやって政府に守らせるか」、それが最重要課題であると言っているのだ。とにかくラウエルは「この民間草案を基にいくつか修正を加えれば、マッカーサー司令官が大いに満足する憲法ができる」と考え、上司のホイットニー民生局長へ報告した。
                      
                      −  つづく  −

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